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根腐裏異愚

夜10時すぎ、残業を終えて両耳イヤホンで家に向かっていると、騒がしい音が聞こえてきた。

暴走族?

イヤホンを外すとすごいエンジン音が近づいてくる。

振り返ると20mほど先の車道のカーブが明るくなっており、先頭集団が曲がってきた。

やだなーと思いながら前を向く途中に何か小さい影が見えた。

見直すと5才くらいの男の子が車道の真ん中にあぐらをかき暴走族をじっと見ている。

「危ない!!」

私はとっさに車道に飛び出て男の子に覆い被さった。

ライトで眩しい目で暴走族の方を見ると、先頭集団の掲げるのぼり旗に、


と書いてある。

「…だいかえ?」

カンッ

 「だいたい!」

ドパーン!

爆発音にビクッと目を閉じてすぐ開くと、先頭集団がごっそり消えていた。

 「だいたい!」

男の子は得意げな表情をしていた。

不思議に思う間もなく第二集団のライトが迫ってくる。



 「ためらう!」

ドパーン!

今度はハッキリ見ていたが、何かこちら側からビームのようなものが出て第二集団にヒットすると痛快な爆発音とともに花火のようにパッと弾け消えた。

男の子がまた得意げな表情をしているのを横目に第三集団の旗を確認。


 「かつぐ!」

カンッ

男の子の前から出たビームが暴走族のバットに振り払われた。

 「みつぐ!」

カンッ

 「えーっとぉ、えーっとぉ」

「…またぐ?」

ドパーン!

あと3秒もすれば轢かれているところだった。

男の子はなんで言うんだと言わんばかりに私を睨んでいる。


 「あんねい!」

ドパーン!




 「きょうじん!」

ドパーン!


 「しっせき!」

ドパーン!



 「つつもたせ!」

ドパーン!

「イェーイ!すごいよく知ってるね!」

 「へ へ」

バリバリバリバリドーーーン!!

すごい雷が近くで落ちてもくもくと白い煙が晴れると巨大なナマハゲみたいな毛むくじゃらの黒マスクをした真っ赤な鬼が巨大な真っ赤なバイクに乗ってトゲトゲのこれまた真っ赤な棍棒を右手に構えながら単身で迫ってくるのが見えた。

あと5秒もない!





 「はらと!」

カンッ

 「はると!」

カンッ

「ばらと!!」

カンッ

 「ばらっと!!」

カンッ

「ぱおちと!!」

カンッ

「ばらおちと!!!!」

カンッ

「イヤーーーーーーーー!!!!!!!!」




 「おねーちゃん起きて」

…ん?

…夢?

…首が動かない

…あぁコルセットか

 「おねーちゃん分かったよ」

あ、

さっきの子

 「ごろつき」

「ごろつき?」

 「ほら」

漢字辞典を開いて見せてきた。

赤ペンで破落戸に丸してある。

 「ならずもの でもいいんだって」

「なにそれ」

 「なんか、知ってるわけない問題で冷めるね」

「確かに(笑)」

そのあとその子のお母さんが来てすごく感謝された。

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