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読書の時間:「探究」する学びをつくる

今日は最近、読んだ本について書いてみたいと思います。子どもたちに日本語を教えていく中で、個人的にとても大好きで多くの可能性を感じている「プロジェクト型学習」ですが、今回はこの学習方法について書かれた本のお話です。この本、実は、日本語は全く関係ないく、アメリカのサンディエゴにあるハイテック・ハイという学校のプロジェクト型学習(PBL)の実践について書かれたものです。

いろいろな視点から読んでみる。

さて、この本、どの視点から読むのかによって読み方や注目する点も変わってくるのかなと思います。例えば、保護者の方でハイテック・ハイやプロジェクト型の学習方法を取り入れている学校の実際の感じにご興味のある方には、学校の教育方針や雰囲気はよくわかるかと思います。「PBLを行う学校に子どもを入れて、受験は大丈夫なの」という疑問に対しても、ハイテック・ハイでのデータから述べられています。

また、教育に携わっていらっしゃる方でPBLについてさらに詳しく知りたいという方には、単なる学校の様子だけでなく、PBLの定義や意義、さらにもう少し広範囲の探究型学習についてもしっかりと書かれているので、薄い内容でガッカリということはないように思います。

また、実際にPBLを授業で取り入れたいと思っていらっしゃる方々にはその際に役に立つようないろいろな考え方や実践例が書かれているので、PBLの How to do を簡単ではありますが、示している本でもあると思います。

先生の力量が問われるプロジェクト型学習

それにしてもPBLというのはとても興味深い学習方法だけれど、その分、準備をする教師側はしっかりと覚悟を持って取り組まないと大変だなと改めて再確認しました。本に出てくる、教師はプロジェクトを「綿密」に準備をするが、それが予定通りに行かなくても大丈夫という「おおらかさ」も必要という言葉が胸に刺さります。

また、先生が頭の中でシュミレーションしたプロジェクトが実際に実現可能なのかどうかを把握するために、ハイテックハイ では教師が実際にミニプロジェクトを行って問題点等を事前にチェックするとも書かれていました。教師のしっかりとした事前準備なくして、プロジェクトがしっかりとした学びの場とはならないのでしょうが、これは準備をしている先生方も楽しいだろうなとも感じました。

昔から日本の学習指導要領を読むたびに「生きる力」とは一体何なのだろう、生涯にわたって人生を豊かにする本当の学びとは何なのだろうと感じるのですが、この答えは、おそらく子ども一人一人によって違ってくるのでしょう。PBLはその多様性に応える教育手法の一つだと再度、強く感じました。そして、この多様性にうまく対応し、子どもたち一人一人の学びにしっかりと対応できる力量がPBLを行う教師に求められているのでしょう。

芸術教育とプロジェクト型学習

さて、この本、久しぶりに読んでいて興奮した本でした。私の勝手な、そして上から目線の感じ方で申し訳ないですが、PBLや探究学習の本質的な特徴をとてもわかりやすく説明していると思います。そして、とても読みやすいです。また、個人的な感想で申し訳ないのですが、大好きなアメリカの教育者デューイの言葉で本論が始まるので、これだけでもテンションが跳ね上がります!

本の中でデューイが芸術教育に傾倒していく件がありますが、私も本格的にPBLに興味を持ったのは芸術教育からの切り口でした。大学院時代 芸術教育を教科学習や総合学習に取り入れる例を小・中学校を中心に5カ国を対象にしていろいろと集めてました。その中で各国の先生から直接送っていただいたプロジェクトの教案や写真に圧倒されたのを覚えています。なのでハイテックハイの「ものづくり」を大切にするアプローチには共感しかないという感じです。

PBLに興味がある方は読んで損のない本だと思います。またPBLに興味がなくても教育に携わっていらっしゃる方やお子様の教育に関心がある方々には楽しめる本ではないでしょうか。Kindle版もあるので、海外在住の方にも購入しやすいかと思います。

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