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マドモワゼルモーツァルト

すっごく大好きな作品に出逢っちゃった。

何がどう好きなのかをずっとぐるぐる考えていたいような、言葉にせずにふわふわ好きの世界に漂っていたいような。ほんっとに見られてよかった見られて幸せ!!!!

ちょっとファンタジーな設定なの。

譜面通りにピアノ(時代的にチェンバロ?)を弾かず、楽しそうに自分で作った音楽を弾いている愛娘エリーザの才能を見出したレオポルトは、女では作曲家として世に出られないと、彼女の髪を切り、ヴォルフガングアマデウスモーツァルトという男性の名前を与えるの。

モーツァルト役の明日海りおさんが、女の子としても、男装したモーツァルトとしてもほんっっっとに魅力的で自然で、結局モーツァルトにとっては音楽がそこにあったら他のことは気にならなくて、音楽が本当に本当に大好きなんだって言うのがきらきらの笑顔でわかるの。男性っぽい声も女性らしい歌も、中性的な溌剌とした動きも全部明日海さんというかモーツァルトの魅力で、みんなが好きになる。

すっごく面白い作りで、なんか、モーツァルトの音楽を目で見て、物語を耳で聞くっていう感じ。今っぽく映像技術も使うんだけど、紗幕が上がると舞台の解像度が上がって、そこにお衣装の色味とメイクがグレースケールで統一された世界が広がっていて、その中心に鮮やかな色味のピアノとグレースケールの中からふわっと浮いて見えるモーツァルトのお衣装があるの。魔笛の夜の女王のアリアも誰も歌わないんだけど、何もない白いバックに筆で書いたみたいな優雅で力強い黒いモチーフが動いて、夜の女王のアリアのコロトゥールが頭にどんってあらわれるの。

音楽や感情や抽象的な心象風景を目で見る面白さ。

淡い色合いのモーツァルトの対比に来るのは濃い色のサリエリ平方元基さん。モーツァルトの音楽が鳴る中で現れるんだけど、体の中に別の音楽が鳴ってるのがわかるの。モーツァルトがト音記号でサリエリがヘ音記号って感じ。

平方さんの歌って歌に押されるというよりは、歌に引っ張り込まれる感じがする。ずんって平方さんの方に持ってかれる不思議な魅力のお歌じゃない?お芝居も、連れてかれそうなお芝居。シェイクスピアのストレートプレイを見てるみたいな世界観があって、恵まれた、神様も完璧な造作作っちゃったなあって思っただろう外見が見えなくなるくらいにお芝居がすごいと思ってるの。

モーツァルトは男性で、気分はゲイではないって思うながらどうしてかモーツァルトに惹かれる自分に戸惑うサリエリ。モーツァルトの才能に嫉妬しているのか、混乱しているのが見てるこっちまで動揺させるの。

と思ってたら次の瞬間ベッドに石田ニコルさんをひきこんでニヤッと笑うサリエリに、(外見が10000000点すぎる!!神様ありがと!!天使!!)って思いました。お芝居も外見も最高です。神様とんでもないものをお作りになられて。。。神様今度あったらハイタッチしようね!!


モーツァルトは、男性として生きていて、流されるまま自分を大好きでいてくれるコンスタンツェと結婚することに。ずっと騙していたけれど、コンスタンツェの真っ直ぐな好意に、自分は本当は女性だって打ち明けるの。

コンスタンツェは明日海さんと宝塚時代からコンビを組んでいた華優希さん。相手役として寄り添うんじゃなくて、本当に女性だってわかった混乱と、失望と、優しい同情とが痛いくらいに伝わったの。

単純に自分の問題としてのLGBTQ、性別の多様性っていうのと別に、社会的な性別としてのジェンダーがあって、異性装じゃなくて社会の中で役割を果たすために別の性別になるっていうのがわたしにとってはすごく腑に落ちて、女性として社会で生きるって結構まだまだ大変で、男性性だったらよかったのにというのは思ってて、そのために社会をちゃんと女性にも開かれるように変えるっていうのが必要なことだけど、あの時代にモーツァルトの才能を世に出すためには男性になるっていう方法しかないっていうのは残酷だけれどそうなんだろうなと思ったの。

モーツァルトを男性に仕立てたお父さんレオポルト(戸井勝海さん)はモーツァルトを愛していて、モーツァルトの才能をすごいと思ってるのがとっても伝わって、だからこそ彼女が自分を偽って生きなきゃいけないことにモーツァルト本人以上に傷ついていて、つらい。。。といさんかこいい。。。すき。。。あ!気持ちが溢れちゃった失礼!!

お父さんが亡くなった後にモーツァルトは「モーツァルトの持ち主はいなくなったんだ!!」って女性に戻ろうとするの。

でも、今までモーツァルトを夫として生きてきて、そのために恋人と結ばれることも出来なかったコンスタンツェはそれにとっても傷ついて怒る。あなたは周りを傷つけている。わたしは普通の夫が欲しかった。って言う叫びにモーツァルト自身も相当傷ついたと思うの。

でも救いなのは、モーツァルトが音楽が大好きで、自分の音楽が人々に愛されることがとっても幸せなこと。

女性の、エリーザとして現れたモーツァルトに恋を打ち明けたサリエリはカテリーナ(石田ニコルさん)に、「あなたは自分より才能のある女性を愛せる?」「女性に作曲はできるの?」っていわれて、それを否定して、目の前でエリーザ(モーツアルト)が生き生きと曲を作るのをみて、混乱して、激高して、出て行けって言って、引き留めて、愛しているって伝えるの。ここできっとエリーザがモーツアルトだって分かってるんだよね。この時の石田ニコルさんカテリーナの女性としての矜持や悲しみがほんっとしんどかった。誰かいつか石田ニコルちゃんを幸せにしてあげて!なんかいっつも失恋してない?

それでも音楽を作りたいっていう情熱を燃やして、魔笛を作曲するモーツアルトをみて、コンスタンツェは本気で支えてあげようって思うの。もう、ここではモーツァルトの性別なんて気にならなくなってて、音楽が大好きなモーツアルトが大好きよってコンスタンツでも多分思ってるし客席もみんな思ってる。

あと、サリエリも思ってた!!モーツアルトが命をかけて作曲した魔笛を見ているサリエリ平方さんが、いい音楽を聴けて本当に幸せって言う感じで、わくわく、うれしそうにしてて、才能に対する嫉妬とか、男性とか女性とかそういうの全然関係なくて、いい音楽が聴けて良かったって思ってるのが伝わったの。そういう「好き」もあるよね。

最後までモーツァルトが幸せそうに音楽の中にいて、そうやって納得させられるのなんだか悔しいけど納得しちゃうしモーツァルトが大好きだよ!!ってみーんながおもってたの。

この作品を今かけること自体、女性としての社会貢献や社会進出についてかんがえちゃうし、ぐっさぐさくるけど、そこを考えることも含めて、今この作品を見られて良かったし、ほんっとほんっとよかった!

リードの土屋敬多さんがシカネーダーで、他の人とは違うリズムがあってすごく魅力的で面白かったし、松田未莉亜さんや吉田萌美さんの歌も踊りも堪能できて、特にバレエっぽいのそこここでちょっとずつみては、お二人のがっつり踊るの見たいって思ってたけどここで堪能できて最高だったの。

またみたい。なんか、ことあるごとに見たい。ほんっっっとに完成されててほんっとにすてきだった。これを作ってくださった人たちほんとうにありがとうございました!!!!!みられてよかったよう!!


そしてはたと我に返る。またやっちゃった。3000文字を超える激重感想。つまり、小林香先生だいすき!!!てことです。



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