見出し画像

【トヨタ生産調整】自動車業界部品供給の次なる問題「樹脂不足」とは?

2021年は需要回復の年!自動車の販売が伸びる!!

と思いきや半導体の供給問題があり、世界各地で減産が広がりました。日本でもホンダを始めとして各社で生産調整。欧州、アメリカビッグ3も減産が続き、各国政府が乗り出す事態に。半導体メーカーに依頼し、早期の供給不足解消を求めていますが、まだしばらく時間がかかりそうな見込みです。


そんな自動車業界に新たな火種が。「樹脂が不足して自動車の生産が止まる?」一体何が起こっているのか。今後、自動車業界の生産に大きく影響を与えるであろう樹脂不足について解説します。

北米トヨタの生産調整報道

今回、樹脂不足として報道が出たのは18日の朝。

トヨタの北米工場4工場が一部休止。3/11ごろからすでに減産に入り、4月上旬までに10日程度操業調整する見込みとのこと。

更に詳細について調べるとReutersの記事では

Toyota said it would cut production this week at four plants in Kentucky, West Virginia and Mexico, citing “a shortage of petrochemicals” and “recent severe weather conditions” affecting production.
A Toyota spokeswoman said the production cuts “will impact production of the Camry, Camry Hybrid, Avalon, Avalon Hybrid, RAV4 Hybrid, Lexus ES 350, Lexus ES 300h and Tacoma,” but declined to say how long or how much production would be cut.

カムリ、アヴァロン、RAV4HV、Lexus ES 350, Lexus ES 300h、タコマが影響とかなり波及する車種は多く、生産調整の数量は大きくなりそうです。

日本の記事で指摘されている「樹脂」英文記事の「petrochemicals」一体何が足りていないのでしょう?

何が足りていないのか

足りていないのは自動車のエアバッグなどに使われる「ナイロン66」という繊維です。該当の繊維を作る東レは

契約上の義務の不履行に対する免責を顧客に求める「フォース・マジュール(不可抗力条項)」を宣言

供給が長期にわたって不足する懸念があります。同じくナイロン66を生産する東洋紡に関してもフォースマジュールは宣言していないものの、需要はひっ迫しています。

なぜ「ナイロン66」は足りなくなったのか。その材料にあたる「アジポニトリル」の供給が足りていないのです。

前提として2018年ごろから世界的なナイロン供給能力不足問題があり、需要がタイトが状況が続いていました。コロナ禍で一旦自動車の生産が落ちたもののその後の回復は早く、世界での生産はコロナ禍以前同等、もしくはそれ以上になっています。この需要の回復に原材料供給が追い付いていなかったところに加えて襲いかかってきたのがテキサスの大寒波

「アジポニトリル」供給メーカー、主要3社のAscend,Invista,Solvyが天候不順を直撃。まったく身動きが取れずフォース・マジュールを宣言。結果、下工程である東レもフォース・マジュールを宣言する状況となっているのです。


今後の見通しについて

今回問題となっている樹脂「ナイロン66」及びその材料である「アジポニトリル」に関してはそもそもの供給能力不足に加え、天候不順による減産もあり、今後も非常にタイトな供給になることが予測されます。解消の目安もたっておらず、半導体供給問題以上の長期化、最悪の場合、供給が需要に追い付くには数年かかる可能性があります。

またナイロン66が使用される代表的な部品はエアバッグですが、他の部品にも多数使われています。供給が不足となった場合、上工程の材料不足のため、波及効果は非常に大きく、生産調整数が大規模になることも…

現在はこの樹脂不足によって生産調整の報道がなされているのはトヨタだけですが、今後日本、海外含め他のメーカーでもこの樹脂不足により生産調整がなされていくかもしれません。今回の樹脂不足は現段階で販売見込みには織り込まれておらず、今後の業績に影響を与えていく可能性があります。

自動車メーカーに関しては、原材料の不足を受け、他の樹脂メーカー(中国など)などへの工程変更や代替素材への変更が行い、減産幅を少なくしていくよう対応が求められそうです。(早急にやらないとまずいけど、品質上とても手続きが大変そうなパターン)

半導体供給問題も各国政府が乗り出してようやく目途が付いたと思ったら、次は樹脂。まさに「泣きっ面に蜂」。世界での需要は好調で、完成車の在庫も低水準でなっているため、生産を伸ばしたい中で部品供給問題で自動車を作れない状況が続いています。

2021年は需要が回復して明るい年に…なんてことには一筋縄ではいかないようです。自動車業界の皆さん、今年も大変な年になりそうですが、なんとかやっていきましょう!

======【宣伝】=======

自動車業界の最新トレンドがわかるニュースレターをはじめました。毎週クルマの最新ニュース、役立つ本、レポートを配信します。「無料」で全コンテンツ読み放題。

「モビイマ!さえ見ればあなたも自動車通‼︎」
クルマに関心のある全ての方におすすめのレター。こちらも読んでもらえると大変うれしいです。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?