グルーヴの正体
いやー……もう思い切りましたよね。
何なんですかこのタイトル。
まるで自分がどうやったらグルーヴが出るのか・出せるのか知ってるみたいじゃないですか。ねぇ。
おいおいかおりP!調子に乗んなよ!と言いたくなる気持ちもわかるんですが……
じゃああなたはグルーヴとは何か説明できますか?
あなたの演奏にはグルーヴがありますか?
これに対して、自信を持って頷ける人、少ないんじゃないかと思います。
おぼろげながら……わかってるような……わかってないような……
「ノリノリで演奏すればいいんじゃないの?」
「メトロノーム使ってリズム感鍛えればいいんじゃないの?」
「他のパートと呼吸を合わせればいいんじゃないの?」
本当に確信を持ってそう思っていますか?抽象的な解釈のままにしていませんか?
今回この記事を読むだけで、みなさんのそんなモヤモヤっとした気持ちが少しでも晴れてくれればいいなと思い、思い切って切り込んでいくことにしました。レッツゴー!!
グルーヴとは安心である
楽器やってる人ならもう耳からタコさんウインナーが生えてくるくらいよく聞く言葉『グルーヴ』。
よく"ノリ"と混同して語られますね。なんちゃらマガジンとかで。
……ちょっと待って!!
グルーヴってノリのことじゃないの??!
と思ったそこのあなた!
間違ってるわけではないんですが……狭義って言えばいいのかな?
ノリってグルーヴの一側面なんですよ。
つまり、ぜんぜんノリノリじゃなくても「グルーヴがある」という表現が適応される場合があります。
逆の例を出すと……非常にノリノリで気持ちよさそうに演奏してるんですが「グルーヴがない」というパターンもあります。悲しいですけどね。
もう先に結論言っちゃいますね。
『グルーヴ=安心』です。
…………は??安心????
そう、安心です。ちょっと拍子抜けでしたかね。
『グルーヴ=ノリ』という短絡的なものではなく、
『グルーヴがある→安心できる→ノレる』が正しいです。
この『安心できる』という感覚が重要なんです。
順に例を見ていきましよう。
人は連続すると安心する
よくファンクやヒップホップなんかを聴いたときに自然と体が前後に動いてしまうあの感じ、グルーヴがあるなぁと表現しますよね。
あれ、音楽的にワンコードだったり、ずっと同じビートが続くじゃないですか。
そうなってくると人は「あ、またさっきと同じ内容の小節だ」と無意識的に感じて安心します。
よく『踊れる曲』とか言いますが、実はちょっと違っていて。
『曲が踊ってもいいよと言っている』が正しいです。
ほら、知ってるでしょ?ずーっと心地よい音が続くでしょ?みたいな。
サビに向けての期待感を与える必要がないし、むしろそれを逆に利用して酔いしれる感覚を生み出しているまであります。
しかしながら、せっかくオーディエンスが気持ちよく踊っていても、途中で演者のギターのシールドがすっぽ抜けちゃったりすると、途端にあれっ?とみんなが我にかえってしまう。あるあるですね。
いきなりさっきと違うことが起こってグルーヴが途切れたからです。
まさに連続からくる安心、というわけです。
人は譜割りが見えると安心する
楽器やってる人なら一度は心当たりがあるでしょう。
「ゴーストノートでグルーヴィー」
「ウラを感じてグルーヴィー」
「休符を弾いてこそグルーヴィー」
……まあ耳タコなわけですが、こういうのもエッセンスのひとつにすぎません。
要するに譜割りが見えることが大事なんです。
例えば……ドラムでいうと、
「ドン!タン!ドドタン!」よりも
「ドンツドタンツドンツドンタンツド」の方がグルーヴを感じられるはずです。
(↑声に出してみるとわかりやすいです)
それはなぜかというと、後者の方が譜割りが細かいからなんですね。
前者の空白の部分で「ド」、「ツ」の音が鳴っているので、前者の虚無感・緊張感を解決するのが早く、安心する機会が多くなります。
じゃ後者みたいに音を増やした方がいいじゃん!と思われるでしょうが、決してそういうわけではなくて。
例え話をします。
"ボルダリング"って知ってますか?
