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草の根広告社/秋谷日記(ニコニコチャンネル復旧までの臨時更新)

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「アイアム・ア・コメディアン」

 夏が始まった。今年もナスとピーマンが順調だ。一方、トマトとキュウリは今ひとつ生育が悪い。受粉率も悪い。トマトは実が成っても赤くなるまでに時間が掛かる。やはり温暖化による気候変動のせいか。日中と夜間の寒暖差が小さい今のような気候ではトマトは居場所を失っていくのかもしれない。実りの少ない緑色のトマトが居場所を失いつつある自分自身と重なる。

 居場所――唐突に聞こえるかもしれないけれど、50代に入ってから改めて居場所について考えていることが多い。試写を観せて頂いた映画『アイアム・ア・コメディアン』もそんな「居場所」がひとつのテーマになっていた。

 ウーマンラッシュアワー村本大輔さんの激動の3年を追ったドキュメンタリー。生まれ故郷である福井の原発再稼働。沖縄の基地問題。朝鮮人学校の無償化問題。自ら足を運んで当事者の声に耳を傾け、そこでしか得られない「笑い」をネタに練り込んでいた彼は、テレビから消えた(ビートたけしさんがよくてどうして彼がダメなのか、ぼくにはまるで理解できないのだけれど)。その後コンビ漫才ではなくスタンダップコメディでライブに活路を見出した彼は「どうしてバンドエイドには俺の肌の色がないんだ?」という自虐的なネタで笑いを取るアメリカの黒人コメディアンに衝撃を受ける。少年時代、サッカーが好きだという理由だけでサッカー部でもないのにブラジルでサッカー選手になると吹聴していた彼は相方のパラダイス中川氏に「アメリカに行く」と宣言。ニューヨークの舞台に立つという目標に向かって走り始める。が、地道なライブ活動で渡米費用を稼いでいた彼の前に立ち塞がるパンデミックの壁。すべてのライブを中止せざるを得なくなった彼は「居場所がなくなった。もうどこにも居場所がない」と涙を流す――というのが本作のミッドポイントだ。

 彼の言葉を聞きながら、ぼくも涙を流していた。居場所がなかった子どもの頃のことを思い出していた。学校はもちろん家にも居場所がなかった。家族といるときはいつも居心地の悪い思いをしていた。

 10代の頃に読んだ「キャッチャーインザライ」。JDサリンジャーも「居場所がない」と綴っていた。1950年代に若者が誕生。自由を獲得した彼らはそれまで「子ども」と「大人」しかいなかった社会の中で初めて自らの「居場所」について思い悩むようになったという。

 若者は自由だ。自由だからこそ社会の中に居場所を見つけて根を張らなければ実をつけることができない。

 若者だったぼくに居場所を与えてくれたのは芸能界の先輩たちだった。放送作家という肩書きで居場所を与えて貰って30数年。時代や環境の変化についていけていない自分を感じたとき「もうここにはいられないんだな」「とっくに潮時なんだな」と強く感じるようになった。

 ぼくはまた自由になった。子どもでもなく、大人でもない若者だったあの頃のように、大人でも高齢者でもなくなった「ぼく」は新たな居場所を見つけて根を張らなければならない。実をつけ続ける為に。

 そんなことを思いながら、この里山に居場所を失いつつあるトマトを剪定する。去年は過去最高の暑さだった。この里山を生まれ故郷と勘違いしてたくさんの実をつけているインド生まれのナスと南アメリカの熱帯地方生まれのピーマンが眩しく思える。そのインドは今年も連日50度越えの記録的猛暑だ。インドにはナスが命を繋ぐ居場所は残されているのだろうかと心配になる。自分のことのように心配になる。

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