9月読書記録

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「くるまの娘」
現代の家族の物語で、とても息苦しい。まったく同じでないにしても似たような風景、会話、キャラクターを思い浮かべたり思い出したりできるからだ。この物語の主人公「かんこ」の父は苦労してかつ自分自身の強い意志で一流大学から一流企業への道を歩き、兄、かんこ、弟と3人の子供を持つようになる。父は自分と同じ経験を子供達に強要する・・兄と弟は家をでるが「かんこ」は家を離れない。それはちゃんと理由がある。かんこは自分の意志で家にいるのだが体は動かなくなるのだ。「かんこ」の苦しみが延々とつづられていく。「かんこはそう思うことにした」という記述がつらい。社会に向けて訴えかけている小説だ

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「孤蝶の城」

男として性を受け、夜の街での仕事~芸能界へ。生死をさまよう性別適合手術を受け戸籍を女性に変えて生きるカーニバル真子。明暗入り乱れ疾走する物語の数々におなかいっぱいで読了。「祭りは続けなければ寂しくなるだけだ」~ラストノブヨの「あんたは生きた虚構だと思うの」が心に残る。腹をくくって自分の欲望と感情に忠実に生きつづける真子は強くてカッコいい。気が変になったりせずに真子を生き続けられるのは支え続けた姉章子や母マツ、マネージャーの坊や他多くの協力があってこそだと理解できるし、他たくさんの登場人物も悪だったり薄汚かったり狡猾だったり。。様々だけれど憎み切れない・・という小説だった

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主人公は小説家、言語をひとつづつ消滅させていく中でどう小説を書くか・・というお話。最初に消滅させたのは「あ」・・これはとても大きい消失だ。大事な言葉は「あ」から始まるのだと気がついた。また使える言葉が少なくなるにつれて感覚も雑になるらしい。途中、「わぁあ、こういのを天才!っていうんじゃないか」というページもある(とってもシリアスなんだけど笑えるという場面)どんどん使える言葉がすくなっていくなか、小説家は生い立ちを振り返るようになる、これって。。よく人が亡くなる時期が近づくと過去を振り返るということと同じことなのかと考える。最後に消滅するのは「」で終了。・・言葉が消滅する恐怖を感じたいけど、どうしても笑えてくる小説だった

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「夫婦って一体なんなのだろうか」「人の一生ってなんなのだろう」と47歳書店勤務のみゆきは考える。出版社営業マンのオット範太郎とは家庭内別居状態が5年位続いている、中3息子昴は挙動不審・・風穴を開けたのは昴の富山への家出。さてこの家族の行方は・・という物語。「あるある」満載。上から目線マイペースの夫、感情に任せて喜怒哀楽の妻垂れ流し・・こんな夫婦体系は昴の指摘通り何年かのちには消滅しているといいなと自分たちをも顧みつつ読了。

「生皮 あるセクシャルハラスメントの記録」元編集者で小説家講座講師月島(60歳前後)が7年前のセクハラ行為で訴えられた。訴えた咲歩は7年苦しんできたのだ。咲歩とオットの俊の苦しみ、月島、月島家族、講座生などの視点や感情~最終2ページでぽろぽろ泣けた。なんで泣けるんだろうともう一度読んだらやっぱり泣けた。咲歩の苦しさに少しでも共感できたのかもしれないと考える。セックスという行為が各個人にとってどういうものなのか、どう考えているのかを変化があることも含めてしっかりとつかんでおくべきだなとも考えた

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「点滴ポール 生き抜くという旗印」作者は17歳のとき、自分の命をたとうと思ったことがある・・と始まる。「生きることにした」けど苦難は続き「生きることは闘いだ」という。
生きることを支えてくれるすべてに対して感謝しつつ生み出されていく詩の数々。まぶしい力強い優しい暗いつらい勇気づけられる・・とうとう思うことは無限に出てくる。いつまでも何度でも読みたくなる。

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2009年刊行時から我が家にある本。「死ぬということはどういうことなのか。これが精神にとっての最大の謎である」と始まる。<生>と<死>=<ある>と<ない>、科学の始まり~宗教について・・等々、現在も延々と続く諸問題の回答がここにあるじゃないかと独り言。読み疲れてきた頃、愛犬コリーが登場する。さらに、延々と生死について考える、生きるとは、死ぬとは・・。最後の章は医療者向けセミナーの講演原稿。病状悪化につき登壇はできなかった。魂のこもった文章は熱をもっていて、心を打たれ涙せずにはいられない。

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魂とは何か、について思考し深めていく。ついつい引き込まれ、自分も「魂」美しい言葉だなと思い、自分なりに「魂とはなにか」についてつらつら考える・・とはいえ、くたびれて本を離れると、「夕飯の準備をしないと」とか「今週も忙しいな」とかすーぐに日常のあれこれに戻っていくところがなんとも情けないというか、365日考えてる人は凄いわと思わずにいられない。「少年A」の話も印象深いし「埴谷雄高」氏他読んでみたい本もいろいろあった。「死とは」よりも親しみやすいように感じる。「善く生きる」とはどういうことだろうと思いつつ読了

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