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五本目 『柔道衣を中指・薬指・小指で握る理由』

約一週間ぶりの更新となりました『ドイツ柔道部物語』通称"DJM"
今回は柔道家なら一度は聞いたことがある道衣の握り方についての僕の考えを書いていきます。あくまで僕個人の意見なので「ほえ〜こんな考え方もあるんやな〜なるほど〜」ぐらいの気持ちで読んでください。

それではまいりましょう。「はじめ!」

なぜこの三本?

よく言われるのが、
「中指・薬指・小指でしっかり握り、人差し指・親指は道衣に添える程度にすることで手首を自由に使えることができる。」
ということです。

これはたしかにその通りで、握力テストのように指全体で道衣を力一杯握り込んでしまうと、手首が固定され可動域が狭まるだけでなく、すぐに前腕がパンパンになって握力がなくなります。

さらにいうと手首が固定されてしまうと、手首の返しが使えなくなるので、道衣使って組手を切る、コントロールする、崩す、ブロックする、といったことが難しくなるだけでなく、技の瞬発力がなくなるなどのデメリットが多くなります。

このような理由から中指・薬指・小指の三本で道衣を握るということは納得できます。が、根拠としては少し不十分かなと思います。すみません面倒くさいやつなんです。

というのもなぜこの三本でないといけないのかという理由が欠けているからです。

ドイツの子供からの疑問

ドイツの15歳以下の指導をしていると、道衣の握り方がむちゃくちゃな選手は本当にたくさん見られます。だからこれまでこの三本理論を教えていたのですが、ある時一人の選手が僕に言いました。

「なんでこの三本じゃないとダメなんですか?僕は違う握り方の方が力がでます。」

その時はなぜこの三本なのかという理由が言えなくて先ほど上に書いた理由を説明して慣れるまで続けてみようと提案しましたが、確かにその三本である理由を自分で考えたことがなかったのです。

「自分の指導者にそう教えられたから」というのはなんの根拠にもならないので絶対に言えません。そんなことを言うと中学生の子供たちに柔道ディベートで負けてしまいます。笑

ドイツの教育はとにかく意見を言え!自分の考えを言え!なので練習中もバンバン質問が飛んで来ます。それに答えられるだけの知識と言語力が必要になるので今でもそうですが指導者を始めたての頃は本当に苦労しました。

しかしこの環境があったからこそ、「指導者としてもっと勉強しなくては!」というモチベーションにもつながっているのでそこは結果オーライです。子供達から学ぶものは本当に多いですね。

とまあ少し脱線しましたが、その日からその疑問に対する僕の悶々とした日々が始まるのでした。

"Connecting the dots"

これはかの有名なスティーブ・ジョブスの名言で、日本語では 「点と点をつなげる」 と翻訳できますが。この場合では、過去の経験が、その当時は思いもよらなかったことに活かせるという意味合いで使っています。

ある日いつものように家でドイツ語の勉強をしていた時、とある記事に出会いました。それはドイツの音楽家ロベルト・シューマンに関するもので、ざっくり内容をまとめると

シューマンがピアニストとして活動中、薬指が他の指に比べて動きが悪い→薬指に特別なワイヤー装置をつけて特訓→指怪我する→やめて作曲家になる→実は薬指は他の指とは違って握ることに特化した指でした。ちゃんちゃん。

みたいな感じです。これ読んだ時に体に電流が走ったような衝撃がありました。え、薬指って握りに特化した指なん!?

そこですべての点と点が繋がって線になったわけですね。つまり、

薬指が握りに特化しているから特にその指に意識をして道衣を握る、そして薬指に隣接している小指と中指で道衣を握る面積を広げることで道衣を把持するための安定性を高めている。

これならば中・薬・小指の三本理論がより論拠に富んだものになりうるわけです。

指の機能テスト

ここでみなさんに一つテストをして欲しいのですが、手のひらが下になるように手を机の上に置いて、各指を一本ずつ順番に上に上げていってみてください。

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おそらくほとんどの人が薬指が一番上げにくいと感じたのではないでしょうか。これは薬指が握りに特化しているが故の結果だとその記事には書いてありました。

特に人差し指や中指というのは器用に動かすことができ様々な機能が備わっているのですが、それに比べて薬指は能力を握ることに全振りして他の機能は全部Fみたいな感じらしいです。

一点特化っていうのはなかあかロマンがあっていいですね。これまではその機能の悪さから結婚指輪以外ではあまりスポットライトを浴びることのなかった薬指ですが、少し薬指のことが好きになりました。笑

さらなる根拠

このロベルト・シューマン記事を読んで参考にしてからは説明の説得力が増したのか、みんな三本理論に納得してくれているようです。(まだまだ論拠としては不十分かもしれませんが)

さらにこの薬指把持力最強説を推し進めていくうえで最近気になったのが、手にできるマメです。みなさんにも聞きたいのですが筋トレで背中の引く系のトレーニングをする時(チンニング、デッドリフト、ラットプルダウン、綱登りなど)手のひらのマメってどの指に一番できやすいですか?

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今は全然トレーニングしてないんで見せるのも恥ずかしいくらいちっちゃいマメしかできてないんですが、僕薬指が一番マメができやすいんです。

これってつまりバーベルなり鉄棒なりを握る時に、薬指に一番負荷がかかってる(=ここで一番力強く握っている)ってことの根拠になるんじゃないかと思ったんです。

こういう仮定の提起からいろんな実験がされて、科学的根拠に基づいてさまざまな証明がされていくんで、今後のドイツでの学生生活でこの把持力についての論文を書いたりしても面白いのかなと思ったりもしてます。

まとめ

てなわけで今回は柔道衣の握り方に関する僕の考えを書いたわけですが、これはあくまで僕個人の見解なのでこれが正解というわけではありません。

でも組手でいいところを持ってもですぐに切られる/落とされるなどの悩みを抱えている方は一度薬指に意識を集中させて三本指で道衣を握ってみるってことを試して見てもいいんじゃないでしょうか。案外小さなことがパフォーマンス能力を大きく変えるきっかけになったりします。

意識をしながらその動きを繰り返すことで意識した部位の神経に脳から細かな信号が送られ、その部位の機能が発達するという実験の結果もあったりします。可能性があるかぎりやってみる価値はあるはずです。

それでは今日はこのへんで。

それまで。ではまた。




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