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「本当に欲しかったものは、もう――Twitter文学アンソロジー」あとがき


「タワマン高層階は気圧が低いから米が硬い」というジョークをネタにTwitterに小説を書くようになってから1年半。単著が出て、それが重版を重ねるというだけでも宝くじに当たるような僥倖だというのに、今度はプロの作家と名前を並べた本を集英社から出して頂くという名誉を得た。

紀伊國屋書店新宿本店のバックヤードで本にサインを書きながら、大盛堂で木爾チレン先生とトークイベントで対談しながら、
「このシーンは絶対に死ぬ間際に流れる走馬灯に挿入してもらわないとな…」
と、他人が主演するドラマを見るような感覚で俯瞰していた。

ここら辺の感覚については集英社からエッセイを書く機会を頂いたので下記に記してあるが、未だに実感が湧かないし、おそらくブームの炎の残り火が燃え尽きる最後の瞬間まで、何が起こったか理解できないままなんだろうと思う。

今回、私の果たした役目はオーケストラでいえば前奏、コース料理における食前酒以上でも以下でもないが、尊敬する新庄耕先生にバトンを繋ぐという役目を果たしただけで、個人的な達成感はある。直接やり取りすることはなかったが、バックグラウンドも年齢も性別も異なる多士済々な面子と一冊の本を作り上げることができたのは本当に面白い経験だった。

一冊でも多くの人に届いてほしいし、我々のことを信じてサイン本を発注してくださった書店員さんの期待に少しでも応えることができれば言うことはない。

最後になりましたが、編集者である稲葉努さんには本作に限らず、作家を目指す過程で、そして本を出してからも様々なご助言を頂き、感謝の念に堪えません。この一冊を通じ、少しでも恩返しができたならば幸いです。

2023年4月10日 外山薫

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