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六本目 『柔道衣の握り方の考察』

久しぶりの更新になりました"DJM"『ドイツ柔道部物語』

前回の記事は思っていたよりも反響があり、様々な柔道関係者の方々からご意見やご感想をいただきました。本当にありがとうございます。

さて今回は、前回に引き続き柔道衣の握り方についてさらに考察していこうと思います。

それでは参りましょう。「はじめ!」

Twitterでのご意見

前回の記事をTwitterの方でも掲載したところ非常に興味深いご意見をいただきました。いちよう参考までにリンクを貼っておきますのでまだ読んでいない方がいれば一度目を通してみてください。

その意見の中で組み方、握り方の考察に役に立ちそうなものを簡単にまとめました。

1. 脳内でどこの筋肉を支配しているのかということが概ね決まっており、親指側と小指側では異なった筋肉が働いている。
2. 人差し指と親指は小さなものをつまむなどペアとなって動くことが多いので二つの指の協調性は高くなっている。
3. このグループごとの筋肉と神経の働きの関係から、中指・薬指・小指に力を入れると脇が締まる。
4. 逆に親指・人差し指に力を入れると脇が開きやすくなる。
5. 脇が開くということは引き手側の小指を外側に向けて引き出す動作がスムーズに行える。
6. 逆に背負い投げなどの釣手を巻き込んでいく動作は中指・薬指・小指に力をいれた方がスムーズに行える。
7. 選手によってスタイルも違えば使う技も変わってくるのでこの握りが正解と決めつけて強制・制限するのは安全性を除いては検討すべき。

この意見をいただいたことで自分の中で握ることの理解がさらに深まりました。意見をくださった方ありがとうございます。これらの情報を踏まえてさらに握りについての考察をしていこうと思います。

握りと関節の関係性

「親指側グループと小指側グループとで働く筋肉が異なり、その関係性からどこに力を入れるかによって脇が開きやすかったり、締まりやすかったりする」ということを書きましたが、もう少し自分の感覚と合わせて説明すると、親指と人差し指でより強く握ろうとするためには肩・腕関節をさらに内旋させて脇を開くことでより力が発揮でき、逆に中指・薬指・小指では関節を外旋させて脇を締めることでより力が発揮できるという感覚です。
(腕を前に伸ばし手のひらを上に向ける関節の動きを外旋、手のひらを下に向ける関節の動きを内旋と定義しています。この定義が正しいかどうかはわかりません。ごめんね。)

このことからもわかるように、自分の行う動作によって指にかかる圧力の割合を変化させることで、その動作をより効率的かつ効果的に行うことができます。

例えば…

- 引き手で手首を返して柔道衣を伝って相手の釣手を落とす
- 脇を刺してくる相手の腕を外側から抱えて制する
- 腰技や巻き込みで引き手を自分の腰付近に巻きつけ固定する
- 背負投や小内刈りなどで釣り手を内側に巻き込きこむ
- 釣り手を活かすために肘を内側に振る
etc...

こういった動作の時には小指側に力を入れることで効率よく力を伝えることができます。

逆に…

- 小指を外側に返して引き手を引き上げる
- 引き手で相手の釣り手の手首に直接圧をかけて落とす
- ケンカ四つで下から持った釣手の肩関節を内旋させて相手の釣手の圧力をいなす
- 体落としや内股の極めの部分で釣手で相手の上半身を地面に押し込む
- 相手の肩車や捨て身小内などの技を上から潰す
- 大外刈りなどで奥襟を持って腕を返して相手の上体を崩す
etc...

このような動作を行う場合には親指側に力を入れることで論理的には効率よく力を伝えることができるとういうわけです。考えれば無限に動作ごとの力のいれ方を考察できそうですね。笑

簡単にまとめると肩・腕関節を内旋させる時には親指側外旋させる時には小指側に力を入れると無理なくスムーズに動作を行うことができるので、各選手の使う技・試合スタイル・状況に応じて関節の内旋と外旋及び指にかける圧力の割合を素早く切り替えることが重要だということです。

だから「中・薬・小指の三本で握っておきなさい」と教えるのは決して間違いではないんですが、それで全ての状況に対応できるわけではないので以上のような説明が必要だと思います。

それでも推したい中・薬・小指理論

これまでの考察からこの三本指理論が必ずしも正解ではないということが導き出されたわけですが、それでも僕は指導の時にはこの三本で握ることを推奨したいと考えています。(あくまで推奨であって強制でありません)

というのも前回の記事でも書きましたが、薬指は物を握り、把持することに特化しています。そして隣り合う中指と小指が道衣を把持している薬指を横から支え、固定することで握りの安定性を高めています。

これはつまり三本の指全てで道衣を力一杯握っているわけではなく、薬指では100%に近い力で道衣を握っているのに対して他の二本は少し力を持て余していて、まださらに小指側にも握りしろがあるということです。

ですので肩・腕関節を内旋するにしろ、外旋するにしろどちらにも素早く対応する瞬発力を生み出す余地があると言えます。(もちろん親指・人差し指は軽く握っている分内旋して握り込む方がより大きな力が引き出せそうではありますが。)

そしてこの薬指で握っているということは、小指側に力が入っており、脇が締まるということですから、脇が開いて相手に大きく崩されたり懐に潜り込まれるリスクも少なくなると考えられます。

ですので状況に応じて指ごとの握力の割合を切り替えることはもちろん重要ですが、基本的には薬指を中心とした小指側で握ることが好ましいのではと個人的には思っています。あくまで基本です。

まとめ

大野将平選手もよく言われていますが、「正しく組んで、正しく投げる」を体現するための基本がこの中・薬・小指での握りなのかなと思います。本人に聞いたわけでもなんでもなく自分の勝手な解釈ですが。笑

(そもそもこの「正しく組んで、正しく投げる」ってどういうことやねんと禅問答みたいなことを考える人も多数いらっしゃるかと思いますが、これについても追い追い自分の考えを書きたいなと思います。)

まあ要するに、100%で握るのは薬指だけで、親指側、小指側どちらにも握りしろを残しておくことが一番バランスが取れた握り方なんじゃないかというのが僕の意見です。

現行のルールではクロスグリップなど正統でない組み方はすぐに指導がきますし、外国人選手は必要以上に接近戦を仕掛けてきたり、組み際の技を連発してきたりもします。

そのことから襟にしろ袖にしろ自分の両手で持ったところ(持っても指導を取られない場所)を把持できるというのは日本人選手にとっては大きなアドバンテージになります。(ちゃんと二本組んで柔道ができるから)

自分の組手を把持しつつ、相手のどんな仕掛けやスタイルでも対応して投げてしまう大野選手すごいなっていう話です。

まあ少し話は逸れましたが、組み方ひとつとっても柔道は奥が深すぎて一生かけても柔道の全てを研究し尽くすことは難しいでしょうね。そもそも選手によっては練習してきた環境もその背景もなにもかもが違いすぎて何が正解という答えはないのかもしれません。

つまり我々指導者の務めとは、自分の経験や自分が教えてもらったことを絶対として選手に強制するのではなく、技や戦術の基本的理念を正しく理解し伝え、選手の選択肢と可能性を広げることなのかなあと思う今日この頃でした。

長くなりましたね。途中から自分でもちゃんと文章を書けているのかわからなくなっています。笑

それでは今回はこのへんで。

それまで。ではまた。

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