【No.10】今でしょ!ってホントだね
かなりうろ覚えではあるが、大昔のCM(かれこれ30年くらい前)で「好きなものから食べるのはA型、好きなだけ食べるのはB型」というものがあった。お弁当をどの順番から食べるかという一種の血液型占いみたいなものを使ったコマーシャルで、母以外は全員B型の我が家では、かなり不評だった。
なんだか血液型B型というと、世間ではわがままで変わり者というイメージらしい。それならば、我が家はどうなろうか! 確かに個性的ではあるが、理性ぐらいはあるぞ!と憤っていた。
そんな私も大人になって3児の母になると、いっちょ前に「世間的には」とか「常識」というものに捉われるようになった。好きなものを食べる前に、子どもたちが何を食べるだろうと様子を見たり、自分が心から楽しいと思えることをやる前に失敗したらどうしようと心配したり、お金が貯まって余裕ができたら本当にやりたいことをやろうというように、がんじがらめになって、それでも格好悪くあがいて、制限がある中でベストを尽くしていると思い込もうとしていた。
本当に今の私でいいのか、と思ったのは入院中のこと(入院についてはこちら)。人生100年と考えると、あと10年くらいはお金を貯めて、その後人生を謳歌しようと思っていたところが、生まれて初めて死というものを意識して、その前提が覆されたのである。
10年も待てない。むしろ今やった方がいい。何をしようか、何がしたいのだろう、と考えた時に2つの答えが浮かんで、どちらもどうしても譲れないことに気付いた。クッキー屋さんと物書き、の2つの別々の職業。
どっちも今やりたい! そう思ったときから、自分を取り戻す闘いが始まった。それまで働いていた会社を退職し、まずはクッキー屋さん開業には何が必要なのかということを調べ始めた。
キッチンが2つある実家に1つ借りれるかと聞いたところ、反対されると思っていたのに、意外にもすんなりと了承が得られて、必要最低限の設備と、インターネット上の店舗で販売することを決めた。食品衛生管理者の講習会を受けにいったり、保健所に相談に行ったりということであっという間に2カ月が過ぎた。
何もかもが順調だったわけではないが、社会的な保身を考えたり、お金のことを必要以上に心配したり……。その中でも、一番大変だったのが自分の気持ちを真っ直ぐにゴールに向けることだった。なんせ、組織に属するという安心感から離れて、前のフリーライターという立場とは違う形で一人で立つのは以前よりも勇気が必要だった。(以前のフリーライターは、毎月ちゃんと仕事があったというだけでも奇跡的で、不安定なだけに気持ちもグラグラしていたけれども、若くて子どもがいなかったというだけで、やっていけたのだ!)
「うちの広報どう?」と声をかけられて、あやうく後戻りしそうなときもあった。何とか踏みとどまって準備を続けられたのは、子どもたちの後押しがあったからだ。
「わぁ~、かわいい!」とハンコができあがってきては喜び、パッケージを一緒に考えたり、イラストを描いてもらったり、彼女たちと創り出す喜びがなかったら、もしかしたらここまで来てなかったかもしれない。
キッチンは今工事中で、クッキー屋さんのオンラインショップの準備も進んでいる。周囲の色んな人たちの後押しをいただいて、何とかスタートラインに立とうとしている。
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