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手紙11

小学校低学年の頃、学年文集で『将来の夢』というタイトルで作文とイラストを作成することになった。


私が真っ先に思いついたのは探偵だった。
当時からホームズやポアロが大好きで、憧れていた。
でも、両親に文集を見せたら「なれるわけない」と言われそうだし、人と違うことが嫌だった私は、その頃の女子に人気があった幼稚園の先生で作文とイラストを書いた。


文集が出来上がり、パラパラと読んでいると、隣のクラスの女子が探偵と書いていた。
自分がやりたいことをしっかり書けていたその子が、とても羨ましかったのと同時に、「自分は何で書けなかったのだろう」「何で諦めたのか」と悔しかったのを今でも鮮明に覚えている。

もし、やりたいことや憧れていることがあるなら、やってみたほうがいい。
もし、そういうことがなくても、自分にガッカリしたり、早く見つけなければ!と焦ったりする必要はない。
とはいえ、焦るのも経験だとも思う。
矛盾しているけれど、今の私は、焦ったおかげでそう思えるから。


もしかしたら、周りから「向いていない」と言われることもあると思う。
それは君のことを心配してくれているから。
なるべく失敗しないで欲しいと思っているから。


でも、もしやりたいことがあるなら、法に触れることや自分・相手を傷つける等以外のことなら、そこで諦めず、『ダメで元々』精神で挑戦したほうがいいと思う。
挑戦せずに見る景色と、挑戦してみて見える景色は全然違う。
挑戦してみて「やっぱり違う」と思ったら、そこでやめてもいいし、もう少しだけ頑張ってみたら、違う景色が見えてくるかも知れない。


探偵以外に、もうひとつやってみたいことがあった。
エジプト考古学者の吉村先生に憧れて、遺跡発掘調査にかかわる仕事がしてみたかった。
でも、大学で考古学を学んでも、社会に出たときに役立たないし、研究者になれる人はほんの一握りの人間しかいないと言われて、自分も納得して諦めた。


今思うと、「何を学んだか?」ももちろん大切だけど、「興味があることにどれだけ取り組むことができたか?」も同じくらい大切だったのではと思う。
たとえ研究者になれなくても、関連する所に入れなくても、「自分は、興味をもったことを、これくらいの熱量で学ぶことができました!」と自信を持って言えることも大切なのではと思う。


そんな私の幼いころの夢が、突然現実となる日が来た。

役所のホームページで発掘調査作業員登録制度を見つけた。
資格・経験がなくても、登録できる内容だった。
ダメで元々、登録申請用紙を送ったら、程なくして発掘作業員の話をいただいた。
今まで事務の仕事ばかりで、肉体労働は初めてだった。
自分にできるのか、とても不安で怖かったけれど、「えいっ!」と飛び込んでみた。
大変なこともあるけれど、おかげさまで楽しく作業ができている。

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