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感性が死んだ日

寒いですね。

凍てつく寒さとはこのことだと言わんばかりに冬将軍が蹂躙している今日この頃。

冬将軍は私、佐野寛のお財布にも影響を及ぼしており甚大な被害が出ています。

口座の残高を見るとお腹が痛くなってその日1日私から笑顔が消えるレベルにお金がありません。

ってことで佐野は現在寸暇を惜しんでウーバーイーツ配達に勤しんでおります。

凍てつく寒さの中、歯を食いしばって原付を運転しています。

奥歯を嚙み締めすぎて顎関節症になるくらい寒い思いをしながら配達をしています。

そんな環境で働いているもんだから心が本当に冷えてしまいます。

どんなに厚いダウンを着込んでも

機能性の高いネックウォーマーをしても

貧困と原付を運転する際に吹き付ける寒波は

お構いなしに私の心に襲い掛かります。


するとどうでしょう。

今までは確かにあった「なにかに感動する心」が徐々に縮小していくのです。


宅配先で元気に玄関から出てくる子供。

今までは

「かわいいなぁ。」

「この子達のためなら多少辛くても宅配頑張れるなぁ」

とか思えていたけど

今は

「俺より身長が低いな。」

「こんなハイカロリーなものばかり食べて情けないな」

とか考えるようになってしましました。


お店に料理をもらいに行く時も

今までは

「美味しそうなお店だな!今度、僕も食べに来ようかな!」

とか

「優しい店員さんだな!!僕もこんな人間になろう!目標をくれてありがとう!尊敬します!」

とか考えてたけど

今は

「こんな高い温度のところにいるなんて・・・アイアイかよ」

とか考えてしまう始末。


でも今思えばこの時はまだ私の心にも感性ってものがあったんだなと思います。

あの時。

あの事件が。

私から感性を奪いました。


12月下旬の出来事です。

その日も極寒の中、原付を走らせ

ウーバーイーツ配達員として働いていました。

7件ほど運び、4000円ほど稼いだので

「まあ、こんなもんで帰ろう。寒いから」

とか1人で呟きながら原付を走らせていたその時でした。

「そこの原付バイク~。」

聞いた瞬間に背筋が凍る音質。

限界まで冷え切っていたはずの身体がもう1段階冷たくなりました。

警察です。

右斜め後ろを走る乗用車に乗っていたのは警察でした。

所謂、覆面パトカーってやつです。

心当たりはありませんでした。



気を遣いすぎなほどに一時停止してるし

信号も2段階右折も無人だろうが関係なく守っている。

しかし、警察だって暇じゃない。

「寒いね!気を付けて帰ってよ!」

などと声をかけただけじゃないはずだ。


警察に言われるがままに路肩に原付を停めた。

「ちょっと~~スピード出しすぎぃ~~~」

かなり距離感が近いポリ公だった。

原付が出していいとされる速度は30キロである。

その警察曰く

私の原付が30キロを超えるスピードで走っていたから声をかけたというのだ。

私としたことが・・・・


でも・・・・

この警察官の感じ。


見逃してくれそうなテンションであることが感じ取れた。

終始笑顔だし。

原付の車種聞いてきたりなんだか楽しそう。

「とりあえず免許証見せてもらえるかな?」

来た。

これは注意だけで終わるやつかもしれない!!


「うん。直近2年間で特に違反を犯してなければ、一旦2点引くんだけど、ここから3カ月間無違反なら点数は戻るんで。」

よしよし!!!

点数が一時的に引かれるだけなら!!!!


「あ、あと1万円ね~」


え?


今、なんて??


「アトイチマンエン・・・・」

なに?

なんか軽いお願い事感覚で1万円請求された??

靴揃えといて~みたいな感覚で

1万円納めといて~

ってお願いされた??

嘘しょ??

今日、こんな寒い中配達して

4000円稼いで

10000円取られるの?

マイナス6000円??

カイジでもないよ?こんな労働。


手と足の指の感覚がなくなったのに追加で

心の感覚がなくなった。

視界も徐々に狭くなっていく。

ぎゅーーーって視界が小さい丸しかなくなる感覚。

瞼は重くなり

情報を少しでも遮断したい焦燥感。

鼓動は早くなり

耳の後ろが激しく脈打った。


警察官は終始笑顔だった。

そりゃそうだ。

こんな滑稽な話ない。

こんな気候でも働くしかない、見るからに金を持ってないウーバーのでっかいリュックを背負った成人男性から1万円むしり取ったのだ。

愉快で仕方ないだろう。

今日の収入が4000円ってことを知ったら腹千切れるくらい笑うんじゃないだろうか。

お笑い芸人としてここはカミングアウトすべきだったか。

「ちょっと~~今日4000円しか稼いでなくて10000円取られたら

こんな寒い中働いてマイナス6千円って勘弁してくださいよ~~」

とか言いながら真顔で首かきむしって死んでやろうかと思った。


「それじゃっ!安全運転で!!」

警察官はそう言い残してその場を去った。私はどうしてもすぐに原付に乗る気になれず近くのセブンイレブンの中を7周くらいした。でっかいリュック背負いながら。

雑誌コーナーで落ち着こうと思って立ち止まった。

でもおかしい。

なにがどの雑誌か判別付かないのだ。

あまりのショックに脳の処理能力が一時的に低下してるみたいだ。

全ての雑誌がなんとなく色がついてる紙にしか見えない。

雑誌との距離感もイマイチつかめなくて手に取ることを躊躇ってしまう。

家に帰るしかない。

ここまで心が限界である人間が

家の外にいることは危険だ。

かなり真剣に、自分がなにをしでかすか分からなくて怖かった。

家までは慎重に帰った。

視界が狭いのだ。

30度ほどしか見えない。

残り330度が真っ暗だ。

部屋についてシャワーを浴びる。

このシャワーから出てきている水が冷たいのか温かいのかすら感じ取れない。

パンツを履いた。

こんなメンタルでもパンツを履くという倫理観的なものは生きていた。

パンツだけを履いて布団にくるまった。

朝から活動しているのに。

お腹が空かない。

もう22時半。

絶対に空腹が限界に達しているはずなのに。


テレビをつけてケータイではYouTubeを鳴らした。

五感で感じられるものをとにかく摂取したかった。

でもだめだ。

心が死んでいる。感性が全くと言っていいほど反応しない。

ピクリともしない。

そんな精神状態が1週間ほど続いた。


YouTube活動も佳境に入っていたからそれは助かった。

夢中になれるものがあるって本当に助かる。


あと帰省して友達と話したら一撃で感性を取り戻せた。

仕事と友達は偉大だ。

でも友達にもこの話はできなかった。

できないあたり、本当に凹んでたんだなとも思った。


どんなにしんどい思いをして

限界かと思う精神状態が来ても

回復アイテムはある。

必ずあります。

ない人は私に聞いてください。

でっかいウーバーのリュックにアイテム詰め込んで届けに行きます。


以上が私の感性が死んだ(蘇生済み)話でした。


ありがとうございました。

みなさんからのサポートで自分磨いて幸せ掴むぞ♪