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【レンズフードの話】AI Nikkor 85mm F1.4Sに有効なレンズフードを探せ

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純正レンズフードでは短すぎる

AI Nikkor 85mm F1.4S(1981年)には金属製のねじ込み式フードHN-20が付属する。しっかりとしていて作りがいいが、斜光線をカットするには短すぎる。所有しているがずっと使っていない。

AI Nikkor 85mm F1.4Sに限らず、筆者の経験では1980年代から1990年代までのフィルムカメラ用交換レンズは、いずれも純正レンズフードが「短すぎるものばかり」と思っている。ユーザーが光学フィルターを使った場合に画面四隅がケラれることがないように、安全幅を大きめに取るように意図されたのだろう。

「オールドレンズのフレアがエモい」というユーザーであれば長さの足りないレンズフードでもいいだろうが、筆者は逆光や半逆光で撮ることが好きでも、レンズフレアを有効に使うことができない。だから、画面に意味のないフレアはカットしたい。

純正レンズフードのままでも斜光線を切るのに足りるかな……と思えるようになったのは、デジタルカメラの時代になってからだ。残念ながら長さが短すぎる製品はまだある。

フィルム面よりもずっと平面性が高い撮像素子がカメラ内部に用いられるようになり、有害光が乱反射しやすくなった。そのために、ゴーストやフレアに対してよりシビアな対策が求められ、内面反射対策としてレンズ内部のコバ塗りの徹底、コーティングの改良がなされ、同時に樹脂製の専用のバヨネット式花形フードが付属するようになった。安価な標準ズーム製品だと別途購入させる製品があるのは閉口するけどね。構造的には専用花形フードがあるならば、それがいい。

AI Nikkor 85mm F1.4S

コンタックスメタルフードを使う

筆者は同時にまた「フード病」患者でもある。レンズフードとして斜光線をカットする役目以外に「好みの外観であってほしい」と願ってしまう、めんどくさいタイプということだ。

筆者は金属製のごついレンズフードが好きだ。そこでまずは筆者が用いたのはヤシカ/京セラがかつて手掛けていたCONTAX RTSシリーズ一眼レフ用の「コンタックスメタルフード」を転用すること。これは、⌀86mmの金属製ねじ込みシステムフードというべきもの。レンズのアタッチメントサイズに合わせた各種アダプターリングと組み合わせて用いる。ただし、レンズフード先端にはねじは切られていない。

筆者には半光沢の塗装や仕上げがよくて、ものすごく格好よく思える。だが、肉厚でそれなりに重いこと、広角レンズでは大きく重いだけで斜光線を切る役目がほとんど果たせないという弱点もある。

京セラがコンタックス事業部を解散させたのが2005年だから、販売終了してもう20年近く経つ。だが、そう珍しいものではない。限定版レンズ用でなければ少し探せば入手できるはずだ。また、京セラが販売をやめたあとに数年間、用品メーカーのユーエヌがCONTAXの刻印をなくした製品を製造して販売していた。こちらも終売したが、ヤシカ/京セラ製よりも少々安く入手できるようだ。ヤシカ/京セラ製にはない口径のアダプターリングもあるはずだ。

AI Nikkor 85mm F1.4Sには本来は「コンタックスメタルフード4」を使うべきなのかもしれない。Planar T* 85/1.4に対応するのはメタルフード4とされているからだ。だが、メタルフード4では筆者は長さが足りないと思う。メタルフード5でも四隅がケラれることはない。

コンタックスメタルフード5とコンタックス72/86リング

このコンタックスメタルフード5を使って以前、秋の斜光線のもとで撮り比べをしたことがある。以下をご覧いただきたい。レンズフードを使ったほうがシャドー部がきちんと引き締まる。絞り値による変化も少なくなるので、階調をコントロールしやすい。

レンズフードなし。F4からF11まで絞っている。シャドー部が締まらない
コンタックスメタルフード5使用時。同様にF4からF11。シャドー部が締まった

望遠レンズ用のフードHN-13を転用する

最近の筆者が用いているのは、ニコンのねじ込み式フード「HN-13」だ。「72mm円偏光・偏光フィルター用」と名乗りながらアタッチメントサイズは⌀86mmという特殊なものだ。ニッコール純正の円偏光・偏光フィルターに用いるものだった。ニコンイメージングジャパンのWebサイトには「焦点距離が135mm未満のレンズにはケラレを生じるため使用できません」とあるが、筆者は85mmで使って問題を感じない。同時に180mmでも使っている。いずれも、これを86-82mm ステップアップリングを介してニコン「ゼラチンフィルターホルダーAF-2」と組み合わせている。HN-13はジャンクで数百円で入手したので外部の製品名の印刷は消えかけている。内側の反射防止塗装に傷みもあり、その上に植毛紙を貼った。前所有者もどこかのメーカーの「85mm F1.4」レンズで使用していたらしく、白いマーカーで「1.4/85」と記してあった。それは無水エタノールで消した。

ニコン「純正」レンズフードとゼラチンフィルターホルダーを使うのは口うるさいニコ爺を黙らせてわからせ……失礼、細かいところにまで注意深いニコンファンの諸先輩方に「純正ニコン製品を使うべき」と文句をいわせないため……ではない。

より厳密にフレアカットをすることもできるように、だ。ゼラチンフィルターホルダーに自作のフレアカット用シートを入れることができる。

HN-13とゼラチンフィルターホルダーAF-2という時代錯誤だがニコ爺を黙らせる組み合わせ

なお、AF-2に付属するレンズフードでは短いので筆者にはものたりない。そこでHN-13を使っている。

昔の業務ユーザーに有名だったFDレンズ用のキヤノンゼラチンフィルターホルダーも好ましい。⌀72mmだからフィルター枠をレンズ前面にはめておけば装着可能だ。

FDレンズ用のキヤノンゼラチンフィルターホルダー

最強の「ハレ切り」は雨傘かも

もっとも、円筒形のレンズフードはほとんど役立たないとは、お世話になっている写真家の小山壯二さんからうかがった。小山さんは商品撮影では蛇腹式レンズフードを使うそうだ。スタジオ撮影を長年されている方の発言は重みがある。

ハッセルブラッドプロフェッショナルシェードが最強かも

さらにいえば、フレアカットをするにはできるだけ光源に近いところで有害光を切るべきだ。そうなると、風景撮影などでは雨傘(アンブレラ)を用意しておくほうが、もっとも確実にフレアカットができる。筆者はホームセンターで買った折りたたみ傘をベルボン「アンブレラクランプUC-6」といっしょに三脚ケースに入れてある。こちらも残念ながらすでに旧製品だ。

いろいろな用品メーカーにアンブレラクランプは用意されているようだから、そういったものを使うのをおすすめする。ただし、カメラのホットシューにアンブレラをねじ込むのはホットシューを傷めるからやめたほうがいい。

ベルボン「アンブレラクランプUC-6」に市販の雨傘を使用している

こうやって手をかけてわざわざ古いAI Nikkor 85mm F1.4Sを使うのは、筆者には思い入れがあるから。「このレンズはどういうふうに写るのだろう」と思いつつ、きちんと使いこなせていないように思えていたからだ。

Nikon  D4/F2.8で撮影(2012年)。「こんなにいい感じに写るのか」とこのレンズを見直した

最新の逆光に強いレンズであればここまで手をかける必要はないかもしれない。だが、こうしたテクニックは最新レンズを用いる際にも役立つはず。

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