壁にカラフルな石がいっぱいくっついてて、手をかけ足をかけ上へ登っていくスポーツです。
あれ、石が多いと登りやすいわけなんです。当然と言えば当然ですね。
その石の数が音数と考えるとわかりやすいです。
ハタから見てる側も当然スルスルと登っている人を見ている方が安心できるわけです。この人は慣れてるんだろうな、と。
逆に石が少なく、遠くの石に必死に手を伸ばしながら登っているのを見るとハラハラするはずです。
もうおわかりですね。
世の中には石が少ない壁、つまり単一時間内の音数が少ない方が好ましい曲調が存在します。
そして、壁にどんな数・配置で石が並べてあっても危なげなくスルスルと登っていける人を「グルーヴがある人」と表現するのです。
楽器プレイヤーだと「演奏が上手い」ともいいます。
臆病なのを悟られたくなくて、自分の都合で石を増やしたり、落っこちても途中からやり直したりする人は「グルーヴがあるように見える人」です。RECしたときに全部白日の元に晒されるんですけどね。
人はミスが少ないと安心する
これは言葉の通りです。演奏のカテゴリーでお話しすると、ミスが少ない方がグルーヴを感じられます。単純に安心して見ていられるんです。
太鼓の達人とかでもゲージが溜まっていくプレイの方がそりゃ好ましいわけです。
オリンピックの体操でもそうじゃないですか。
"ああーっ!!"よりも"おおーっ!!"の方がいいですよね。
ただ、私は別の記事で「ミスとはキャッチー性である」と述べています。
一瞬の「ガコッ!」というミスは無意識に脳に刻み込まれるからわざと残している……という方針なんですが、共作・バンドだとこういう価値観が受け入れられない場合があるので注意が必要です。
ここで小話をひとつ。
私がベースを習っているとき、お師匠さんに言われた一言があります。
「人間が弾いてるんだからミスして当たり前だ。ミスのない演奏なんてつまらない。ちょっとぐらいそういう人間らしさがある方がいいんだ。という甘えを捨てろ。ミスしたら腹を切れ。機械のように正確に弾け。」
この一言が私の人生を変えました。一生忘れられません。
人は人間味を垣間見ると安心する
さっき人間味がうんぬんみたいな甘えを捨てろとか言っといて!
結局人間味がある方がいいんじゃん!と思われるでしょうが、落ち着いてください。
少しレベルの高いお話になってきます。
早い話、その人間味が意図的なものによるのかどうかが大事なんです。
『運指が遅れた』と『スライド』って違いますよね?
『休符分の音価を保ちすぎた』と『タメ』って違いますよね?
『音の粒が揃ってない』と『ダイナミックレンジが豊か』って違いますよね?
『弦を叩きながら待った』と『ゴーストノート』って違いますよね?
上記の太字の部分を意図的に取り入れて、ニュアンスを豊かにしていくことで本当の意味での人間味・グルーヴが出てきます。
ニュアンスのある演奏が小っ恥ずかしい、TAB譜に詳しく書いてないし、そこまでしなくていいんじゃないか、不自然に感じるという方もいるかもしれませんが……
逆です。
あなたの身の回りに棒読みで喋ってる人いますか?
人は少なからず喋り方にクセというか、イントネーションがついているはずなんです。これこそが本当の意味での人間味、ニュアンス、トーキングです。
なんとなーく自分の音と向かい合ってる時でも、
「この音はちょっと強い方が気持ちいいな」
「ここはジャストよりやや後ろに音があると気持ちいい」
みたいな感じで、細かくアレンジしてみるのもいいでしょう。
……他にもグルーヴに直結する要素はたくさんあります。
認知度だったり、世界観だったり、没入感だったり……挙げるとキリがありませんが、ここでは音楽的な要素という観点に絞ってお話ししました。
やっぱりリズム感が大事
ここからは先ほどの話を踏まえつつ、演奏面からくるグルーヴ・リズム感・タイミングについて詳しく見ていきます。
基本的にはタイミングはジャストであると好ましいです。
楽器を演奏している時も、基本的には常にジャストめがけて発音すると、グルーヴがあって気持ちいい・安心して聴ける状態になります。
それよりも実はいつ音が消えるかの方が重要だったりします。
この辺に無頓着・アットランダムになっていると途端にだらしないニュアンスになってしまうので、こだわりたい人はこだわってもいいかもしれません。
教本でもここまで詳しく取り扱っているものは少ないので。
そしてこれもよく聞く『前ノリと後ノリ』。
ドラムなどが刻むパルスより全ての音がやや早めに発音されている状態を前ノリ、逆にやや遅れて発音されている状態を後ノリなんて言ったりしますが、これらがグルーヴに良い影響を及ぼすことは極めて少ない、という主観です。
ただ!
