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ゼロからコワーキングをはじめる時にまずはやっておきたいこと

2010年5月のカフーツ開業以来、これまで数多くの方が地元(ローカル)のコワーキングの開業・運営についてアドバイスを求めてこられました。

個人、有志のグループはもちろん、地方自治体、企業(規模問わず)、NPO法人、はたまた医療法人、業界団体などなど、年月を追うごとにその属性は多岐にわたってきましたが、その都度、提供できる情報や知見は洗いざらい共有しています。

中でも多いのが個人のご相談です。自分の町にもコワーキングというみんなが集まれる場所を作りたい、それで地元を活性化したい、という熱い想いの持ち主がほとんどです。ぼくはそういう熱量の高い、いわゆる「市民」をサポートしたいと思って活動しています。(それと、その市民を支援する熱量の高い自治体もですけど)

そんな方に、ぼくがいつもオススメしているコワーキングのはじめ方を紹介します。

場所はあと、人が先

ご相談に来られる方の多くが、まず不動産業者を訪ね、オフィス物件を閲覧してから相談に来られます。その手にはたいがい、不動産業者からもらった平面図入りのチラシが握られていて、「ちょっと狭いんですが、駅から5分なのでいいかなと思うんですが、どうでしょう?」とお訊きになる。

で、ぼくはいつもこう尋ねることにしています。「あなたと一緒にコワーキングを運営する仲間はおられますか?」。それともうひとつ、「そのコワーキングを利用したいという方はおられますか?」。だいたい、「は?」という反応。「まだ、場所も決まっていないのに?」という怪訝な表情で。

ズバリ申し上げて、場所はあとからでいいんです。そもそも、順番が違うのです。それよりも、利用する人、運営する人、といいますか、これから作ろうとしているコワーキングの世界観に共感する人、この人たちを先に集めることが肝心です。

つまり、チームで運営することを前提に計画を練って行動することです。で、そのチームを中核にコミュニティを組成することが望ましい。

と、エラそうに言ってますが、実はぼくが2010年にカフーツをはじめたときには、海外の情報だけを頼りに、自分ひとりで考えひとりで動いて開業しました。数ヶ月のあいだ、チラホラとしか人が来ませんでした。やってみてはじめて、アメリカのモノマネでは日本ではうまく行かないということに気づいた次第。

全部ひとりで抱え込んで、ひとりで考えてたからですね。もっと人を巻き込んで、同じ価値観を持つ人たちと組んで、チームを作って意見交換しながら一緒に進めたら、あんなに遠回りしなくて済んだはずです。

もともと、ネットマーケティング研究会という勉強会をやってたのがきっかけでコワーキングを始めたんですが、その参加者とチームを組むことまでアタマが回りませんでした。前例がなかったとは言え、そのことに気づくのに半年かかりました。アホです。

熱い想いに燃えているときは、(そのときのぼくみたいに)往々にして視野が狭くなりがちです。でも仲間がいると、まず課題に対して多角的にモノを考えて意思決定できるようになります。これが大きい。そうすると、役割分担もできますし、場合によってはコストも分散できます。

だから、最初の段階で仲間を作っておくことを強くオススメしています。これは、自治体や企業が運営される場合においても同じ、チームを組むことが大前提です。

なお、ここで言うチームとは、必ずしもスタッフという意味に限定されません。利用者であっても、「このコワーキングが維持継続することに協力を惜しまない」という人ならチームの一員です。ちょっとしたことでも、対価を求めず手を貸してくれる人。むしろ、そういう利用者(コワーカー)が多いコワーキングであることが望ましいです。

まずジェリーしよう

ぼくが新規にコワーキングを開設する手順として、まず最初にオススメしているのが「ジェリー」(Jelly)です。

「ジェリー」とは、複数のコワーカーがどこか1ヶ所に集まって、各自の仕事をするイベントのことです。コワーキングに似ていますが、コワーキングはどこか場所が決まっている、固定的であるのに対して、ジェリーは例えば、今日はAさんのオフィスで、来週はBさんのカフェで、その次はどこかの公園で、と毎回場所を変えて行うスタイルです。

発祥はアメリカのニューヨーク。2006年のはじめごろ、ニューヨークのエンジニアAmit Gupta氏が自分のオフィスを開放したのが最初です。この写真がその時の様子。左端がAmit Guptaさん。

Jelly

ちなみに「ジェリー」とは、多種多様なスキルや経験を持つワーカーが1ヶ所に集まることから、色とりどりのお菓子が瓶詰めになっている「ジェリー・ビーンズ」になぞらえて名付けたんだそうです。洒落てますね。

もうひとつちなみに、このジェリーが2006年ですが、前年の2005年8月にサンフランシスコでBrad Neuberg氏がCoworkingをはじめてます。つまり、この頃、アメリカ大陸の西と東でほぼ同時期に「共用スペースを利用して一緒に仕事をする」ということが始まっています。

蛇足ですが、コワーキングに「スペース」という概念は必須ではありません。

先日も書きましたが、コワーキングとは、

個別に仕事を持つ人たちが、
働く場所(環境)を同じくしつつ
コミュニケーションを図りながら、
互いに情報や知見を共有し
時に協働パートナーとして貢献しあう概念
およびそのための施設。

のことを言います。

なので施設は、言い切ってしまえば「あればベター」であって主役ではありません。コワーキングは手段であり、ひとつの装置であり、いわばスキームです。事実、公園やビーチでもよくコワーキングしました。(いまはコロナ禍のせいで、むしろ屋外のコワーキングが海外では流行の兆しがあります)

それよりも、集まる仲間がいることのほうが重要。それが結果としてコワーキングというコミュニティの核になるからです。

で、場所はカフェでも図書館でも大学の食堂でも自治体建物のロビーでも、どこでもいいので場所を借りて、そこでジェリーと称して「一時的コワーキング」を開催するのです。

ジェリーに集まってくる人の輪を徐々に広げて、まず最初にその町にコワーキングを開設することを共通のテーマにする。つまり、共通の目的を持つチームにするということですね。

ジェリーは、ざっとこんな手順でやります。

ジェリー参加者に訊く3つのこと

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