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全ての教員にオススメの韓国ドラマ「ブラックドッグ」

 NHKには毎月、地上波、BSセットで 我が家の視聴実態からすると法外に高い金を払わされているのだが、だからといって「受信料のモトをとるためにNHKをもっと積極的に見なければ」という気には全くならない。
 地震とか台風とかの災害が発生したときには、NHKが一番情報提供が早い(ような気がする)ので、NHK流しっぱなしにすることが多いのだが、普段は能動的に見ようと思える番組は ほぼ皆無である。

以前はサタデースポーツ、サンデースポーツはよく視ていたのだが、最近、解説者やゲストのワイプ画面が画面右上に出るようになったので むかついて、視聴をやめた。


  でもNETFLIXは「愛の不時着」が見たくて自分の意思で加入したものだから、「せっかく加入したのだから、いいドラマや映画に出会いたい」という気持ちから、一日一話のペースで(韓国ドラマを)視聴するのが習慣になっている。

 7月末にコロナ陽性で自宅内隔離になった時は「調査官ク・ギョンイ」をスマホ画面でくりかえし見てヒマをつぶしていたのだが、8月になってようやく子供部屋から脱出。
 「さて次はどれにしようかなー、何でもいいんだけどなー。ゾンビものとか、えぐい描写の殺人事件とかは勘弁してほしいけどな。」

結果、適当に選んだのが「ペーパーハウスコリア」。

 ところが、これ6話でいったん配信終了で、残り6話は半年後にまとめて配信するらしい。え、そんなのありですか。めちゃくちゃ面白いのに。
 本家スペイン版は全編配信されているのだが、ストーリーが知りたくて先にスペイン版を全部見てしまうと、今度は韓国版を見る気が失せるかもしれないので、そこはぐっとがまんして、別のドラマを探すことに。

 そこで目に入ってきたのが「ブラックドッグ」というタイトルのドラマ。ブラックドッグといえばレッドツェッペリン。私がサル中学生だったころ、その「得体のしれないかっこよさ」に圧倒された曲だ。
 
 もしかしてこのドラマ、主題歌はレッドツェッペリンのブラックドッグで、挿入歌は天国への階段、レインソング、聖なる館、移民の歌なのか?

 という一抹のスケベ心を抱いて見始めたんだが、まあ全然違いました。

 「ブラックドッグ」は韓国の私立高校に赴任した女性非正規教員コハヌル先生の教員生活を丁寧に描写したドラマです。
 何で「ブラックドッグ(黒い犬)」というタイトルなのかは、ドラマの中で幼少の頃のエピソードが出てくるので、ここでは割愛する。

 プロ棋士の夢破れて一流商社の会社員に転身する「ミセン」と対比されているようだが、「ブラックドッグ」の舞台は高校の職員室や校務分掌の部屋なので、「ミセン」のようなダイナミックさはありません。
 
 また「ごくせん」や「金八先生」のような、問題を起こした生徒を守るために、スーパー熱血教師が体を張って管理職側と戦う、なんていうプロレス的場面もございません。

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 「同じ科目を担当するパートナー教員と、どう折り合いをつけていくか」
 「成績上位層を伸ばし、なおかつそれ以外の生徒たちからも不満が出ないようにするにはどうしたらいいのか」
 「受験に役立ち、なおかつ塾にはできないような学校ならではの授業とはどういった形か」
 「入学から卒業までの3年サイクルを終えた時に教師が抱く、仕事に対するマンネリ感(スランプ)をどう打破していくか」               「教師は自分の家庭や家族を犠牲にしても生徒のために頑張るべきなのか」

 そう、教職員からの視点で進んでいく教師ドラマなのです。
だから、ちょっとでも教員として勤めた経験がある方にとっては「あるある」だらけで 細部まで面白いんだけど、それ以外の人にとってはかなり地味で退屈な印象のドラマかもしれません。

 コハヌル先生は非正規教員として採用されるんですが、日本の学校におきかえると非常勤講師ではなくて、「常勤講師」にあたります。だから、「進学部」(日本の進路指導部というよりは総務部に近い役割)という分掌の仕事も任されるし、3年5組の担任にもなります。

 別に、職場内で陰湿ないじめを受けるとか、教室内で不可解な殺人事件が発生する、なんてこともなく、3月1日(韓国の新学期)から、大学受験まで淡々と時間が過ぎていきます。

 その過程でコハヌル先生は、「国語の教材作成」やら「進学説明会」やら「定期考査の問題作成」やら「進学補習」などを初体験していきます。

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 同僚には非正規採用の先生やら正規採用の若手先生やら、ベテランの分掌長の先生やら、定年まじかの先生やら、いろんな立場の先生方がいますが、職員室ではみんな同等の発言権を持つ「先生」として扱われます。

 これこそがタテ社会ではない、教員の職場の特殊な環境でして、「教師なんか、世間知らずで民間企業じゃ使い物にならん」と揶揄されるのは、これが原因なのでしょうが、「評価される者同士の競争」は存在するけれど「自分だけが出世してのし上がっていく」という人はまずいません。なぜなら、ベテランと若手の垣根、教科間の垣根をとっぱらって 教員全員が一致して協力していかないと、生徒や保護者に立ち向かっていけないことを それぞれの教師はわかっているからです。

 だから、それぞれに教師としてのプライド 教科指導のプライドは強烈に持ってるんだけれど、とにかく他の教員と協力し合って現場の課題を乗り切っていかなくてはいけません。唯我独尊ではやっていけないのが今の学校です。

 日本の高校と韓国の高校ではシステムは違うけれど、授業を受け持つ高校教員としての悩みや思いは一緒なんだなーと思いつつ、コハヌル先生の教師としての成長ぶりが頼もしく感じられ(言動がどんどん教師らしくなっていく) いつの間にか沼にはまっていく自分なのでした。  

 職員室や教員の仕事の描写がやたらリアルなのですが、このドラマの脚本家が、私立高校での教員経験がある方だ、と知って納得。

 これから正規教員を目指そうという講師の方、そろそろ10年目研修の中堅、分掌長やってるベテランの人、そして定年退職した元教師のみなさん。「職員室」を経験した人にはぜひ視ていただきたいドラマです。

 

 

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