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コーヒーおかわり自由

デートの終わりはだいたいいつもここだ。

なんせドーナツも食べれて、ホットコーヒーが何度でもおかわり自由だからだ。

金のない僕にはピッタリで、この店舗を目にすると必ず入ってしまう。

そして何度でもと言ってもまぁ2杯が限度なのだが、ちゃんとしたコーヒー2杯で砂糖の塊を流し込むと脳がカーッとしてくるのである。

ドーナツ2個とホットコーヒー。

600円台で事が足りる。

彼女の分を出しても1000円ちょい。

歩き疲れても最終地点がここなら元気100倍になるのだ。

彼女が変な喫茶店に誘(いざな)おうとしても変な喫茶店はコーヒーが700円とかしやがるからするりとかわしいつもここに辿りつかせる。

僕は決まったところでいいのだ。

彼女はいろんなところに行きたいのだ。

その溜まりに溜まったフラストレーションもあいまってちょっとした口論が「お客様…!」レベルの店員3歩踏み出し喧嘩にまで発展し気付いたときには

「あっっっつ!!!!!」

とホットコーヒーをバストアップにかけられていたのである。

胸板のへんなんてたぶん一番ヒフが薄いところなのでジンジンジンジンして店を飛び出て行く彼女よりも自分の健康に寄り添えという脊髄の指令に忠実になっていたのである。

店員さんが冷たいおしぼりをくれて机とかを店員さんと一緒に最低限だけ拭いて、でも僕は悪くないしなぁと思いながら、けどまぁ追いかけるのもシャクだし、なんせホットをかけるなんて傷害事件だろありえんありえんと法を味方につけたところで百の被害者に成り上がり、自分の1センチ残った冷めたコーヒーを飲み干し、おかわり専用カウンターまでカップを持っていって、半分だけお願いしますと言ってさっきの女性店員さんが半分だけカップに注いで

「あっっっっっつ!!!!!!!」

とまた同じ胸板に向かってかけてきたのである。

「どっちの味方になるとかそんなんないでしょ店員が!店員が味方になっていいわけないでしょどっちかの!赤の他人のカップルの喧嘩にどっちの味方するとかあっていいわけないしそもそもあんたは店員だから間違いなくクビでしょ!みなさん見てましたよね!?店員が客にホットコーヒーをかけましたよ!痛い痛い痛い!痛くなってきた!かけられたとこが!あ、警察よびますね!」

数分後に警察が来て、なんだかんだ聞かれて、店側が火傷の治療費と示談金をくれた。

やっぱり、世界のおかしさがリアリティの外を出ないで良かった。

店員がホットをかけてきたときに、世界がおかしくなったんじゃないかと不安になったんだ。

ホット胸を撫で下ろした。

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