前髪の少ない女は信用するな


10時間の仕事を終え、最寄駅の改札を出てSuicaをチャージしようとしたそのSuicaを置くところにその紙はあった。

まずは紙をつまんで入れ替えるようにSuicaを置いてあらかじめ電車内で財布から左ポケットに移動させておいた千円札を出して券売機に滑り込ませる。

Suicaを動かさないでくださいみたいな読み込み中の5秒を利用して右手に包み込んださっきの紙を改めて見返す。


野球しか好きじゃない男は信用するな


変わってる!

いやいやと裏を見ても白紙で足元周辺をキョロキョロ確認するが紙は落ちていない!

紛れもなく先ほどSuica置きに置かれていた紙がこれだ!


さっきの方が共感できたのに!

なんて書いてあったかなぁ?

女のなんかが少なくてどうみたいな…

強くギュッと目を閉じてみる。

暗闇の中にキラキラが見える。

パッと目を開ける。


野球しか好きじゃない男は信用するな


文字がデカくなっただけかい。

紙からはみ出していてめっちゃ腹立つ。

漫画表現やんけ。

現実で10時間も働いてきた俺に喧嘩売り過ぎやろそれは。


「あのぉ…」

女の声に振り返ると女がいた。

「チャージ、もういいですか?」

「あーすいません!どうぞ」


恥ずかしいってほどでもなかったがなにか気まずくて小走りで自宅到着。

したところまでは覚えていて気が付くと朝。

右手にはSuicaと、昨日の紙。

白紙だった。

あと財布がどこにもなかった。









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