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知識を得たから見えなくなるもの

知識を得る。成功者の話を聞く。
新しい理論や視点に触れたとき、私たちはちょっと生まれ変われた気分になります。私に至っては、「私は、本の著者の悪い例のように忖度をしたり、古い理論にとらわれたりして時代遅れの人にならないよ」という気持ちになったりします。
ひたひたと歩み寄る陰に気づかずに。

新しい知識を得たのか、思考が硬直したのか

人事の仕事をしていると、自社の社長と議論する機会に恵まれます。そこで感じるのが、「社長の言葉を理解しきれていない感」でした。
どうも文字通りにしか言葉を捉えられておらず、深い意図を汲めていないようなのです。そのタイミングで「成人発達理論」を知りました。

平たく言うと、「成人もまだ発達・成長することができ、自分も人も変えることができる。」という考え方です。発達段階には5段階あり、多くの方が3段階目(おそらく私も)に位置しています。
発達段階が上がるほどに、自己や他者への理解が深まり、物事を高い視点から・広く・深く・解像度高く捉えることができます。

発達段階を上げていくために、必要なこととして以下が挙げられていました。

成長・発達支援をする際には、支援を行うものの発達段階が支援される者の発達段階よりも高くないと、効果がほとんどない

書籍『なぜ部下とうまくいかないのか「自他変革の発達心理学」』より

なるほど。社長は自分より発達段階が上だから私は視座・視野・視点が追い付いていないのだな。そしてどうやらそこに追いつこうと思えば、自分より発達段階が上の人からしか自己成長のきっかけをもらう必要があるらしい。

そうすると今度は気になることが出てきました。

社長が自力で進化し続けるわけ

私の会社の社長はまだ30代。今の私と同じ年齢で会社を継ぎ、そこから10年会社を成長させてきました。
顧客への提案作成やプレゼンテーションに関わらせてもらった時、社長の顧客のニーズの核を捉える力、それを考え抜く力、そして的確な言葉で心に響かせるスキルに圧倒されました。

あぁ自分全然ダメだなと思うと同時に、この人はどうやってこのレベルに達したのだろう?と興味を持ったのです。先の理論によれば、もしやロールモデルや指南を受けている経営の先輩がいるのかも。
そんな予測をして率直に質問してみました。
返ってきた答えは、

うーん、特にないなぁ。誰との話でも勉強になるからね。

ズガーン!と雷に打たれた気持ちです。「誰との話も勉強になる」というフレーズにではありません。
そんな謙虚な人であれば誰でも言いそうな考えを、聞きかじった(しかも1%も理解できていないであろう)理論を知っただけで忘れ去った自分にです。

こんなに優秀な人ですら、顧客・スタッフ・家族の話を吸収して結果に繋げて謙虚でいるのに、足元にも及ばない自分が何と奢ったことか!とショックを受けました。


自己啓発は疑うことで見につく

ガリ勉出身の私は大学まで、学んだことを一つで多く力にすることを心がけていました。社会人になってクリティカルシンキングが重要と気づいてようやく疑うことができるようになりましたが、自己啓発の場面では一気に元の癖が戻ります。

少しでも多くを吸収したい!と素直に知識を受け入れて、メモ。「ふむふむこういうことに生かせそうだな。自分の体験にも近いものがあったな!」と理解を深めたつもりになる。

ここでの問題は2点です。1点目は、表面の言葉を拾って理解した気分になっていること。2点目は、それが正しいかどうか立ち止まらずに受け入れていること。

疑ってみて初めて、自分の理解がずれていることや、理論自体が不完全であることに気づくのです。

そこがわからないまま他に応用しようとしたら、他人に誤った知識を伝えたり、補完するアイデアや知識を得る機会を失います。

そんなものは学んだとは言えない。ましてや実践では使えない。

せっかく新しい知識を得た機会を、自分の世界を狭めることに使ってしまったことに気づけてよかった・・・と思いました。

今日たまたま夫に紹介されたYouTubeでROLANDさんが似たような話をされていました。
「自己啓発セミナーで真剣にメモを取っている人は成功しない。疑わない時点で思考停止になっていて、自分で考えないから。」という趣旨です。

グサグサ刺さりました。

(聴衆に向かって)だからこの中でもし今日ね、メモ帳を持っている人がいたら、メモ帳に一言だけこの言葉、書いて帰ってください。「メモを取るやつが一番成功しない」と。

世界で一番楽しい学校~SA-CUS~完全版【西野亮廣/堀江貴文/ROLAND/田中修治】生きるために大切なこと より

これは本当に書けと言っているのではなく、メモを取ったら成功しないと言っているのに、書けって言われたから「なるほど」と書いてしまったらヤバいですよ、という話です。(これもメモを取ることは例えで、思考停止していることが問題です。)

残念ながら私はその場にいたら書くタイプでしょう。

これからいっぱい学ぶぞと意気込んでいる2022年ですが、学び方を間違えると頭でっかちが加速してしまうと気を引き締めたのでした。

とりあえず読んでいる本のメモは疑いと再考のコメントをつけます。新しい癖になるように・・・・


追記:カバー写真はフクロウが首を回している様子。シャッタースピードが追い付かなかったのですが、何となくお気に入りで使いました。

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