【PP】やはりモンスターはモンスターだった「井上尚弥vsノニト・ドネア2」試合後の感想。
いやー、すごかった。すごかったよね、、、(余韻)
アマプラ見た方は同じ感じになってると思うんですけど、とにかくすごかったんですよ。井上尚弥vsノニト・ドネアの三団体統一戦。結果はもうね、改めて言う必要もないと思いますけど、2RTKOの圧勝でした。
まあ、戦前から井上選手有利の下馬評はありましたけども、ドネアもウーバーリとガバリョを捻じ伏せて来てましたから、勢いはあったと思うんですよね。年齢はまあ、もうキャリア終盤なのは間違いないですけど、それでも、バンタムでは頭一つ抜けた最強の相手だったんじゃないかなあと思います。カシメロ?なにそれ、うまいの?
今回、1R始まってすぐ思ったのは、井上vsドネア1の時より、体格差を感じなかったなあ、ということ。前回は、ドネアが二回りデカく見えましたけども、試合後のインタビューで井上選手も言っていた通り、ドネアは計量後の体重の戻しをかなり抑えたみたいですね。どうやら、パワーで押すより、井上選手のスピードに負けないように、という戦略だったんじゃないでしょうか。井上選手のスピードはもう異次元なので、スピードで圧倒されたら相手にならないと思ったんでしょう。1R序盤は足も軽かったですし、調子もよかったように見えました。
最初に、うわ、ってなったのは、ファーストコンタクト。いきなりね、ドネアが飛び込んで左フックあてるんですよね。前回対戦で、井上選手の右瞼をカットしたあれ。あれはもう、ドネアのバチバチの挑発だったのと同時に、陣営の作戦だったのかもしれないですね。ド頭で前回の悪夢をフラッシュバックさせて井上選手の意識をディフェンスに向けさせ、1Rから主導権を握ろう、みたいな。たぶん、中間距離では勝負にならないってドネアもわかっていて、スピードで距離をつぶし、そこから体格を活かして圧力をかけて井上選手をロープ際まで詰めるのが第一プランだったんじゃないかなと思うんですよね。弟の拓真選手ほど、ロープ際のディフェンスがうまいイメージないですし。そこから、強打ではね返してスペースを作って、するっとフットワークでエスケープするのが井上尚弥選手だと思うので、その、前に出てくるタイミングで後ろに引いて、井上選手を引き込んで伝家の宝刀・左フック、という作戦だったんじゃないかなあ。
でも、あの冒頭の左が逆にモンスターを目覚めさせたというか。
1R1分半くらいのとこで、踏み込んだドネアに井上選手が左フックを当てたんですけど、あれが序盤の井上選手側の作戦だったんだろうと思います。当日計量の結果から、ドネアがスピードで距離をつぶしてくるのを見越して、踏み込んで来たところに徹底的に合わせていく、っていう。
相手を引き込んでのチェックフックって、本来はドネアの得意パンチなんですよね。惜しくもガードされましたけど、「フィリピンの閃光」を完全に上回る超絶スピードだったと思います。そこに至るまでにも、牽制の左ジャブをとばしつつドネアをわざと引き込んで、そこに左フックを合わせようとしているシーンが結構続いてたんですよね。だんだんタイミングあってきてたので、ドネアも迂闊に踏み込めなくなっちゃって。ダスマリナス戦でも、サウスポーの右ジャブに合わせて左フック被せるという荒業を1Rで披露してましたけど、あれはドネア2を見据えて磨いていたのかも。
今回、井上陣営は、ドネアの左フックの打ち方をかなり研究していて、なんなら逆に左フックで倒してやろう、みたいな戦略を立てていたのかもしれないですね。プロレスで言う、「掟破り」みたいな。相手が自分の得意パンチを打ってきたらそりゃ動揺するでしょうし、左フックでドネアを倒せば、圧倒的な強さが引き立ちますしね。そんなことしなくても圧倒的に強いですけど。元々、井上選手も左フック得意ですしね。ナルバエス戦2R、相手の左フックに合わせたカウンターの左フックとか芸術の域でしたもの。
今回は、ドネアを圧倒することが、今後のマッチメークや、ビックマッチに影響するんだと思うんですよ。大きなインパクトを残せば、パッキャオみたいにアメリカの市場に食い込めるかもしれないですし。井上選手がお金を生む選手にならないと、相手は対戦を避けてしまう。儲からないなら、わざわざ強い相手とやる意味ないですからね。そうすると、井上選手が望む、強いボクサーとの対戦は難しい。アンカハスみたいに露骨に逃げられますからね。だから、井上選手は今回、「自らの価値を高めること」にこだわったのかなと思います。