まれにジャストで音が鳴っていると気持ち悪いという事態に出くわします。
まずはジャストタイミングを覚えて、それの気持ちよさを知った上で取り組むといいでしょう。
私もたまにあります。
「この音ちょっと後ろにあった方がいいかな」って何度も弾き直したり。結局泣きながらクオンタイズすることもしばしば。
ドラムの打ち込みでも、ちょっと堅すぎるかなと思ったら範囲選択してランダマイズしてます。
もっとも最近のボカロ曲なんかはそこまでヒューマナイズしてないことの方が多い印象ですが、まあこちとらバンドサウンドクリエイター名乗ってますんで。
リズムがソリッドすぎると馴染まない時があるんです。偉そうなこと言ってますが最近わかってきました。
グルーヴを出す秘訣
ここからは本当に重要なことをお話しします。
じゃあどうやったらグルーヴが出せるようになるんだ?!って話ですよね。
簡単です。
自分の音を客観視することです。
よく自分の好きなバンドに合わせて楽器を弾いたりして、そのバンドの一員になりきったりするじゃないですか(しますよね?!)。
大事なのはそれで満足しないこと。
その状態で録音して聴いてみるんですね。
メトロノームに合わせて弾いたりするのも、それだけやって満足しちゃダメです。
メトロノームと一緒に演奏した音を録音して聴いてみるんです。
びっくりするくらいズレてるはずです。
そこで、陥ってはいけない思考回路というのが、
「まあ自分はプロじゃないんだし」
「機械じゃないんだし全く同じに弾くなんてムリだよ」
「自分の音カッコいいなぁ」
なんていう甘えです。
そういった考えを全部捨てて、音源と全く同じにしてください。
打ち込みなんじゃないか?と間違われるくらい正確に弾いてください。
それを録音して聴く。その繰り返し。
そのうち、弾いた瞬間に「あ、今のイマイチだわ」って分かるようになってきます。
モチベーションを保つために『弾いてみた動画』なんて作ってみるのもいいでしょう。
本当に根性論ばっかりで申し訳ないのですが、そこまで徹底しなくていいでしょと思った度合いだけジャストから離れていきます。
単純ですが、これが秘訣ですね。
私は教則本で楽器の練習をするときは、必ず付属のお手本音源を超える気持ちで弾いていますよ。
最後に
よく「自分はリズム感がないんだよな〜」なんて悩みを抱えてる人、いるじゃないですか。
おそらく客観的に自分の音を聴いて愕然とした経験があったり、誰かに指摘されたりしたことがある人なんでしょう。
実はそう感じてる時点でこれからリズムはどんどんよくなるし、グルーヴもどんどん出るようになってきます。
本当に問題なのって「自分はリズム感がないんだよな〜」なんて悩みすらない、興味すらないことなんです。
ずっと「これでいいや」で来ちゃってるんですよね。
誰にも迷惑かけてないし、別にいいやって。
レコーディングでもタイミングの甘さよりも自分の音のかわいさの方が先に来ちゃってる。
他人に「グルーヴがない(=聴いてて不安になる)」と指摘されても逆上して省みない。
こうした日常の姿勢がそのまま音に現れるんです。
それよりも、
「どうやったらグルーヴが出せるようになるんだ?!」
「これじゃダメだ!これじゃダメだ!」
で突き詰めに突き詰めまくった正確無比な演奏。
もう99.99%突き詰めた。
それでもどうしてもダメでした。自分は機械にはなれなかった。という0.01%の涙に似た一雫にグルーヴが宿る、、、という話を聞いたことがあります。
グルーヴ道は終わりなき旅です。私もまだ旅の途中です。
ですが私はそれを今は一人という立場で、DTMで表現したいんです。
時をかけることができたなら……あのときのあの音をやり直せるならどんなに幸せか……そう思った時もありました。
今、私がいる環境、DAW上では全てがやり直しがききます。
弾いた音を好きなタイミングに持ってくることができます。要らない音を消せます。
ここからが勝負です。
『100%ジャスト』が当然の世界で、何を描くのか。
かおりP
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