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ミールスと、ひとさらごはんと、それからそれから

昨日、久しぶりにエリックサウスでミールスを食べた。ミールスが何かを知りたいという人と出かけたので、自分もあらためてネットなどでミールスを学びなおしてさまざまな発見があった。

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ミールスと「皿上調味」

ミールスとその食べ方についてはこまごました説明をすればするほど難しく感じてしまうので、興味のある人は私のような初級者に聞くよりこの下に紹介するエリックサウスのサイトを見てほしい。本当にわかりやすい。

久しぶりに食べて思ったのは、ミールスは一見、いろいろな味を少しずつ楽しめる「インド風幕の内弁当」のように感じるのだけれど、その本質は全く違う、ということ。ミールスの大きな特徴は、料理を混ぜ合わせながら食べるという点にある。まずひとつずつの料理の味があり、さらに皿の上で混ぜ合わせて第3の味第4の味を生み出せるところが、面白さと、私たち日本人にとっての新しさだ。

私は、ミールスのこの「皿上調味」に強く興味をひかれた。日本人が、主食とおかずと汁を三角食べすることによって口の中で味を混ぜる「口中調味」をしているのに対し、インド人は、皿の上で同じことをやっているのだ。
つまり、ミールスは私たち日本人が口の中でおこなってきたことを、むき出しにしたものといえる。

とはいえ、インド料理についてこれ以上語るつもりはなく、単純にそういうことを自分の料理で応用できないかと思って、今日の昼、スープかけごはんで試してみた。

スープでミールス食べを実験!

まずは昨日の残りものの「塩豚と大根のポトフ」に、ごはんを入れたもの。具は、ほろほろに煮えた塩豚、そして大根。塩味のみ。他のものは一切入っていない。

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塩豚からスープがたっぷり出ていて、ごはんにかけるとこれだけでも相当おいしい。いつもはこのまま最後まで食べてしまう。せいぜい、柚子胡椒や胡椒をかけたり、刻みネギをのせるぐらいだ。

少し食べたところで「たまねぎのスライスにポン酢醤油とごま油を混ぜたもの」をのせてみる。で、お皿の中で混ぜ合わせて食べると……

おいしい!新鮮!酸味と塩味と歯ざわりがプラスされて、スープのうまみが引き立つ。

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紫たまねぎの薄切りサラダを、スープかけごはんにトッピング。たまねぎはみじん切りにすればよかったかも。

さらに、食べ終わるころ、試作のためのトマトポタージュがあったことを思い出して加えてみたら、これまた味変。一気に洋風に倒れる。元のポトフがニュートラルなので、あっちこっちに変わるのが楽しい。トマトケチャップで炒めたミニおかずみたいなものでもいいのかもしれない。ミールスのパパドみたいに、ちょっとパリッとしたおせんべいみたいなものを足してもよさそう。ポテチをくだいたものでも。

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ミールスはアイテムが多いのでほぼ無限に味が生み出せるわけだけれど、
①ごはん②スープ③野菜のおかず、というたった3アイテムでも、十分変化がついて、スープかけごはんの進化形が見えてきた。

皿上調味は、日本で進化する?

さて、ここから余談。

松屋の「うなぎコンボ牛めし」をご存じだろうか。

もともと日本人は、きれいな味を好む傾向にある。出されたときに料理どうしがくっついて味が混ざることを嫌い、一つずつ小皿に盛って出すし、弁当であれば幕の内みたいに味が混ざらない仕切りや工夫をする。

だから松屋のうなぎと牛丼も、本来の流れであれば、ミニうな丼とミニ牛丼セットになるはずなのだ。
このメニューはミールスとは違い、あくまで二つの味を一食で楽しむものであり、混ぜて第3の味を生み出すものではない(もしそういう食べ方をしている人がいたら、それはそれで革新的だな)。が、この2種のあいがけが許されたところに時代を感じる。このようにして、これまで守ってきた味の常識と境界線はなくなっていくのだろう。

ミールス以外にもすでに私たちに入り込んでいる「皿上調味」料理はたくさんある。タイ料理のガパオライス、ハワイのロコモコ、タコライスなどはこれに近くて、普通はサラダボウルに別に分ける生野菜を一緒に皿に盛り合わせてしまって、ごはんとソース、トッピングなどを自由に混ぜ合わせつつ食べる。
エスニック料理に多いパターンで、90年代のカフェ飯ごろから始まっている流れでもあり、それを新しさに感じていない人もいると思うが、一汁〇菜にこだわり続けてきた家庭料理の分野では、まだまだ浸透しているとはいえない。

とはいえ、エスニック料理が市民権を持つに従い、この感覚は徐々に浸透しているのでは。そして、この食べ方をブレイクダウンして家ごはんの文脈に取り入れられないかなと思う。

●1、2の味を組み合わせて第3の味を皿の上で作る
●それが食べ手の意志で自由に行われる
●時間経過によって一皿が変化していく

このあたりが含まれたレシピができると面白そう。私の貧弱な頭が思いつかないだけで、もうたくさんあるのかもしれないけれど。

そんな、ミールス体験からの雑感&実験。日本のごはんのそれから、これからを考えました。

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一皿ごはん、プラスワンで大きく膨らむ可能性。


読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。