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おとんとボウリング
スペアの後に3本しかとれなくて振り返って泣き顔でこちらに向かってくる。
自分でしかなかった。
同じ小3くらいの頃、おとんにボウリングに連れてってもらっては悔しくて泣いていた。
おとんに負けてではなく、自分の点数が低いのが嫌だった。
負けず嫌いではなく、完璧主義。
人生ゲーム64、人生ゲームのテレビゲームで、給料のマスではルーレットの出た目に応じて給料が決まった。僕は決まって『正義の味方』という職業で、一番上のランク5の給料は最高1億5千万円、さらに給料マスにピッタリ止まるとボーナスで倍の3億円、とにかくこまめにセーブしてルーレットで最高給料が出るまでリセットボタンを押してやり直しの繰り返しで、5時間も6時間もかけてゴール地点で100兆円くらいになって満足していた。無論、1人プレイである。
ボウリングにリセットはないもんなぁ、泣くしかないよなぁ、一緒すぎる自分と一緒すぎる。
一緒すぎるからセブンティーンアイスが食いたいだろうと思ってバナナチョコのコーンのついたやつをトイレから戻るついでに2こ買って1つ渡したら喜んで食べている。
一緒すぎてニヤニヤしてまう。
コーンついてるやつやんなわかるでえ。
セブンティーンアイスは後にしてストライクをとって振り返ると、ズボンとパンツを下ろして突っ立っていた。
そして下ろしたズボンとパンツをまたいで球も持たずにそのまま僕とすれ違い、投球位置に立った。
後ろ姿を見ていただけだが、両手で金玉袋を掴んでバンザイの位置まで引っ張って、ドラえもんが四次元ポケットを極限まで引っ張って自らを取り込んでスペアポケットの元へワープするときみたいに、自らを金玉袋にズルンッと取り込んで、スペアはないのでワープこそしなかったが、そのままデカイ金玉となって、スーパードンキーコング2の回転アタックしてくるアルマジロのようにキュキュキュキュキュとその場で回転加速して
ビ
ュ
‖
‖
‖
‖
‖
‖
‖
‖
ン
シャラコシャラーン!!
ストライク!!
金玉アルマジロが奥に飲み込まれてから10秒しても20秒しても戻ってこない。
球が戻ってくるところから出てこない。
係員を呼んで事情を説明して確認してもらったら、どこか中ほどで詰まっているとのこと。
あっちからもこっちからも覗いても目視はできなかったので、どこか中ほどで詰まっているとのこと。
ボウリング場は営業できなくなり、他の5人くらいの客は帰らせられ、14時間後、第5レーンと第6レーンを潰して中ほどをめくると現れた金玉アルマジロから、グスグスと泣く声がした。
僕はそれを玉のまま抱き上げて、ボウリング場を後にした。
外はもう朝だった。
玉を両手で抱えながら国道沿いを歩く。
「おとん…」
玉の中から泣き枯れた声がする。
「ストライク、すごかったで」
「腹減った、おしっこしたい…」
「あー、モーニング食うか」
国道沿いの喫茶店に入って、玉を置いた。
中で掴んでいた皮を離したのか、シュルルルルパーン!!と仰向けの息子があらわになった。
入店を断られた。
「ズボンとパンツ履いてないん忘れてた」
「はは(笑)あと靴も返さなな」
「マジでしっこ漏れそう」
「おーそっか」
ダッシュでボウリング場に戻って玉を置くやいなやキュキュキュキュキュピューーーーーンと男子トイレへ直行して、1分くらいしたら下半身丸出しで出てきて第5レーンでボウリングシューズを脱いでパンツとズボンを履いて自分の靴を履いてボウリングシューズを返却ボックスにガキョン!と捨てて戻ってきた。
「おとんのアイス溶けてたで」
「え? あー」
自分と全然これから違っていくんだと確信した。
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