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料理上手は、聞き上手

「どうやったら、スープだけでそんなにたくさんの組み合わせを思いつくんですか?」という質問をよく受けます。あまりに聞かれるので、たとえば、旬のもの同士、種が同じ野菜は相性いいですよ、クセや香りが強い野菜は1種類にとどめて、などと答えていたのですが、よくよく考えると食材の組み合わせの前にしていたことがありました。

それは、一種類の食材をしっかりと味わって、その声を聞くこと。

なんだか魔法使いみたいな話ですが、特別なことではなくて、ひとつの食材をなるべく他のものと組み合わせずに、簡単な調理、簡単な味つけで食べていただけ。

ブロッコリー、たまねぎ、にんじん、小松菜など、野菜ひとつで作るスープや料理を、よく作ります。それぞれの野菜に持ち味があるので、同じ調理法でも、まったく別のものになるのです。
食材による違いは、濃いだしや調味料を使ってしまうとわかりにくくなってしまいます。シンプルな調理、シンプルな味付けを繰り返していると野菜たちの特長がだんだん理解できて、こういう食材と一緒にしてくれとこちらに訴えてくるようになります。その声に従って組み合わせると、無理がないのです。

たとえば、キャベツの葉をちぎって、皿に盛り、塩を添える。「ちぎりキャベツ」という立派な料理として成立します。塩だけではもの足りないと思う人は、サラダオイルでも、オリーブオイルやごま油でもいいので、油を少しかけてみてください。居酒屋で出てくる一皿になります。(ちなみに串揚げ屋でソースにつけて食べるキャベツ、あれも同じですよね)

生のキャベツは千切りにするとまた別のおいしさです。酢と油を1:3、それに塩少々を混ぜたドレッシングをかけたらコールスロー。ドレッシングを作るのがめんどうなら、調味料を直にかけても構いません。私が子供のころは、食卓に酢と油と塩が出ていて、自分好みの配合でサラダにかけて食べていました。市販のドレッシングよりずっと直球だし、食材だけでなく調味料の味まで覚えられます。

加熱するとキャベツは甘く変化します。ざく切りしたキャベツを鍋に入れ、少量の水を加えてふたをして火にかけます。ときどき中を覗きつつ7分前後じっくり蒸し煮すると、これだけでキャベツのオイル蒸し。最後にバターを混ぜて、しょうゆをかけたらご馳走です。

キャベツに塩とオイルだけかけてもしゃもしゃ食べていると、こんな声が聞こえてきます。

にんにくを足したらおいしいんじゃない?
にんじんも入れてみたら?色がきれいになるよ。
かつおぶしが絶対合うよねー。

うれしいのは、この料理のトレーニングは、手をかけずおいしく食べる方法でもあるということです。今お話したシンプルサラダやオイル蒸しは、キャベツ、調味料、油だけで、10分もかからずできるような料理なので、あと一品というときに何も考えずに作れます。

料理をしてやろうとあまり力まず、食材の声を聞くようなつもりでやるほうが結果的に料理はうまくなる。そんなふうに感じています。

【キャベツのオイル蒸し】
キャベツ 1/4個 バター10g しょうゆ適量

1鍋にちぎったキャベツと塩を入れ、水50mLと塩を入れてふたをして6~7分ほど蒸し煮する。
2蒸しあがったら余分な水を切り、バターを落として全体を混ぜる。醤油をかけて食べる。


読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。