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私の読書●小説家志望の読書日記

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日々の読書の感想・雑記です。 お気軽に覗いていただければ幸いです。
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#ドストエフスキー

私の読書●小説家志望の読書日記㉘ドストエフスキー『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』

 「『罪と罰』を読まない」という本がちょっと話題になっているようである。  私は4人の作家のその「読書会」は読んでいないが、ある意味、ドストエフスキーを読まない方がよかったと思うときもある。  なぜか。  あまりにも面白すぎて、他の小説が色あせて、ほどほどにしか楽しめないのである。  ドストエフスキーのとりわけ『罪と罰』と『カラマーゾフの兄弟』。  この2つを読んだら、これ以上面白い小説は読めないという悲しい諦観が来てしまう。  若いころ、面白すぎて夜を徹して読んで以来、何度

私の読書●小説家志望の読書日記⑦伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』

 プロローグが伊藤氏の絶筆で、あとを円城氏が書き継いで完成させたという作品。  結論。あえて先を書く必要などなかったのではないか。売れることを見越した出版界の思惑の産物かと思ってしまう。文体のみならず、感性も思索、あるいは思想もまったく異なるものになってしまった。登場人物の造形もあやふやで個性がない。エピローグだけでも十分に期待させたそれがまったくない。毒を吐くなら「エピローグ」を「屍者」化してしまった作品だ。やはり、今やかなわぬこととはいえ伊藤氏自身の作品を読みたかったと思

私の読書●小説家志望の読書日記⑫ 翻訳について

 ドストエフスキーの『罪と罰』は、古い中村白葉訳の岩波文庫をずっと愛読していたのですが、丹念に読んでいるとどうも誤訳ではないかという部分がいくつか、ささいなものなのですがあって、この度岩波文庫の新装版の江川卓訳のものを購入しました。  翻訳ものもたくさん読んだけれど、やっぱり訳によって全然受ける印象が違うものってありますよね。特に実感したのはシェイクスピアの『ハムレット』。新潮文庫訳(福田恒存訳)と角川文庫訳(河合祥一郎訳)が、全然イメージが違うんです。単に翻訳した時代の違

私の読書●小説家志望の読書日記①はじめに

はじめに 自己紹介私は芥川龍之介とドストエフスキーをこよなく愛しています。ほとんどの作品を読んでいます。それも一度や二度ならず。 ごく若い頃にひどく落ち込んだとき、芥川龍之介がいたから生きていようと思ったことがあります。晩年「或阿呆の一生」や「歯車」など、多くは遺作となった作品です。不思議ですね。 本当に辛いときに、明るく楽しいものなど何の役にも立たないのです。寄り添ってくれるのは限界まで研ぎ澄まされた真実の叫び。 もともと好きな作家ではあったけれど、このとき芥川は私の