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双子パパインタビュー:丸井康敬さん

現在、就学前の双子ちゃんのパパである丸井康敬さん。
昨年7月に関東多胎ネットが取り組んだクラウドファウンディングを応援してくださいました。
多胎育児の当事者である丸井さんに、父親目線からの多胎育児についてお話を伺いました。


ーお子さんが双子と分かった時、どんなお気持ちでしたか?
妻の体調不良で病院を緊急受診したところ、産婦人科の医師から「袋が2つありますね」と言われ「袋が2つとはどういう意味ですか?」と聞き返したときの衝撃は忘れられません。

頭が真っ白になったことを鮮明に覚えています。

ー体調不良からの双子妊娠発覚だったのですね。
それまで、子どものいる生活に憧れ(楽しみ)が大きかったのですが、まじか…。という気持ちでした。両家ともに双子がいなかったので想定外でしたし、負担的な意味でどうしよう…。という気持ちが大きかったのかもしれません。

ただ、自身の経営する会社が、紙業界の中では珍しいポジションで、独自の製品を作っているので、未知のことを前向きに捉える感じが双子を授かったことに共通しているようにも感じました。

その後、性別が男×男と分かったので、きっと体力がいるな!と覚悟しました(笑)

ーそうだったのですね。父親目線で感じた、多胎児の妊娠・出産・育児の大変さはありますか?
妻は妊娠前から現在も働いているのですが、妻の職場は駅から遠くて…。
妊娠中は少しでも妻に負担をかけないように、職場への送迎をしたり、無理しないでと声掛けをして、できることをやっていました。僕が妊娠することは逆立ちしてもできないので…。

ー職場への送迎!それは奥様は心強いですね、きっと!
僕自身の育った家庭が、親子仲良しで。父が送迎大好きで、妹を学校へ送ったり、僕の野球の試合があるときは東京から神奈川まで毎週欠かさず送ってくれていたので…。その価値観がベースにあるのかもしれません。

でも、生まれる前は夫婦2人の生活の延長線上のことなので、生まれてからのほうが壮絶でしたね。

妻は、管理入院をすることなく自宅で過ごしていたのですが、出産予定日の5日前にHELLP症候群(妊娠高血圧症候群)と診断され即入院。その日に帝王切開で出産することになりました。

健康で体調を崩さない妻でしたから、まさかそんな事になるとは、晴天の霹靂でした。
まさに何が起こるかわからない多胎妊娠だと思いました。

ー本当に緊急のことだったのですね。
僕はその日、たまたまマンション理事会の輪番があたってしまい、理事長を決める会議に参加していて「自分が理事長をやるから、今すぐ病院に行かせてください!」と話したことを覚えています。

結局間に合わず、オペ室に入る妻には会えませんでした…。
二人とも、2000gは超えて生まれたのですが、めちゃくちゃ小さく感じました。

ー我々の想像する新生児(赤ちゃん)って無意識に3000g台をイメージしているんですよね。なので、2000gだと小さく感じますよね。
はい。本当に小さく感じました。
産後、退院して自宅に帰ってきた子どもたちを見て、「これからこの小さな二人を守っていかなければ」という実感が強く湧きました。

今まではやらなくてよかったことが、急にすべてやらなくてはならない日々にかわり、人としてのステージが変わったように感じました。

ーお家に戻られてから、どのような体制で育児をスタートしたのですか?
妻と輪番制(妻は育休取得中で、僕は週1〜2日)で夜勤のミルク当番を決めていました。

しかし、子どもたちが30分差で目覚めるとインターバルがなくて眠ることができず、2人同時に起きても、ダブル哺乳瓶の姿勢を続けるのが大変でした…。

ー分かります、分かります。(私たちも経験してきました…)
0時~7時の間に3回くらいミルクをあげていました。
あまり寝ないタイプの子どもで、ハードさのボディーブローが徐々に効いてくる感じで…。

睡眠不足と栄養失調でめまいの症状が出てしまい、頭が回らず、簡単な足し算もできなくなって…。当時、社長になったばかりで身体を壊してしまっては。と将来に不安を感じました。

それを期に、自分自身の健康レベルの維持向上をかなり意識して生活改善して、今は元気です!

