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【北京随想】散歩でマンホールに落ちた話

30年前の話、
北京でマンホールに落ちた。
東京では経験できない貴重な経験をした。

先日、SNSでこんな記事をみつけた。
「日本のマンホールの秘密に中国人驚き」というタイトル。

なにをそんなに驚くのか、と読んでみると、

隣国・日本の下水道のふたの下には、落下防止装置が付いている。
参考にすべきだ。

とつづられている。

添付された動画には、マンホールのふたを開けると中に転落防止用の金属製の柵が設置されているのが映っている。

中国のネットユーザーの間では、
「素晴らしい」
「これ、めっちゃ必要」
「同じアジア人でも差は大きい」
と、賛辞が並んでいる。

中には、
「地震や津波など災害時の教訓の蓄積から生まれたのだろう」
と、まっとうな分析をしているコメントもあった。

裏を返せば、中国ではまだそうした安全措置が普及していない、
ということだろう。

そもそも、なぜマンホールに落ちるのか。
その原因は2つある。

1つ目は、
マンホールにふたがない。
近郊の住民が、ふたを盗んで、くず鉄として売ってしまうからだ。
夜道で自転車がはまって大怪我をする事故もよくあるらしい。

道路脇の排水口でも、同じ事が起きる。

2つ目は、
ふたのへりが腐食していて、ふたの用をなしていない。
うっかり踏むと、ふたがパカンと外れて、人が中に落ちる。

わたしのケースは、後者。
北京大学にいた時、教員宿舎の前で散歩していたら、突然地面が消えた。
幸い大事には至らず、尻に青アザをこしらえた程度ですんだ。

しかし、これはとても危険だ。
再発防止をしなければと思い、翌日、大学の事務局に足を運んだ。

すると、わたしがよほど間抜けに見えたのか、
「これからは落ちないように気をつけなさい」
と注意された。

その後、マンホールが修復された形跡はない。

北京大学正門


万里の長城は、約3割がすでに消失している。
保存状態が良好な部分は、1割に満たないという。

風化だけでなく、人為的破壊も含まれている。
城壁の煉瓦を抜き取って持ち去る者がいる。
建築資材として売るためだ。

とすれば、マンホールのふたがないのも合点がいく。

「万里の長城、3割消失、600円でれんが販売も」(産経フォト 2015.7.3)


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