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【有料】上場準備会社(特にベンチャーやスタートアップ)の常勤監査役就任を考えている方へ

最近スタートアップ(上場準備会社)で、女性会計士が監査役に就任する例が増えています。働きやすさ、役員としての就任であること、会計専門家としての知見が活かせるといった背景から、就任希望者も多いです。先日、監査法人を卒業する女性会計士の方から、「今度上場準備会社の監査役に就任するのでお話を聞かせてください」との依頼がありました。私もそういう立場になったのかと感慨深く思うとともに、他にも同じようなニーズがあるだろうと思いまして、せっかくなのでまとめてみました。
以下は自論となります。

自覚いただきたいこととして、監査法人や、大手事業会社の勤務経験からのご就任の場合、おそらく、今までの人生で想定していなかったことが普通に日々発生します。
そのことに対するご認識がないままに、思い付き?勢い?でご就任されているのではと心配になることがあり、余計なお世話ながらこのような記事を書く次第です。

書いていたらつい6300字を超えてしまいました。
検索がかからないようにしたいことと、本当に必要とする方にお読みいただきたいという意図から、有料記事とさせていただきます。


背景:双方(+エージェント)のニーズ一致

常勤監査役を必要とする企業側と、女性会計士側、それぞれのニーズについて見てみましょう。

企業側として求めるものは、表向きなものと本音それぞれありますが

1)会計専門家として
コーポレートガバナンスコードでも、財務会計に精通した方を1名は監査役にとされていますので、一人は入れておきたいとのニーズがあります

2)女性役員比率を上げたい
ダイバーシティーの観点から、女性役員比率についての社会的要請があり、監査役であれば同じ役員でもはいってもらいやすい

3)年配の男性よりは女性のほうがあたりがやさしそう
男性の場合、会計専門家として、定年後の金融機関出身者が候補として挙げられることが多いですが、スタートアップの経営陣は30代前後と若いこともあり、親子のような年代差になってしまうことも。
同じ親子でも、女性会計士は、未整備な環境を「母のような」感覚で見守ってくれるのではとの期待があるようです。

4)役員報酬の水準
上場準備会社の場合、なかなか監査役に高額は役員報酬を支払う余力がない場合が多いです。東京と地方では差があるようですが、ボリュームゾーンは500万円から700万円などではないでしょうか。女性の場合、世帯主でなかったり子育て中でフルで働けない条件であることから比較的抑えめの報酬でも就任いただけるのではないかとの期待があります。

対する女性会計士側としては

1)ボードメンバーとして専門性が活かせるポジション
執行側で入社した場合、管理職や主任などからのスタートとなることがおおいですし、仮に役員待遇であれば成果に対する厳しいプレッシャーにさらされます。同じ役員でも監査役の場合、監査法人における監査の延長性ンに近い感覚で、専門性をボードメンバーとして発揮することができそうという期待があります。

2)柔軟な働き方
監査役は役員でタイムカードにしばられません。家事育児、介護等のライフイベントとの両立がしやすい働き方を実現しやすいと言えます。
また、情報がクラウド化されていたり、会社自体がリモートワークを推進している場合は監査役監査もリモートとなり、自宅からの業務も可能という状況下でキャリアを継続することができます。

3)兼務についての許容度の高まり
数年前までは、「常勤監査役の常勤性」は他社を兼務しないことだとされていましたが、ここ数年その基準が緩和されているようです。一つの会社しか知らないよりは、兼務したほうが他社事例を知ることができるというメリットもあります。但し、幹事証券のご担当者のご意見にもよるとの情報もありますし、一社当たりの負荷も状況によって異なりますから、一概に何社まで兼務可能、というわけではなさそうです。

4)報酬
監査法人時代よりは下がりますが、一定程度の確保が可能です。また、「常勤」ということで社会保険に加入できる、会計士協会の会費を負担してもらえるといったベネフィットもあります。従業員に付与されるストックオプションは税制の適格性の観点から対象外ではありますが、有償でストックオプションを発行してもらえれば、将来株価上昇した場合にキャピタルゲインも期待できるといったアップサイドもありえます。

という、双方のニーズの一致があり、女性会計士を常勤監査役に迎える上場準備会社は増えています。

上記に加えて、人材紹介会社経由の場合、紹介会社のインセンティブ、というさらなるニーズが影響してきます。
特に常勤監査役の交代案件で、前任監査役がいる場合は何らかの交代理由が存在するはずですが、エージェントから「本当の理由」は教えてもらえないことが多いです。
もちろん、体調不良やご家庭の事情等の合理的な理由が大半ですが、最近は「リモート監査役」も増えてきており、近隣地域の方であれば、ああ、あの会社ね、決まらないのは○○の理由だよ、という事情をよく知っているような会社でも、遠方の方だとよさそうに思ってしまいお受けされるケースもあるのではと推測します。

もしかすると詳しい事情をエージェントもご存じではないかもしれません。
あの会社、実は○○(役職)がパワハラで有名で・・・なんて話はよくありますが、普通に面談していたらわかりませんしね。

常勤監査役の経験があれば、上場会社の社外役員になれるか

女性会計士側のニーズで、常勤監査役はワークライフバランスを保ちながらキャリアアップが可能、という期待があろうかと思います。
特に、昨今人気の「女性(上場会社非常勤)取締役、監査役」については人気が高く、どうやったら就任可能なのか、多くの方が調査し真剣に考えています。もしかするとこのnoteも情報の一つかもしれません。実際に聞かれることも多いです。

社外役員公募案件によっては、「他社で監査役の経験があること」という条件を付しておられる場合もあり、非上場会社の監査役経験もその一つではありますが、結論から言うと、上場準備中の会社で就任して、仮に上場を達成した場合であっても、みなさんが希望される非常勤役員のオファーがそれだけの理由で来ることは、おそらくない、と思われます。つまり、条件付き、ということです。

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