ドローンの課長【毎週ショートショートnote】

「課長、アキラが戻りません。9時岬町配達済みなのに」
ビリーが私のデスクまで飛んできた。
私の部下はドローン20台。私自身もドローンだ。前任者が体調不良のため着任した。
私達の配達区域は岬町から海町一帯だ。
「9時岬町ならチエコ婆ちゃんだ、またお茶飲みか。ちょっと行ってくる」
私は飛び出した。
「待ってください課長！装備を」
大丈夫だ。私はきみたちより高機能だから。

チエコは独居の89歳。アキラを気に入り、指名して話し込んで帰さないので、遅配が増えて困っていた。
ホバリングして様子を見ると、案の定縁側で二人が談笑していた。
私は「アキラ、そろそろ」と声をかけた。
「また来たうるさい課長」
チエコは私を見上げて睨み、手にしたミカンを投げつけた。
ミカンは私に命中して潰れた。果汁が機体に入りプロペラが止まった・・・

「ミカン攻撃には防御の装備が必要だったのに」
現場に到着したビリーは、私を救急隊に託してつぶやいた。
「やれやれ、また課長交代だ」

（410字）

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毎週ショートショートnoteに参加しました。

書いていたら、米津玄師さんの歌が聴こえてきました・・・
って、それは密柑じゃなくて「檸檬」でしょ（逃）

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空を飛ぶドローン。いつか普通の住宅街にも普通に飛んでいるようになるのかしら。