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商社がトレーディングする意義ってなんだろうか

先日のロロノアさんのツイートが示唆に富む内容だった。

トレーディングで培われた関係性は時間の経過と共に徐々に深まり、両者の関係構築の主要な役割を果たした結果、投資機会が生まれた際に有利な条件で個別交渉に持ち込むことにつながるのではないか、というものである。

筆者はこの考えに対しては半分賛成であり半分反対である。

今回の場合、トレーディング先が事業会社であり、その会社が手掛ける新会社のパートナー招聘を検討する、という状況を想定する。この場合A社が事業会社と個別に交渉できるシチュエーションは以下の通りと推測される。
①A社が機能を果たす新事業が見込まれ、A社が株主と成ることが事業会社に取って望ましいとき
②機能的にパートナーをA社に絞る合理的な理由はないが、A社が新会社の設立のきっかけとなる案件を持ち込むか、または案件検討に至る文脈で深く関わっていたとき
③過去の案件で関係を構築しており、新会社への出資を「優先的に」打診されたとき

①に関しては、各社特定の業種・業態を除きこの様にA社差別化たらしめる機能は総合商社においては限定される。逆に①のような機能が発揮できる場合、トレーディングを経ずともパートナリングできる可能性が高い。
②に関しては、A社がトレーディングに携わる中で案件組成に貢献する様なパフォーマンスを想定する。この場合A社の貢献度が出資条件にある程度反映されるはずであり、この場合割安な出資参画が可能になる。この様な形から生まれる事業会社との協業案件は商社パーソン冥利に尽きると言えると思う。
問題は③だ。事業会社が自社の資金調達やリスクヘッジを目的としたパートナー招聘を企図しており、過去よりトレーディングに伴う情報交換により関係深化した親しいA社に優先的に声がかけられるパターンである。

③についてはあくまで事業会社の資金調達やリスクヘッジが目的であり、ことさらパートナーをA社としなければならい義理があるわけでもない。事業会社はA社が話に乗ってこなくてもその後他社と交渉できるので、事業会社が提示する条件は高めの釣り玉となり易く、良くてもマーケットレベルとなる。一方で声をかけられたA社はこれをトレーディングによって得られたinsiderな関係から生まれた商機と整理し、且つこの期を逃したら事業会社との協業を逸する機会損失となることを恐れ、多少のPremiumを呑んでも案件に飛びつく。このように投資した案件は多くの場合高値づかみであり、往々にして良い結果を産まない。

そのため、③による投資機会というのは単なる声かけであり、有益な投資機会にはつながり得ず、②のような案件形成に繋がる業界知見の習得と課題発見の機会こそがトレーディングを行う意義であるというのが筆者の見解である。

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