妻の事

結婚して13年になる。ほぼ毎日顔を合わせ、会話をし、自分が両親と過ごした時間以上に彼女と一緒にいるわけだけど、実はまださっぱり彼女のことが理解できない。

今日は日本列島各地で部分日食が見られるという。
次回のチャンスは2030年との事。
僕も妻も皆既日食を追いかけて飛び回っていたこともあって、そういった天体現象はとても好きなのだけど僕と彼女のスタンスは随分違うのだと気が付いた。

日食は地球と太陽の間を月が通過する天体現象。地球からの月の距離がちょうど良いと地球から見た太陽の大きさと月の大きさがほぼ等しくなり、太陽を完全に隠す皆既日食になる。逆に月が遠いと太陽の輪郭が月からはみ出てしまい、金環日食と呼ばれる。これは肉眼では見ることが出来ない。このように完全に重なる日食は地球上で点のような位置(自転の関係で線状になるけど)でしか見ることが出来ないけれど、その周辺の地域でも部分的に太陽がかけているのを観察することができる。これが今日の部分日食。

といった内容を踏まえて、僕の場合その希少性や奇跡的な天体の条件に感動し、また次回の日食に思いをはせるのだけど。

彼女はそんなこと一切知らない。
今回も説明したら初めて聞いたことのように頷いていた。
もちろん説明するのは初めてじゃない。

それでも僕以上に今日の日食を見るための環境を整え、雲の動きに一喜一憂し、依然見た皆既日食の凄さ、感動を子供たちに熱く語り掛ける。

妻の情熱に若干引きながらやっぱり「面白いな」と思いながら欠けたアンパンマンの顔のような太陽を見上げる。

あれだけ騒いでいたのに、最も欠けている時間は台所で夕飯の支度をしていた。

やっぱりさっぱりわからない人だ。


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