1R後半、主導権を握られそうになったドネアが、自分のプランに引き戻そうと、強引に圧力をかけてワイルドに振り回してくるんですけど、井上選手はまったくペースを乱さず。体のコンタクトでも負けてなくて、S.バンタムに上げても問題ないだろうな、と思わせてくれます。圧力をかけられても、ドネアのガードの隙間に的確にジャブやクロスを差し込んで、ドネアを下がらせます。そこからの、あのシーンですよ。ファーストダウン。鮮やかな右カウンター。今回の試合で最高のパンチでしたね。なんなら、井上尚弥史上最高のパンチだったかもしれない。パヤノを倒した変則リズムのワンツー、モロニーの二発目のジャブに合わせたカウンターもすごかったけど。
ドネアがなんであんなにきれいにもらったのかと思ってあとでスローを見直したんですけど、井上選手はまず左のパワージャブ打って印象付けをしてるんですよね。ドネアのガードが飛ばされるくらいの威力のジャブ。で、もう一本同じのを打つようなフェイントを見せた。ドネアはそこに左フック合わせに行くんですよ。これも正直、神反応なんですけど、やば、フェイントだ、って気づいて止めたときにはもう遅くて、井上選手はすでにドネアの左フックに合わせた右のカウンター打ってるんですよね。ドネアが左を振ってても多分当たってたと思いますけど、あんなにクリーンヒットはしなかったかもしれない。並の選手だったら、カウンターを取りにいかずにガードを固めてダッキングしてたでしょうし、ドネアが素晴らしい選手であるからこそ、結果的にあの右クロスがガラ空きのテンプルに直撃してしまったんだと思います。あれ、たぶんドネアは見えてなかったですよね。なにが起こった?って顔をしながらダウンしてましたし。
これで、もう十中八九、井上選手の勝ちだな、と思いました。あのダメージは絶対回復しないだろうなあー、っていう。むしろ、立ったのがすごい、というレベルで。並の選手だったらあの一発で終わってたでしょうね。もし僕だったら、あの一発で終わってる。人生が。
2Rは、開始から左ジャブ→左フックのコンビネーションを多用。ドネアが左ジャブに合わせて突っ込んできたところに左フックを合わせる、左左の二発。これ、クリーンヒットする前の左二発のコンビは、顎の高さにジャブ打ってからわざとドネアの腕に左フックあててるんですけど、これもたぶん印象付けなんじゃないですかね。次の二発は、少し高めにジャブ打って誘って、腰より下に左拳下げてからフック打ってんですよね。ドネアは、体捻って左腕で腹をガードしつつ、左フックに被せるオーバーハンドの右を打とうとしてる(これもすごい)のに、下からアッパー気味にフックが飛んできたので、もろにもらってしまった。そもそも、あのスピードで二発飛んでくるのも驚異だと思いますけど。
今回、井上選手は、パンチを当てる角度をかかなり意識してたんじゃないでしょうか。連続で同じコンビネーションを出すときは、絶対角度が違ってて、相手が、同じの来た、と思ってカウンター取りに行くと逆にもらっちゃうようなパンチを置いてるんですよね。これも、ドネアのカウンター対策だったんですかね。
その後にドネアをぐらつかせたのも、左のスマッシュみたいな軌道の突き上げるようなフックでした。これ打つ前には頭をおっつけてドネアのガードに隙間を開けといて、一瞬で頭起こしながらガードが閉じる前にパンチを差し込んでるように見えます。とにかく、ガードの隙間にパンチを差し込むのがおそろしくうまい。
フィニッシュブローは、美しく、あまりにも速いワンツーフック。あんなテンポで三発打てる選手います? あれもねー。その前にワンツーを打って、それを印象付けてるんですよね。その印象があるから、ドネアは二発目のストレートをパリィして反撃しようと無意識に頭を起こすんですけど、そこに返しの左フック。あんな、グロッキー状態の相手を前にしても、雑にならずに的確なパンチの当て方。もう、次元が違うとこに行ってしまっている感じがしますね。前からか。
井上選手が強いのはもちろんわかってましたし、早いラウンドでの秒殺KO劇もあるかな、と思ってましたけど、それでもなんか、想像以上に強すぎてねえ。パワー、スピード、テクニック、すべてにおいて、ドネアの上をいっていた。強すぎてちょっと引いてしまい、寒気までする始末。強い!とかじゃなくて、この人怖い!になった感じ。
井上選手の試合はスピードとパワーに目が行きがちですけど、一番の武器は目なのかな、と思いました。相手のことを本当によく見ている。そして、自分がこう動けば相手がこうリアクションする、っていうのを完全に見切っている感じで。コンマ何秒という間に、どうやって相手を動かし、パンチが当たる状態に持って行くか、すべて計算づくで打ってるんだろうなあ。それか、「ザ・ワールド」のスタンド能力を使っている。
次戦、4団体統一戦ができるならやりたい、という井上選手の言葉に、バトラーが前向きな反応をしてましたけど、本当にやるのかな、、、WBSSではロドリゲスに遊ばれてたけどなあ、、、
なにはなくとも、年末までには、4本のベルトを持った井上選手の姿をみたいなと思いました。いやあすごかった。それしか出てこないですわ。