見出し画像

私のフォークギターの師匠ジムクロウチ

 ここ数年、フォークギターがそこそこ売り上げを伸ばしているらしい。エレキギターではなくフォークギターである。
 あいみょんの影響である。みんな「マリーゴールド」の弾き語りにあこがれているわけだ。素晴らしい。メーカーはあいみょんにひれ伏さなければいけないな。

 私がフォークギターにハマったのは中学1年生の時、大阪万博の喧騒も去って(私は吹田市に住んでいたのです)、時代はフォークブームの真っ最中。吉田拓郎が「結婚しようよ」の大ヒットでフォーク界のプリンスと呼ばれていたころ。エレックレコードというレーベルがあって、吉田拓郎の他には泉谷しげるとか古井戸が看板アーチストだった。
 親にこずかいをせびって1800円のLPレコードを買い、月刊ヤングギターの奏法レッスンみたいなページを参考にしながら、ひたすら練習練習。「ギターがうまくなれば、俺も吉田拓郎みたいに女子にモテモテになれるんだ。」と信じて。

 そんなある日、クラスの友達から「ジムクロウチって知ってるか?ルロイブラウンは悪い奴っていう曲がアメリカで流行ってるんやで。」と聞かされた。
 その時は ふーん で終わったのだが、それから間もなく「ジムクロウチが飛行機事故で死んだ」というニュースをFMラジオの番組で知った。
 確かNHKのテレビ番組で彼の事故直前のライブコンサートの映像を紹介していた。30分くらいの番組だったが、ラジカセを台所のテレビの前に置いて音声だけ録音しながら、テレビ画面を食い入るように見ていた(YOUTUBE で観られるのもこの時の映像だと思われます)。
 それで、また親にこずかいをせびってジムクロウチのベストアルバムLPを購入して、毎日ギターの練習に明け暮れる。

 そのころは、吉田拓郎師匠はフォークギター弾き語りシンガーから脱却してロックバンド路線にサウンドが変わっていた。「ペニーレーンでバーボンを」を発表した頃だ。だから私のフォークギターの師匠はジムクロウチに代わったのである。

 しかしながら、サイモン&ガーファンクルの楽曲とは違って、ジムクロウチの歌は、歌詞の英語の内容がおバカな中学生には理解不能なものが多すぎた。レコードの歌詞カードから大学ノートに英語を書き写して、それにコードネームを記入して歌う練習をするのだが、辞書でいくら単語を調べたところで、歌詞の意味がわからない。
 「ま、もっと上の学校に行って、詳しく英語を習ったらわかるようになるんだろう。今はテキトーでいいな。雰囲気だけマネしとこう。」とその時は軽く考えていたのだが、結局、オッサンになってもいまだに歌詞のニュアンスがわからない部分がたくさんある。

 例えば、I GOT A NAME という曲。「曲がりくねった道路沿いに生える松の木のように、僕には名前がある。」って、冒頭から??である。道路沿いの松の木それぞれに名前がついているのか?アメリカにはそんな州があるのか?
 力強いギターのストロークとメロディが感動的なサビのフレーズは、「ハイウェイを飛ばす。ハイウェイを走りつづける。人生が追い越していかないように、前へ進むんだ」
 Moving ahead so life won't pass me by
  高校で so (that) S  will V   S がVするように という構文を学習したものの、やっぱりこのフレーズの意味するところは謎のままであった。人生が追い越していかないように とはどういうことでしょうか。 納得した人生を地に足付けて生きる、ということでしょうか。

 でもまあ、「なんだかわかったような顔でつつがなく行動してるけど、実際の意味とか意義はわかってないやん」なんてことは大人になってもいっぱいありますよね。冠婚葬祭のマナーとかさ。お葬式なんか、皆、自信なさげで、ほかの人がどう振舞ってるのか観察し合ってるもんな。

 ジムクロウチの楽曲でお薦めする曲は絞りに絞って、 I GOT A NAME , OPERATER, TIME IN A BOTTLE にします。YOU TUBE で聴いてみてください。本当にいい時代になったものです。
 
 I GOT A NAME には、「父親が果たせなかった夢を抱えて僕は生きている」というニュアンスのフレーズが1番で歌われています。ここの部分は、梨泰院クラスのパクセロイを彷彿させます。
 六本木クラスの挿入歌として I GOT A NAME を使ってくれたら、ディレクターさん尊敬します。  

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?