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⑫「一緒に帰ろう。」

グレを保護した私たちは、事前に相談していた動物病院に直行し、ワクチン接種と血液検査、そして避妊手術を依頼しました。
「手術はするということでいいんですね?」と念をおされたのが、いまとなっては、重要な意味を持っていたかもしれないことが、その時は全く気が付かず、「はい、お願いします」と依頼しました。

朝9時前にグレを預け、15時くらいに迎えに行きました。
何かあれば連絡しますと言われていたのですが、なにも連絡がなかったので、ひとまず無事すんだということなんだろうと、心配と安心の入り混じった気持ちでした。その間、何をしていたのか、全く覚えていません。

*   *   *

診察台のうえで、キャリーの中にいるグレに「グレ!」と呼びかけると、はっ!と振り返って目を見てくれました。

「手術は無事、終了しました。」
「ただ、・・・」

「この子、体重が2.4キロしかなくて、、
猫エイズ陽性でした。」

「子宮はとても萎縮していて、妊娠や出産をした兆候はありませんでした」
「妊娠できない体だったのでしょう」

「今日はひどくおびえていますから、しばらく静かにみまもってください。」
「術後のガーゼは、数日で自分でとってしまうでしょう。抜糸の必要はありません。」

ご夫婦と娘さんでやっている病院で、親身に対応してくださいました。

*   *   *
「猫エイズ陽性」
と聞いた時のわたしの感情は、ショックというより、
「やっぱり・・。」
というものでした。
あんなに瘦せていたので、なにか原因があるに違いないとは思っていたのです。原因不明、というよりは、原因がわかったので、納得がいったという感情でした。

*   *   *

グレをつれて、車にのりました。
グレは、また一度だけ、「ニャー―!」と大きく鳴きましたが、その後はずっと、じっと静かにしていました。
道中、ずっと、何十回も、なんどもなんども自然と口からでたのは、

「おうちに帰ろうね。」
「グレとわたしたちのおうちに、一緒にかえるんだよ。」

という言葉でした。


ケージに入た直後のグレ

(つづく)



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