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ナナとメロンパン

昨日、ナナが死んだ



ナナは15番目の妹で、
いつも一緒に食べ物を探していた

大好きなメロンパンに夢中になっていて、
車に轢かれちゃったんだ



妹が死んだら悲しい
でもお腹が空いて
17番目の弟と食べ物を探しに行くと
ナナのことを少し忘れ、
次の日になると
ナナのことは考えなくなる




パンが大好きな弟と、カフェテラスのテーブルの下に来た
ゴミと混ざったパンをツンツンツンとつまむけれど

パサパサしていてまずい





僕はやっぱり、雨の降った次の日に出てくる公園のミミズが大好きだ
見つけると朝から晩までミミズを食べる

僕の幸福な一日




でも、今日も空には太陽とカラス…雨は降らないな


カラスは大きな羽を伸ばして悠々と空高く飛んでいる
気分いいだろうね、王様のよう?
僕は高いビルの間を、飛び回って遊ばない

飛ぶことが好きじゃないし…








せっかく羽があるのにね…
って、ワニのおじさんに言われたけれど







じゃあ、ふわふわ漂うあの風船みたいに

太陽に向かって飛んでみる?








でも、太陽は暑い、僕は暑い日が嫌いだ
本当に暑い

大嫌いだ







冷たい水に浮かぶ白鳥やカモメが羨ましくなる
僕も、水に飛び込んでみようかな
でも、やっぱり濡れるのは嫌だし…

水が怖いんだ








そんな小さな鳩の足では
水をかくことなんてできないよ、って

怖い顔した白鳥のおばさんに言われちゃったし








僕は飛ばないし、太陽も、水も、パンもだめだ…






でも、さ…  
粋なカラーコンビネーションだねって。
カラスのお兄さんに言われたことがある






このグレーのボディーとピンクの細い脚が素敵だって






僕はカフェのテラスを、ちょっとばかし
リズムに乗って氣取って歩いてみた

みんなが羨む、僕のイカした脚









あ、メロンパンだ…

嫌いだったメロンパンだったけれど、僕はリズムに乗って食べてみた







ナナが命をかけたメロンパン
意外と美味しかった

その日から、僕は変わり始めたんだ!









僕はメロンパンを
食べるようになったし、

妹のことも
想い出すようになった


高い高い空の上を、
ぐんぐん太陽めがけて飛んで…



暑くなったら
水に飛び込む!



食事はいつも、
いくらでも落ちている
パンを食べる


             僕は変わったんだ!









とは言っても さて、この心持ち
いつまで続く…






雨が降ってミミズが出たら、
メロンパンは忘れるだろうし、
妹のことも、考えなくなる
空を飛ぶのって、やっぱり疲れるし、
暑い太陽も 嫌いだ、
水は不安だし 冷たいし

意地悪な白鳥のおばさんは
相変わらず僕を睨む








だけどね、

僕のピンクの
スレンダーなこの足は、リズムを刻んで





            ずっと君を 魅せつける










#創作大賞2024


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