ー多胎の新生児を育てたことがある方には共感だらけのエピソードですね。
ー多胎育児で便利だったグッズや、役に立ったものがあれば教えて下さい!
新生児時代から寝室のレイアウトはレンタルのベビーベッドなども活用して、5回ほど変更しました。

ー成長に応じて変更されたんですね!臨機応変さが求められますよね。
ー哺乳瓶はどうされていましたか?
どうやって消毒するか悩んで、レンジで消毒できるものを選びました。
が、、、新品のレンジが1年でだめになったんです。使いすぎだったのでしょうか…(笑)

70度の設定でお湯が出るポットは重宝しましたね。

今振り返っても、ネット通販が発達していて本当に助かりました。マンションの中でも一番荷物が届く家だったのではないかと思います。

ーネット通販には本当に助けられますよね。
ーお風呂はどうされていました?
お風呂は、入浴前後の双子たちの居場所に困りました。洗面所でどこに待機させておくか問題で。

ーワンオペだとかなりきついですよね。
そうですよね。ベビービョルンのバウンサーは、お風呂上がりに手早く座らせることができてよかったですね。

リビングには、ネムリラ(バウンサー)を置いていました。一時しか使わなかったですが、ベビーグッズはリサイクルにも回せるので、必要と思ったものは導入していました。

そのうち、大きくなってくると2つ同じものじゃないとイヤ!が出てきて…。

ーありますよね。双子あるあるですね。
西松屋やバースデイで洋服を買おうとしても、お気に入りの柄(はたらくくるま)が同じで。でも…同じサイズが一つしかないんですよ…(困)。

ー同じ柄・同じサイズを求めて、店舗をはしごすることがありますよね(笑)ーベビーカーはどんなタイプを使われていましたか?
我が家はエアバギーのココダブルを使っていました。
エレベーターの幅も通れるしオススメです。

ーエアバギーは人気ですよね!
ー最近はお子さんたちも少し大きくなられたかと思いますが、どのように過ごされていますか?
僕自身の都合がつくときは、土日のどちらかで妻が自由にできる時間を作るようにしています。

子どもたちが銭湯が好きで。よく行くスーパー銭湯には食堂もあるので、お風呂→ごはん→帰って寝るだけ!が、ベストコースですね。

二人とも車が好きなので、出かけることが多いです。羽田に飛行機を見に行くことも多いですね。(飛行場って道幅が広いので、双子ベビーカーでも移動しやすいんですよね!)


ー空港、ベビーカーフレンドリーなのですね。まさに双子育児を経験したからこそのエピソードがたくさんなのですが、丸井さんご自身は育休は取得されたのでしょうか?
僕自身が社長就任直後に、双子が生まれたこともあり、事業承継の真っ只中で、育休を取得することはできませんでした。
先代も世代的に「子育ては女性がするものだから男が育休で休むなんてありえない、若いのに社長になったばっかりでなおさらだ」という考えで。

1週間でもいいから育休を取得したかったので、その間妻には負担をかけてしまったことは、今でも後悔の1つとして残っています。

ー経営者として、育休についてはどのようにお考えですか?
当社は東京本社に30名、茨城工場に120名程度が在籍しています。
男女比は60%:40%ぐらいで、女性の産休育休は比較的取りやすいと思います。

一方で男性の育休はまだまだ取りにくく、先代の古い経営方針では1つの業務に専属している人ばかりでしたから、ローテーションなど不可能という状況でした。

私が経営するようになってから徐々に多能工化を進め、情報共有の対象を広げ、チームプレーで仕事をするように変化を促しているので、昔より多少は男性育休が取りやすくなっていると思いますし、少ないながら取得実績もあります。

ー今まさに改革されているところなんですね。
はい。やっぱり子育ては大変ですよね。
昔は地域や親戚が支えてくれていた面もあると思いますが、核家族化が進む中で、奥さん1人の子育ては限界だと思います。双子だから余計にそう感じている部分もあるかもしれません。なのでパパ育休も推進していきたいですね。

実は最近、社内結婚したメンバーから夫婦で育休を取得したいという申し出があり、ぜひ取得してもらおうと後押ししているところです。

ーご自身の育児経験がつながっているんですね。双子が生まれて、丸井さんご自身は父親として、経営者としてライフワークバランスについての考えは変わりましたか?

