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二人暮らしのお皿の色は

性格診断とかで、「将来のことについてあれこれと妄想をしたりしますか」はい、どちらかといえばはい、どちらともいえない、どちらかといえばいいえ、いいえ。というやつがあるけど、こんなんぜったい「はい」だろ、「いいえ」のヤツとかこの世にいるんか?って思う。


こないだも、近所の焼き鳥屋で二人で飲んでて何気なくあたしが「そろそろ引っ越そうかなぁ、来月更新なんだよね」って言った時、「いいね、僕も広いところに引っ越したいな〜、そろそろ本とか服とかが溢れてて」って返答されて、もう次の瞬間には、駒沢公園の見える2LDKで丸いダイニングテーブルに近所の美味しいパン屋さんで買ったクロワッサンをグレーのお皿に乗せてゆっくりコーヒー淹れてたら(クロワッサンは小さめだけどパリパリのやつ、コーヒー豆は深煎り、朝は苦目の方が目が覚めるからいいらしい)、「今日天気いいからこの後ちょっと散歩行かない?新しくできたカフェあるじゃん、そこでコーヒーテイクアウトして行こう」って君に言われて、今からコーヒー飲むのにまたコーヒーの話してるって内心ニヤつきながら「いいねぇそうしよう」って言ってるあたしの姿が一瞬で妄想できた。妄想っていうのは控えめな表現で、もっと細かくそのディティールを描写できるほどほとんど正確に二人暮らしのあたしたちの姿はありありと思い浮かんでいて、朝ごはんのシーンなんてそのいくつもあるうちの一つに過ぎないくらい、多層的にあたしのなかで二人暮らしの生活のイメージは浮かび上がっていた。
だいいち妄想なんて言葉は失礼だと思う。だってあたしがほんとうにそれを実現したらそれは妄想じゃなくて具体的な未来予想図だってことになるし、妄想って言葉は実現する現実的な手段なんてすっ飛ばして理想だけ夢見てるんでしょってニュアンスでなんならちょっとdisってる気がする。たしかにあたしたちはまだ付き合って1ヶ月だし、同棲の話なんて全然1ミリも出てきっこないくらいお互いのことをぜんぜんまだ知らないから、こんなの妄想だって言われても仕方ないかもしれない。だけどあたしはその「引っ越し発言」以来、思い描いたイメージを実現するためにはどう行動すればいいかについて日々めちゃめちゃ考えていて、忠実に計画を実行するスパイみたいにちゃくちゃくとそして臨機応変にデートのたびに最適な行動を取っている。だからあたしとって恋人と駒沢公園の見える2LDKに住むことは決して妄想なんかではなく周到な計画の上に必ず到来する未来なのである!


・・・以上が、「将来のことについてあれこれと妄想をしたりしますか」の質問を見てから「はい」に◯をつけるまでの約1.5秒間に考えたこと。
ウソ、ほんとは最初「どちらかといえばはい」に◯をつけようとしたけど、一瞬とどまってやっぱり私はこっちか、と観念してから「はい」に◯を付けたので5秒くらいはその質問を見つめていた。

でもさ、みんなこれくらいの妄想はするよねぇ?私だけじゃないでしょ?二人で食べる朝ごはんのパンを置くお皿の色、何色?妄想、ぜんぜん恥ずかしくないから今度こっそり私だけに教えてね。

あーあ、そろそろ恋人欲しいなぁ〜。



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