人生の辻褄
青森駅から 新町通を東へ数百メートル行ったところに、赤提灯の灯る一軒の焼鳥屋がある。覗くたびに満席だったけど、最後の晩ようやく入ることができた。
店全体がまるで家族のような一体感と活気に満ちており、客たちは店中に響き渡るような大声で話す。
友達どうしの若い家族連れは人生を語り 笑い合い、幼い子供は大声で皆に愛嬌を振りまき、店の中を走り回る。
隣の若い男は、私の三倍くらいのピッチで杯を空けていたが いささかも乱れない。明るい瞳で、青森のねぶた祭が日本一の祭であることや、明日買う土産は何がいいかを教えてくれた。津軽弁がわからず、土産物の名前を三回聞き返したど・・・
今回の旅では、ほぼ全ての店でと言っていいくらい、隣の客から話しかけられた。仕事や観光で来た人や 現地の人など さまざま。
隣の客に話しかけるのは本当はルール違反、と山口瞳が書いているのを読んだ二十代後半以降、相手から話しかけられるまで こちらから話しかけるのは避けるようにしているが、これからは若き日の自分が世話になってきたことへの恩返しをする番なのかもしれない。長い目で見れば、人生は辻褄が合うようにできているのだろうか。
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