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切り絵短編物語 文と絵:若林 薫

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今 生きているこの時に 私が五感で感じるものを 絵(切り絵)を描き 詩を読み その背景を書いています
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#タツノオトシゴ

みなまたの海はタツノオトシゴの愛のゆりかご

日本が敗戦から復興し  やがて高度成長期に突入します。 特に太平洋側の沿岸地域では 大規模な工業地帯が次々と誕生し 日本は世界第2位の経済大国となりました。 工場は拡大の一途をたどり そこから排出される汚染された水や有害な物質を 含んだ煙の処理は後回しにされたままでした。   市中を流れる川は濁り、海水は茶色く染まり異臭を放っていました。 水質は最悪の状態となり、水産業は甚大な被害をこうむりました。 魚貝類の体内には有害な物質が蓄積され それを食する人間にも多大な害を与えてし

「龍の忘れもの」万能な力を持つ龍の忘れもの・・・

体長わずか15㎝程のこの魚は立ち姿で泳ぎます 小さな背びれをふるわせて 潮の流れに流されない様に 海藻などに丸い尾をからませて ゆらゆらとゆれて 一日の大半を過ごします   それでも繁殖期になると 海中を漂いながら結婚相手をさがします 気の合う相手が見つかると メスはオスのお腹に卵を産み落とします その受け渡しはわずか10秒前後らしく その時に出来る2匹のシルエットが ハート型になると言われていますが なかなかレア物で海の専門家でさえ 目にする事は稀な様です   やがてオスは