草の根広告社/父子手帖(ニコニコチャンネル復旧までの臨時更新)
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「己を知るということ」
たとえば、体重計測。自分の体重は今何㎏なのか。もっと言えば筋肉量や体脂肪率。今の自分を正確に知ることで、目指す自分に何が足りないのか。何を補うべきなのかを知ることができる。やるべきことが見えてくる。
己を知る。それは成長の第一歩でもある。しかし、そこには残酷さもある。現実を知るという辛さだ。
来春に予定されている娘のバレエの発表会に向けた準備が始まった。「瀕死の白鳥」の名演を芥川龍之介も賞賛したアンナ・パブロワ。それを受け継いだマイヤ・プリセッカヤら、伝説的バレリーナの伝記を読み漁り、毎日のように彼女たちの動画を見ながら踊っている娘には「ソロで踊りたい」という願望があった。先生から「期日までにアンサンブルかソロの希望を出して下さい」とも言われている。希望があるなら言うだけ言ってみれば、と親としては思った。
「もしも先生がぜひソロで踊って下さいって言ったらどうする?」と聞いたら恥ずかしそうに「お引き受け致します」と答えた。
でも、娘は自分からやりたいと言い出すことはできない。自信がないのだ。それは自分の実力――己を知っているからでもある。
20代の頃「ドラマの脚本書いてみる?」と局のプロデューサーに言われ「やります」と書いたことどころか読んだこともないのに引き受けた自分を思い出した。今にして思えば書いたことがなかったから引き受けることができたのだと思う。一度でも書いたことがあれば、すなわち己を知っていればとてもじゃないけれど恐れ多くて引き受けられなかった。若さゆえの無知というのは本当に恐ろしい。
結局、娘はアンサンブルで希望を出した。
数日後、七夕の短冊に「次の次の発表会ではソロでおどれますように」と書かれているのを目にした。
胸が締め付けられるような、切ない気持ちになった。現実を知ることは成長の第一歩でもある。数年前、バレエを始めたばかりの頃は無限の夢や理想を信じて笑っていた娘が現実の暗い影を感じ始めたことが切なかった。それが成長の第一歩なのだと頭では分かっていても。
君にはまだ無限の可能性があるんだよ、と伝えてあげたかった。世間ではそれを「無責任」と呼ぶのかもしれないけれど。