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会話から対話へ

http://mi-mollet.com/category/o-hirata
皆さんは平田オリザさんをご存じでしょうか?
劇作家・演出家で、最近は芸術・演劇を応用したコミュニケーション教育の可能性を探っておられます。
彼が、mi-molletに2019年7月から10月まで連載した「22世紀を見る君たちへ」をご紹介します。連載すべてを読むのは少し骨が折れますが、これからの時代のコミュニケーション、コミュニケーション教育・研修を考えるにあたり、大変面白い材料をたくさん提供してくれます。

連載の最後のほうに、ビジネスにおいても注目されている非認知スキルについての話が出てきます。
非認知スキルとは、知識や思考力を獲得するために必要な力をさし、
① 目標を達成する力(忍耐力、意欲、自己制御、自効力感)
② 他者と協働する力(社会的スキル、協調性、共感性、信頼)
③ 情動を制御する力(自尊心、自信、問題行動リスクの低さ)
をいいます。
平田さんは、学び合い、つまり周囲とのフォーマル、インフォーマルな活動で、「自分とは異なる意見や少数意見のよさを生かしたり、折り合いをつけたりして話し合い、意見をまとめている」という能力を非認知スキルが可能にさせ、結果として学習成果が高いととらえます。そして、演劇が大多数と異なることや、様々な個性に役割を分担できることでの学び合いを促すものとして演劇が教育に大きな役割を果たせると述べます。

また、「自分とは異なる意見や少数意見のよさを生かしたり、折り合いをつけたりして話し合う」というプロセスにおいて、コンテクストを理解する力を強調しています。
参考:
https://tobira-project.info/blog/%E5%B9%B3%E7%94%B0%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B6%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E6%BC%94%E5%8A%87%E3%81%AE%E6%89%8B%E6%B3%95%E3%82%92%E7%94%A8%E3%81%84%E3%81%9F%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7.html
その場で交わされる言葉の「意味」ではなく、その言葉にかかる個々人の生活環境や文化のずれ(私たち精神科医からすれば、更に発達環境や特性による感じているもののずれ)に気づかないまま会話を進めていくことが、コミュニケーション不全を起こす最大の要因であるとしています。
ここでも平田さんは、演劇が言葉にかかるコンテクストを理解する能力が身につくとしますが、印象深いのがプロの役者が演じるべき対象と自分との違いを感じながら、それでもその違うことをするとしたらどういう状況の自分だろうかと、自分と対象の間に「少しずつ」共有部分を広げていくアプローチをとるというところです。

職場や組織というのは、最初から一定の上下関係や定まった慣行があるあまり、言葉の意味ばかりが強調され、そこにかかるコンテクストの違いが容易にコミュニケーション不全を起こします。その時に、相手との共有部分を見つけ、広げていく。その時に私たちはほんの「少しずつ」違いをそのまま取り出し、その違いをそのまま自分がするとしたらどういう状況なのだろう?とお互いに問うていくことが必要です。
それがコミュニケーション不全を緩和し、対話を導き、学び合いを醸し出し、非認知スキルを要する場を作り出していくことになります。
少しずつ自分を、相手の言葉・行動を観察して、分けていく。Use Brainで提案する脳の使い方でも大切になってくることです。

これは、1on1や組織コミュニケーションにおいても、大切な視点を提供していると思います。


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