見たことある番組
除湿機vs 加湿器の対決。
なんでこんなことやってるんだ。
僕はコント番組が作りたかったのに。
どのチャンネルにしても今日なんもやってないやんの嵐。
その嵐の1つを僕は作っている。
「湿度計のインサートなんですけど、こんな感じでいいですかね?」
「なぁお前、楽しいか?」
「はい?」
「この番組やってて、楽しいか?」
「…楽しくはないですね」
「楽しくないやんなぁ」
「まぁ、正直…」
「見たことあるやんなぁ、こんな番組」
「見たことありますね」
「オリジナリティのカケラもないやんなぁ」
「はい、ないですね」
「この番組な、スタジオにいる芸人みんな、僕が高校のとき家族が寝てから1人になって、録画見て腹抱えて笑ってたコント番組に出てたねん」
「…」
「泣きたくなんねん、自分の番組やのに」
「…」
「これなんなん?なんのためにやってんの?除湿機と加湿器の対決番組、見んよ僕は、高校の僕は見んよ、いやしゃあなしで消去法でこのチャンネルにすることはあっても、見てへんよ、テレビを見るっていうのは、テレビを飲み込むことやと思うねん、こんな除湿機と加湿器の対決なんか、鼻から吸って鼻から出ていくだけなんよ、噛み砕いて飲み込んで消化して血になって脳みそをカーッてさせるもんちゃうの?そうやろ?」
「…え、まぁ、そうなんですけど」
「いや、ごめん、そんなんわかってるやんな、公私混同というか、こんなん仕事として割り切ってやるしかないやんな、ごめん、なんやっけ?湿度計が?」
「僕とコンビ組みませんか?」
「うん、え?」
「やっぱ芸人やろうと思います、だから組みませんか?」
「僕と?」
「はい」
「マジで言ってんの?」
「はい」
「いや遅すぎるって、僕40やで」
「元テレビマンと元ADのコンビ、いいじゃないですか」
「…あぁ、まぁ、確かに、新しいかもな」
「でしょ?」
「…よし、じゃあ、適当に切り上げて、作戦会議しよか」
「はい!」
こうして2人は、見たことある漫才やコントを2年した後、見たことある解散をしました。
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