脚の毛剃るのやめたよ

いつからか、「毛を剃るのが当たり前」な世界がやってきていた。


誰に頼まれたわけじゃない。だけど誰かに「当たり前だよね」とか言われてる気がしていた。








女友達と比べたりもしてた。

「私毛深いからサァ」と言われればすかさず
「私だってやばいよ!」と返した。



ちゃんと脱毛行ったりとか、常日頃から肌をケアしながら毛を抹殺できてる女の子は、私たち女の鏡みたいな立場にいた。

脱毛ってどんな感じなのとか、いくらするのとか、そんなことで何時間だって話せるような、キラキラした時間があった。

脇毛がほとんど生えないことを友達に言うと、決まって「いいなあ」と言われた。

当たり前に生きていて、当たり前に生えてきて、それを勝手に誰かに判断基準にされていた私たちに、逃げ道なんて最初から無かった。



綺麗になると嬉しかった。

セフレと会って肌を撫でられたときも、「私今、綺麗な女でいられてるよな」と、前の晩の丁寧なバスタイムを思い出してニヤリとした。







だけど、多分それって違ってたんだよな。

そこにきっと「私」はいない。

自分の毛が嫌で仕方なくて毛を剃り始めたわけじゃない。


知らない誰かにクスクスと笑われるのが怖い。


そんな確信のない想いだけだった。






脚の毛を剃るのをやめた。


無駄毛は多分無駄じゃないし、無駄毛を剃る時間が多分無駄だった。


これから先誰かにクスクス笑われることがあるかな。

けど、もしその笑いに、私が「女だから」という理由が微塵でも含まれていたなら。

そのときはきっと、かわいそうな人だねと、もっと上品な笑いで返せるだろう。







脚に生えた長い毛たちを逆撫でしてみると、ザラッとした感覚だけが残った。

つるつるした肌を触るの楽しかった。

毛のない脚が、本当に綺麗で美しく見えたな。


なのに今私は、自分の意思で脚の毛を剃らないことを選択している。


それでいい。それがいい。ともうはっきり言えるからだ。






これだけ強気に出ていても、きっと怖くなる日が来るんだろうな。



きっとまた、「女らしさ」を嘘でも保つほうが楽に生きられると気づいてしまうだろうな。



脚の毛を剃るのやめたよ、

いつか誰かにこんな私を認めてもらうためではないんだけど、

やめたいと思ったから、ありのままがよくなったから、


ただそんな理由なんだけれども。


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