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「ブック・ウーマン」を初めて知った

連休中に、Twitter(X)でとあるフリップトゥーン(縦読みマンガ)作品を知った。『ジューン アパラチアの騎馬図書館員』宮原一郎。

ジューン アパラチアの騎馬図書館員
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D11FRNYR?ref=cm_sw_tw_r_wcm_sd_awm_MDVgmwuiChi0J

全3話。Amazonのフリップトゥーンストアで0円。

1930年代、大恐慌時代のアメリカ合衆国(ミュージカル『アニー』の時代だね)。まだ道路も未整備なアパラチアの山間部へ本を届けるため、馬に本を積んで単身、山道を往復する騎馬図書館員(英語ではPack horse librarian 荷馬図書館員)のチームがいた。騎馬図書館員の多くが女性であったため、通称ブック・ウーマン。「山に住む人々が図書館に行けないのなら、図書館が山へ行くべし」本を借りに行くことも学校教育を受けることも困難な山奥の住民へ本を届けにいくプロジェクト。現代でも存在する「山間部を訪ねる図書館バス」の前身とも言える存在。

当番、不勉強で「ブック・ウーマン」を初めて知った。馬にまたがり山道を登り、本を届ける。「山の人々が図書館へ行けないのなら、図書館が山へ行くべし」というモットー。広く知識を届けるためなら馬を駆り山へも登る行動派の図書館員たち、たいへん射手座みが強いプロジェクト。射手座の民としては読まずばなりますまい!

……とタイムラインで興奮していたら、司書のフォロワーさんから「ブック・ウーマンを取り扱った絵本もありますよ」とお薦めを頂戴した。『ぼくのブック・ウーマン』

フォロワーさんがすかさずリプライに貼ってくださった「カーリル」のURLを当番もここにそのまま貼っておこう。ご近所の図書館が「カーリル」に参加していれば、お目当ての本が収蔵されているか、貸出可能な状態かを検索できる。

検索したら『ぼくのブック・ウーマン』は当番最寄りの図書館にもあったので、本は急げでパカパカ走っていった。

『ぼくのブック・ウーマン(原題THAT BOOK WOMAN)』

本の上に個包装の「しるこサンド」をひとつ載せてあるのは、下に図書館シールが貼ってあるから。地域バレ防止のため、ご容赦を。

『ジューン アパラチアの騎馬図書館員』は騎馬図書館員のひとりであるジューンの視点で進行するけれど、『ぼくのブック・ウーマン』は騎馬図書館員の訪問を受ける山の男の子視点で語られる物語。騎馬図書館員の訪問を心待ちにされ歓迎される姿が描かれる『ジューン』とは対照的に、馬に乗ってやってくるヨソモノの騎馬図書館員に警戒と反発を感じ、「あのブック・ウーマン(that book woman)」と呼ぶ男の子の姿が描写される。

「古本を売りつけに来たのか。貧しい山暮らしに本を買うお金はない。第一、山の暮らしに本は要らない」と反発する男の子に「あのブック・ウーマン」は「お金は取りません。空気みたいにただなんです」と繰り返す。空気みたいに無料、書店ではなく図書館なのだから。

もちろん、騎馬図書館員は無給ではない。薄給ながら、お給料をもらって働いている。騎馬図書館員プロジェクトは発足当初は篤志家の寄付を受けて、後にはフランクリン・ルーズベルトのニューディール政策による支援(雇用促進)を受けて活動している。でも、利用者からはお金を取らない。「空気みたいにただで」本へアクセスできるのが図書館だから。山から図書館まで降りていけないならば、図書館が山へ登っていこう。

2024年から見て約90年前に当たる、大恐慌時代。アパラチアの山奥に住む人々だけが貧しかったわけではなく、都市部にも失業者と破産者が溢れていた貧しい時代に騎馬図書館員たちは活動した。「僻地へも『空気みたいに無料』で本を届けよう」という精神と「失業者へ雇用を」という政策が結びついた、土星(厳しい社会情勢)の中で木星(伸びしろ)を育てていった人々の話。知れてよかった。

『ジューン アパラチアの騎馬図書館員』はAmazonで0円、『ぼくのブック・ウーマン』も最寄り図書館にあれば0円、「空気みたいにタダ」で彼女たちを知ることができた当番もまた、図書館の恩恵を受けている。



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