正直、双子が産まれる前はもっとバリバリ働くべきだというストイックな考え方でした。でも、子どもたちのおかげで考え方が変わってきています。

会社は社会を構成する1つの器として、子育てに理解があることが日本の発展のためにとても重要だと思っています。そのためには、経営者が率先して安心して子育てできる環境作りを進めることが大切だと。

現役で双子育児中の社長は少ないでしょうし、身をもって子育てをしているからこそ、特にそう思うのかもしれません。

やはり、家庭が幸福でなくてはいい仕事ができるはずがないと思うので、ワークライフバランスの質は企業の持続的成長のためにとても重要だと思っています。

とはいえ、まだまだ古い価値観をもったメンバーもいるし、子育てしながら働くメンバーへの配慮がたりないケースもあって。

社内でも様々な価値観を持ったメンバーがいるので、社員同士のコミュニケーションの機会を作ったり、会社の価値観に触れ、みんなで考える活動をしています。泥臭いですがこれが一番の近道と信じて、多様性を認め合う取り組みを行っています。

ーお子さんの誕生で丸井さんご自身にも変化があり、会社にも変化が生まれているんですね!

ー最後に、丸井さんは、昨年関東多胎ネットのクラウドファウンディングを支援してくださいましたが、なぜ賛同してくださったのでしょうか?

実際に多胎児の親になってみて感じたのは、双子育児に関連する情報がとにかく少ないことと、理解してくれる人の少なさに驚いたことです。

想像で「大変だよねー」と言ってくれる友人は多いですが、1日のわずかな可処分時間のうち、双子あるあるのトラブルで時間を取られたりすると、残った時間はほとんどありません。

あまりにもできることが少なく、一人の子どもを育てるキラキラした輝かしい子育てとはかけ離れた生活に打ちのめされていました。
 
そんな時に、この苦労を共有するには、やはり現役で双子の子育てをしている人たちで集まって話すしか無いという思いに至り、区主催の多胎育児イベントに参加してみたんです。

ーそうだったんですね。
ー1人のお子さんを育てている方と比べてしまう。というのもよく分かります。
イベントでは、半分は育児支援制度のお話。もう半分はグループワークでした。そこで、色んな双子ママさんの話を聞くことができて、気持ちが楽になりました。

「あきらめるしかないですよねー」
「うちもそうです」

という会話を聞いて、自分だけじゃないんだと思えました。
エリアが近くて、子どもたちの年齢も近いので、分かり合える。というのがありがたかったですね。

子どもたちに対して真剣に向き合いすぎる妻も、少し気持ちを解きほぐせたようでした。
その時出会った方たちとは今でも交流が続いています。

その時、運営をされていたのが関東多胎ネットのメンバーの方でした。
同じように多胎を育てるママさんがサポートしてくれていることに驚き、これはちょっと…と思ったんです。

多胎育児のサポートは、そんなに手厚くありません。
住んでいる区でも、産後1週間、赤ちゃんと一緒に病院に泊まれる機会がありますが、1回限りで産後すぐ使ってしまいました。

多胎育児の大変さを世間にもっと知ってもらう。わかってもらう。という意味でも関東多胎ネットさんのクラファンを応援しました!

機会があればイベントなどにも参加したいと思っています。これからも応援しています。

ありがとうございます!
区のイベントをきっかけに御縁ができ、サポートいただき心から感謝しています。


今回、普段なかなかお話を聞く機会のない、経営者×双子パパという丸井さんのお話をお聞きする中で、まさに双子を育てたことのある人しか発しないであろう苦労や苦悩が語られ、「わかる〜わかる〜」と同感の嵐でした。

また、企業の中で育休取得を社内浸透させる難しさもお聞きすることができ、いろんな価値観の方がいる中で、お互いに多様性を認め合う活動に取り組まれているのがとても印象的でした。

「泥臭いかもしれないけれど」と言いながら活動されているその一つずつが未来につながっている。お話をお聞きする中で、そんな希望を感じました。

そして私たち関東多胎ネットも、多胎育児の地域格差をなくすべく、これからも一歩ずつ活動していきたいと思います。


関東多胎ネットでは、今年度は以下の自治体の委託を受け、多胎支援事業に取り組んでいます。
東京都目黒区 多胎家庭支援事業 委託
東京都渋谷区 多胎家庭支援事業 委託
東京都台東区 多胎家庭支援事業 委託
千葉県佐倉市 多胎家庭支援事業 委託

プレファミリー講座:10月6日(日)10時~12時
ピアサポート活動:現在、準備中です!

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