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たかが四畳半、されど四畳半

四畳半神話体系。神話の壮大さと、四畳半のつつましさ。
この相反する二つの要素を組み合わせたタイトルに、まずは惹かれた。
そして、「神話」というからには一種の普遍性があるのかと思いきや、これほど世界へ羽ばたきづらいお話も珍しい。
四畳半は果たしてどう翻訳するのか…

物語の舞台は京都。主人公は大学生。
旅行どころか、ちょっとした遠出も難しい今年、私はとにかく無性に京都へ行きたかった、いや今も行きたい。
その思いが募り、京都の香老舗「薫玉堂」のルームフレグランス「室町時代」を焚いてみたり、上野で洛中洛外図屏風をみたり、とにかくバーチャルで京都に行くことを試みた。
その締めくくりとして、森見さんのこの小説を読み返してみた。

↓ここから先は、話の内容に触れますのでご注意ください↓
初めて読んだのは2010年である。その時には、まだ大学の記憶も鮮明で、主人公が憧れる「バラ色のキャンパスライフ」は私もついに手中にできなかった、などと思いながら、ストーリーの構成のユニークさを純粋に楽しんで読んだ。
あれから10年後の今年、読み返すことに不思議な巡り合わせを感じた。
というのも、2010年当時は想像もつかなかったコロナショックは、この物語と符合するように思えたから。
物語の後半、主人公は突然、外の世界から隔絶されるが、この状況が気持ちの整理がつかないまま外出自粛生活に入ることになった今年の状況によく似ている。
主人公は、最後には無事に外に出られたが、私たちにはまだ、出口が見えていない。
しかし、私たちも、たとえ堂々巡りでも、見える景色が変わらなくても、前進し、時に後退し、動き続け考え続けるしかない。そんなことを思った。

#読書の秋2020 #四畳半神話大系

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