【エッセイ】そして、カレーうどんに至る
カレーライスが好き、そしてうどんもまあ好き。だからといって、カレーうどんが大好きだとならないのは何故なのか。カレーにはやはり飯が合う、なんてこだわりもないようなものだが。
一体、カレーうどんを最後に食べたのはいつのことだろう。
関西のうどん文化で育ったものだから、東京で評判の蕎麦屋に入って値段に驚かされたことがある。ひょっとしてもはや大衆料理ではない? 高いばかりで若い胃袋には全然物足りなかった。
うどんも出すような、こだわりのない安い店ならば、カレーライスも出す。セットにして、メインがカレーライスで蕎麦はスープ替りといったところか。そんなわけで、カレー南蛮やカレーうどんをあまり食べる機会はなかった。いくらカレー好きでも、カレーうどんのカレーライスセットを注文しようとは思わない。
蕎麦よりもうどんよりも、若い頃はラーメンを大いに好んだものだが、年々キツくなってくる。先日、若い者に薦められて、背脂チャッチャ系なるもの(胃もたれ系とか胸やけ系、あるいは腹下し系と改名した方が良い)を初めて食して具合が悪くなって以来、とうとう敬遠するようになった。
別にチャッチャ系とか家系、背脂を避けて、あっさり系を選べば良いではないかと言われそうだが、ダメなものはダメだ。もはやラーメンの食えない体になってしまったのか、それともリハビリ期間を置けば、また食べられるようになるのか。
それはともかく、カレーうどんの話である。
夜勤明け始発前、小腹が空いた時に営業している店はただでさえ限られているのに、コロナ禍以降一層少なくなってしまった。選択肢は牛丼、ラーメン、ハンバーガー、そして蕎麦ぐらいなものである。
牛丼飽きた、ラーメン食えない、ハンバーガーはテイクアウトのみの営業が多く、そこで自然と蕎麦屋に足が向くことになる。椅子があるから立ち食いではないけれど、生麺を謳いながらもクオリティ的には茹で麺を湯がいただけとしか思えない、24時間営業のファストフードチェーンである。どこにであるし、どこにでもあるが故に近所にもあるから、大してありがたくもない。
しかし、超高齢社会だというのに、世の中ラーメン店ばかりなのは、一体どうしたわけなのか。おっさんは外食しないとでも?
食欲の減退するような熱帯夜(早朝)に、さっぱりあっさりの蕎麦は助かる。しかし、この24時間営業の店では、その肝心の蕎麦が美味しくない。というか、不味い。香りのしない、ゴムみたいな食感の蕎麦に、べしゃべしゃのかき揚げ、生卵の黄身も盛り上がらずにつゆの上でぺたーっとだらしなく横に広がっている。
そもそも日本蕎麦と表示するにはJAS(日本農林規格)の基準があって、蕎麦粉率30%以上なのだが、外食ではこのスタンダードが適応されない。蕎麦もうどんも同じ価格設定というのには、このような理由があるのである。
JASの規格なら蕎麦と言えないような紛い物を啜って味気ない思いをするぐらいなら、うどんにした方が良いのではないか。そこにカレーをかけたなら、酸化し切ったつゆの味もなんとかごまかせるであろう。完全に妥協の上での選択であって、到底自由意志などと呼べるものではない。
うん、食える。まあガッカリ感もない。
そんなわけでカレーうどんを食べて、ふと思ったわけである、最後にこれを食べたのはいつのことだったのだろうかと。
(了)
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