コロナ下におけるM&A法務の変更点(ビジネス法務2021年2月号)

本投稿の趣旨

ただ漫然とビジネス法務を読んでいても身につかないので、アウトプットすることにしました。
本特集は、ちょうどひとつM&Aを手掛けている私にとってとても役立つものだったので、まとめておきます。

MEA(Material Adverse Effect)条項

・ 対象会社に重大な悪影響を及ぼす事象であっても、国内外の経済情勢または金融市況の一般的な悪化によるものは明示的にMAE条項の対象外としておくことがよくあるが、その場合、今回のコロナの影響による悪影響は除外されてしまい、買主側からコロナを理由としたクロージングの拒絶主張が難しくなる可能性がある。
→MAE条項においては、コロナに明示的に言及して取り決めをすることが望ましい。
→具体的には、サイニング時に合意した水準を超えて対象会社の業績等の悪化が生じないこと(コロナとの因果関係の立証も不要とすることもあり得る)をMAE条項に組み込む

コベナンツ(誓約事項)

緊急事態宣言や営業自粛要請によって、サイニングからクロージングまでの間に対象会社による「通所の営業」が難しくなる場合がある。
営業自粛要請は法的な要求ではないので、コベナンツからの除外の範囲を一般的な「法令に義務付けられている行為を除く」とすると、不足がある。
→「法令上の強制力の有無にかかわらず、国・地方公共団体が指導・要請したものに従うことは認める」とする方法もある。

アーンアウト(Earn Out)

・アーンアウト条項は、コロナによる不可避的な不確実性に対応する方法として有効に思われるが、買主のコントロール下における対象会社の経営成績にによって譲渡価格の追加払いの有無が左右されることから、売主と買主の間でクロージング後において紛争が生じる可能性の高い仕組みである。
→コロナ下だからといって、実際の採用事例は現状必ずしも多くない。

表明保証条項

・ディストレストM&Aであることが明らかでなくても、M&Aが売主の資産状態が悪化させるものとみなされる場合(典型的には、譲渡価格が低すぎるとみなされるような場合)、クロージング後に、当該M&Aが民法に基づく詐害行為取り消し権や破産法等に基づく否認権行使の対象となるリスクがある。
→売主に支払停止又は倒産手続開始の申立てがなされておらず、支払不能及び債務超過といった倒産原因が存在しないという一般条項に加え、M&Aにつき売主の債権者を害する意思がないことを明示的に表明保証させることが重要になってくる。
→買主がクロージング後において詐害行為取消権や否認権の行使を受けた場合に、買主において詐害性を認識していなかったという抗弁(民法424条1項ただし書き、破産法160条1項1号)を主張するための重要な証拠となり得る。

人事・労務

・対象会社が休業を実施していた場合、休業の原因を確認した上で、適法に賃金の支払いを行ったか調査することが考えれれる。

・リモートワークは、労働時間の漏れが生じたり、長時間労働を招くおそれがある。法令に違反する長時間労働が発生していないか、未払い賃金が発生していないか等についても調査することが考えられる。

リモートワークの場合の始業・終業時刻が通常と異なる場合や、通信費・水道光熱費従業員に負担させる場合には、就業規則の変更が必要であるため(労働基準法89条1号・5号)、就業規則が適法に変更されているかを確認することも必要となる。

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