大学生の頃の思い出


コンセントを探して県境まで来てしまった

ケータイを充電したいのだが、これなら家に帰った方がよかった

まあこれと言って急いでいる訳ではないので、ゆっくりとコンセントを探す事にした

しかし県境は基本的に落ち着いてる

発展してる県境は少ないのではなかろうか

県境と言えば、車で旅行や遠出した時に、県をまたぐときに皆んなで「入ったー」

と言う印象がある

チームによっては、「よっしゃ」の時もあるのでは無いだろうか

またその機会があれば、その時は「カマン!」で行こうと思う

そんな県境で充電する所があればいいのだが、県境はほとんどコンセントは無い

有って2つか3つ

ここで探すのは効率が悪いので移動する

とりあえず地図なんか見ずに闇雲に歩いたら、海岸沿いまで来た

とても天気が良くて、海が広くいい景色だ

こんな環境で充電できたら良いな

と思うが、今の時代は厳しそう

でも、自分の体力は充電できたぜding dong

しばらくボサッとしていたら、雲行きが怪しくなってきた

遠くの空が真っ黒で、時折イナズマがビカっと光る、地獄みたい

ここで思い付いた歌が

カミナリに打たれれば、ケータイの充電なんか即マックスになんじゃねえのding dong

とまあ闇雲に移動する訳だが

人知れず国境にたどり着いた

海の上だ

クロールで来る途中、何個かコンセントがあったんだが、フジツボが付いていて気持ち悪かったからスルーした

これ以上先に進めないしどうしよう

そう思うと、イルカが一頭やってきた

口先で僕を突いて戯れてくる

僕もそれに応えようと、ブレンバスターを仕掛けようとするが

当然イルカを持ち上げれる訳もなく、逆に僕が顔で飛ばされて、背中に乗せられた

そうすると、泳ぎ出した

普通にいつも通りに泳ぐものだから、ジャンプしたり潜ったりもする

ジャンプはどうにか背ビレ強く握って落水せずにいられるが

潜った時は毎回落水する

その度、もういいと思うが背中に乗せられる

背ビレには、強く握った時の爪跡がどんどん増えてボロボロになっていく

この時知った事

「イルカは背ビレに神経が通ってない」

を、論文で書いたが単位は取れなかった

それは置いといて、背中に乗る時間が増えると、その分絆も深まってくる

そんな時、向こうの方にイルカの群れが現れた

すると僕が乗っているイルカが「キィィ」と言う

なるほど、群れから逸れていて寂しかったのか

そこで僕はイルカの頭に穴が空いている事に気づいた

と言うよりも空いている事は知っていたが、初めて意識をした

充電出来そう

僕は、持っていた充電器の差し込みプラグを、その穴に差した

するとイルカから「ギィィ」と声がした

やり過ぎたと思ったが、どうやら痛がっている訳じゃないと気付いた

僕の持ってるケータイの画面に

「ありがとう、さようなら」

と表示された

帰り道、落水を繰り返しながも途中まで送ってくれた

寂しいのがイヤだったので、ブレンバスターを仕掛けたが

やっぱり歯が立たなかった

その後、逆に背中に乗らされる事もなかった

じゃ元気でな

そこからは背泳ぎで帰った

ケータイを見た

ちょっとも充電されてなかった


それから何年も時間が経ち、結婚して子供もいる

まだコンセントは探している

休日は息子を連れて、コンセントを探しに行く事もある

今回は海岸沿いまで来た

波打ち際で探していたら、目を離した隙に息子が流されてしまった

離岸流が凄くて、あれよあれよと沖へ離れて行く

僕はすぐにバタフライで追いかけた

その時、息子が波にのまれて姿を消した

名前を呼ぶも返事は無い

絶望した

コンセントなんか探さなきゃよかった

このまま僕もどこかに流されよう

そんな時目を疑った

息子が水面を滑ってくる「お父さーん」

よく見るとイルカの上に乗っている

「カマン!」僕は叫んだ

次に県境で使おうとしたやつを使ってしまったが、どうでもいい

イルカにお礼を言おうとして近づいた

そこで気付いた

背ビレが爪跡でボロボロになっていた

あの時のイルカだ

泣きながらブレンバスターを仕掛ける

背中の上に乗らされる

差し込みプラグを穴に挿す

「ギィィ」

画面に「また会えたね」と表示された

マジding dong

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