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プロジェクト型学習のワークショップで学んだこと

少し前の話なのですが、自分の記憶の整理のためにも8月中旬に受講したプロジェクト型学習(PBL)のワークショップについて書いてみたいと思います。まずはワークショップの雰囲気をざっくりとご紹介し、その後、私が大切だと感じた学びについて書いてみたいと思います。

ワークショップの雰囲気

このワークショップ、アメリカのPBLWorksという団体が行っているもので、私は今回、一番最初に全員が受講しないといけない3日間のオンラインでのワークショップに参加しました。朝10時から夕方5時までのスケジュールに慄きながら初日を迎えました。

参加者は全員で約30人くらいで、ほぼ全員がアメリカの小中学校、高校の先生です。教えている教科はみなさん、本当にバラバラで私のように英語や外国語といった語学に携わっている先生は三人くらいで、あとは数学から理科、社会、体育に特別支援教育の先生、また、校長先生やカリキュラム作成に携わっていらっしゃる先生と多種多様なグループです。

このワークショップ自体がPBLになっていて、グループワークやピアレビューを何度か経て、受講し終わると自分のPBLのレッスンプランがひとつできるようにデザインされています。同じ学校から参加されている先生方は、グループでひとつのレッスンプランをつくりあげることもできます。

クラス人数が30人と多いように感じますが、グループワークや個人作業が多いので、ほとんど気になりません。また、個人作業を行う際のグループは、気軽に相談しあえるように固定なのですが、その他の活動ではグループのメンバーがコロコロと変わるので、終わる頃にはほぼ参加者全員と話したことがあるような状態になりました。

私が参加した回は、みなさん、学校の先生ということもあるのか、とても話し上手、聞き上手で明るくポジティブな雰囲気の中で、意見交換やフィードバックをしたり、もらったりできました。

さて、3日間、本当にいろいろなことを学んだのですが、その中で私が特に大切だと感じた3つについて書いてみたいと思います。私が理解した範囲で書いているので、もしかしたらオリジナルの講義からは少しはずれてしまっているかもしれないことをご了承ください。

また、少し恥ずかしいのですが、私が継承日本語を学んでいる小学生高学年から中学生を想定して実際にこのワークショップで作っていったプロジェクトを例として使いたいと思います。

子どもたちをワクワクさせる「問い」を立てることの大切さ

ワークショップを終えて真っ先に感じたのは、「Driving Question」とよばれる「問い」をいかにうまく立てることができるかが、プロジェクトの良し悪しを左右するということです。「Driving Question」は、プロジェクトを通して子どもたちが考え、答えを見つける「問い」です。例えば、私が立てた問いは「あなたが日本へ行くなら、行きたい町はどこですか。あなたの友達が日本へいくなら、紹介したい町はどこですか。」というものですが、この問いの回答を探して、「どうして」「どのように」を考えていくことになるかと思います。

さて、この「問い立て」ですが、簡単なように見えて、なかなか難しいです。まず、子どもたちが簡単に答えられる質問でないこと、ありきたりな一つの絶対的な正解が答えにならないこと、また、答えを見つけ、その答えに至った理由を説明するために考える必要のある質問が必要となってきます。

さらに、大切なのが、子どもたちの興味をかきたてるものでなければなりません。そうなってくると、先生が授業のためだけに持ってきた現実離れしたものではなく、子どもたちの興味や生活につながり「authentic」なものが必要となってきます。

この「問い立て」ですが、ワークショップではそれぞれの参加者が作った「問い」をみんなで見てまわってコメントをする活動があるのですが、この「問い」の威力は本当にすごかったです。というのも良い「問い」は、みただけで「面白そう、やってみたい」「どうやって答えを見つけよう」とワクワクするのです。でもなかなか私個人には響かない「問い」もあり、「Driving」というだけあって、「問い」が興味をかきたてる力を身をもって経験しました。

ということで、私のここでの学びは「Driven Question」はいい加減に立てない、そして上手に立てられた問いのインパクトはすごいということです。ということで、私自身が立てた「問い」はいまいち、納得がいっていないので、もう少し、考えてみたいところです。

子どもたちに選択権はありますか。

さて、2番目に私が大切だと思ったのは、ある程度、子どもたちに「選択権」があること。もちろん、「何から何まで自由に」となると収拾がつかなくなります。でも、先生から一方的に押し付けられたものでは、子どもたちはそのプロジェクトを自分のものと感じることができないのではないでしょうか。

例えば、今回のワークショップでは、ひとりひとりの先生が、自分の生徒や学校の状況を考え、そして自分がやってみたい授業を想像して、それぞれに自分のレッスンプランをつくることができました。これが、「では、高校生の生徒の数学の授業を想定して、みなさん、レッスンプランを作ってください」と言われると、私の興味もすっとんでしまいます。

また、私のプロジェクトの例で言えば、「あなたの行きたい・紹介したい町について、どんな観光地があるのか調べて紹介してください」というのと、「その町について、あなたがどうして行きたいのかを、いくつかのカテゴリーに分けて紹介してください」というのとでは、自由度が全く違ってきます。

最初に提示された「問い」に答えるために、「何を」「どのように」すればいいのか、子ども達の技能や興味に添った形で、完全な自由選択にはできなくても、選択肢を用意し選んでもらうことで、子どもたちはカスタマイズした自分のプロジェクトを経験できるのではないでしょうか。

社会とつながる「作品」を

今回のワークショップ以外にもPBLに関するワークショップや勉強会に出る機会がありましたが、その度に最終成果物としての「作品」の大切さが語られていました。それは、出版物や造形物といった触れるものでもいいですし、ウエブサイトや発表会でのプレゼンといったものでもいいのですが、最初に立てた「問い」への子どもたちの独自の「回答」を「作品」という形で提示するということになります。

ここで大切なことは、なるだけこの作品が実際の社会やコミュニティにつながるもの、さらに言えば、役にたつものであることという視点を持つことかと感じました。最終成果物をクラス内の閉じられたコミュニティのみで提示するのではなく、「世に出して」フィードバックをもらうことで、学ぶことや励みになることもたくさんあるように思います。

例えば私のプロジェクトで言えば、子どもたちが自分で選んだ町について、いろいろと調べて整理しまとめたものを、ウエブでもビデオでも出版物でもいいのですが、世に出して、実際に「ガイドブック」のように使ってもらおうということになります。

そして、それを実際に見た人々や、その町に住んでいる同年代の子どもたちからフィードバックをもらうことで、このプロジェクトは「authentic(本物)」になるのではないかと思います。

今回、私がワークショップを通して作ったプロジェクトは、まだまだ改良しないといけないものです。でも、いろいろな先生に質問してもらったり助言をもらったりして、とても勉強になりました。また、他の先生方の作ったプロジェクトを評価し、思ったことを伝えることで、分かることもたくさんありました。それにしても、教科は違っていても他の先生方の作品にはとてもおもしろいもの、いろいろな工夫があるものがあって、みているだけでもワクワクしました。とてもいい経験ができたので、この経験を実際の自分の授業の中で還元していくことができればと思っています。

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