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けいおん顧問相談室 その12

期間限定のバンド企画の例として、1年生と2年生の半々で構成されるバンドを短期間結成して活動させる。という話をしていましたが、それに続く提案です(その11からの続き)。

H「現在活動しているバンドを解散させることなく、手軽に実施できる 期間限定特別バンド のやりかたがあります。手軽なうえに、プラス効果がかなり期待できます。」

E「ほう、どういったものでしょうか。」

H「今活動しているバンド内で、全員が担当パートを交替して、楽曲を練習して発表します。バンドチェンジではなくて、パートチェンジ ですね。
 4人バンドだったら、ボーカルがドラムへ、ドラムがギターへ、ギターがベースへ、ベースがボーカルへ それぞれパート担当を変えます。もちろんバンド内で話し合って自由に決めさせます。

E「全員がこれまでにやったことのない楽器を新たに担当するんですか。」

H「そうです。やりはじめは苦労するでしょうが、ギター以外は案外すぐに馴染んでくれます。
 同じバンド内にその楽器の経験者がいるわけですから、その子に教えてもらえますからね。ただギターだけはコードを押さえれるようになるまで上達するのに、他のパートよりも長くかかるかもしれませんが。」

E「それは部員にとったら新鮮な体験でしょうね。」

H「もともとはドラムをやりたくて軽音楽部に入部してきたけれど、人数の調整で仕方なくボーカルをやっています、なんて子も絶対いるはずなので、案外、今まで隠れていた才能が開花するかもしれませんよ。」

E「楽器は貸し借りさせるのですか。」

H「そうですね、その期間だけはメンバー間で貸してあげる、特にベース、ギターは、この企画のためだけに新規で購入するのは負担ですからね。大切に扱う約束をしたうえで、メンバー同士で貸してあげればいいと思います。」

E「今までやったことのないパートをさせることに意味はあるのですか。」

H「もちろんです。自分がこれまで専門的に担当していた楽器とは違う他のパートを短期間経験することで、そのパート担当の苦労を実感できるようになります。
 例えば、ボーカルしかやってこなかった子も、楽器の練習というのは思った以上に大変なんだな、と実感することは、今後、もともとのボーカル担当に戻ったときに役立ちます。
 結果的にチームワークが向上して、アンサンブルの息がより合ってくるようになる効果が見込めます。

 野球でいうと、守備のレギュラ-ポジションを交替して試合をするようなものですよね。
 そんなことをするとチームの実力としては低くなってしまうわけですが、後々のチームワーク強化 という面でいえば、必ずプラスに働きます。
ユーティリティプレーヤー(複数ポジションをこなす選手)が多いのは作戦上有利ですしね。」

E「案外、自分の知らなかった才能に本人が気づくかもしれませんね。」

H「そうです。歌わせてみたら意外と上手だった、とか。ドラムやらせてみたらリズム感がすごくある子だとわかった、とか。
 部活動はプロミュージシャン養成の場ではないのですから、複数パートの経験というのは、生涯音楽に親しむ素地を作る、という面からもぜひ実践してほしいですね。
実際、大阪の軽音楽部の中には、入部するときから、複数のパート経験 をル-ルとして約束させているクラブもありますよ。」

E「それはハードルが高そうですね。」

H「1年生で入部して、最初に第1期のバンドを組みますよね。
 秋の文化祭のころまではそのバンドが続くのですが、10月ごろに、その第1期バンドは解散させて、第2期の新バンドを組みなおすわけです。
その際に、全員がこれまでとは違う楽器を新たに担当するわけです。

 もともと入部してきたときに第一希望だった楽器パートがドラムだったのに、人数調整の結果、ドラムをあきらめてギターをやっている、といった部員にとっては、このシステムは有効です。」

E「それでその第2期バンドはまた半年ほど継続するんですね。そのあとはどうなりますか。」

H「2年生以降は、1年の時に2つ経験したパートのどちらかを選んで、その楽器に専念していく、という感じになります。
 部員のあいだで希望パートに偏りがあったら、バンドをかけもちして担当する子も出てくるかもしれませんが。そのあたりのことは部員の話し合いにまかせます。」

E「部員の個人負担が2倍に増えることになりませんか。経済的にしんどい部員も出てくると思いますが。」

H「ギターからベース、ベースからギター というパターン以外はそれほどの出費増にはならないと思います。それでも、入部時にはていねいに説明して、きちんと楽器持ち替えのルールを理解してもらわないとダメですけど。
 
 まずは、さきほど言いました 同じグループ内で楽器を交換する、という試みから始められることをお勧めします。」

E「学年の垣根をとりはらった上で、担当楽器もチェンジして、期間限定のバンドを組む、というのはやってみたいですね。」

H「複数パート経験の効果は、すでに実践されているクラブで実証済みですので、ぜひ2年の部長生徒さんに提案してみてください。
 キーワードは、隠れた才能の発掘、それと、他のパートの気持ちを知る の2つです。
 発表の機会(部内ライブ)を設定したうえで、期間限定の企画ということにすれば部員達も賛成してくれると思いますよ。」

E「私たち高校教員でいうと、1日だけ教科を交換して授業をやるようなものでしょうか。もちろん免許がないからあり得ない夢物語ですけど。」

H「私は英語教諭の免許保有者ですが、一日だけ教科を代わってもいいと言われたら音楽の授業をやってみたいですね。たぶんめちゃくちゃ苦労すると思いますし、生徒は大迷惑でしょうけどね。」

E「私は体育の水泳の授業を担当してみたいですね。でもたぶん1回で音を上げることでしょうね。体力が持たないと思います。」

H「でもね、自分の専門外のことにチャレンジしてみるって、考えるだけで楽しいじゃないですか。楽器交代することで、クラブ内で何か変化が出てくるか、実践された折にはまた教えてください。」

E「また報告しに来ます。ありがとうございました。」



  

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