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恋した相手は甲子園の売り子だった。。。夏

みなさんこんにちは。恋の季節がやってきましたね。
夏を「恋の季節」と読んで久しいでお馴染み、佐野寛です。

今日は数ある夏の恋の話から甲子園の売り子に恋焦がれた話をしていきたいと思います。

あれは大学3年生の夏でした。
これでもかというほどに照り付けに照り付ける太陽の下、佐野は甲子園にいました。
そう。なにを隠そう、佐野は大学1年生からの4年間。甲子園にて新聞社のカメラマンの補助のアルバイトをしていたのです。

簡単にこのバイトの仕事内容を言うと、球場の各地に散らばったカメラマンさんから随時データを受け取り、そのデータを甲子園内に作った基地にて処理するといったシンプルな仕事です。

その他諸々雑用はありますが、端的に言ってしまえば甲子園のスタッフ専用通路から観客席までを縦横無尽に走り回るのが仕事です。

こんだけ甲子園内を走り回っていると色んな人に出会います。
テレビスタッフや高野連、選手などなど。
そんな中でも一番目立っているのが、そう。売り子と呼ばれる職業の方々です。
特に女性の売り子は自分の身体くらいある大きさのビールサーバーを持ち、更にはカラフルな服を着ているため嫌でも目につきます。

そんな日々です。
もう大体読めたでしょう。

そうです。
僕はその売り子の1人に….恋をしました。

その子のことが気になり始めたのは3年生になる前の春休み。春の選抜高校野球の時でした。

まだ少し寒さが残る甲子園球場の夕暮れ。
福井工大福井と健大高崎が延長15回ので決着が着かない死闘を繰り広げている傍らで、佐野とその子は出会いました。
名前をナナミ(仮)とさせて頂きます。

ナナミはなんというのでしょうか、テレビの中にいてもおかしくないくらい綺麗だけど、似ている芸能人がいない。そんな見た目をされていました。
白くて少しふっくらしている、そして表情から滲み出る母性。溢れに溢れる母性。母性に次ぐ母性。
近似値で言うと安めぐみさんみたいな。

僕が一目惚れに至るのに一切の無駄がないルックスと雰囲気でした。


僕が甲子園でバイトする機関は春の選抜高校野球と夏の甲子園の2期間です。
つまり春の選抜の期間中にナナミに声をかけなかった場合、恋の進展は夏に持ち越しになります。

なんとかしなければ・・・

佐野のバイトは急を要するとき以外は非常に余裕がある仕事です。
故に佐野はこんな作戦を企てました。

繁忙時間を終える
    ↓ 
社員の目を盗んで基地を出て売り子に会いに行く(トイレに行くとか抜かして)
    ↓
売り子に会って何かしらを購入。
    ↓
会話をして相手に好きになってもらう
    ↓
 付き合う

ってな具合です。
まあ基本的には成功するつもりでした。

僕の今までの人生経験から言えるのですが、
【一目惚れする場合,相手も決して自分に対して不快な印象を抱いていない】という持論があります。
一番大きな理由としては、こっちが好きになるようなオーラを出しているということは・・・ってことです。
かなり危険な思想であることを今の僕は理解しているのでご安心ください。

この持論を信じて上記の行動を起こせば99%の確率で僕とナナミは付き合える算段が立ちました。

しかし算段が起立したまではいいものの、実行するのに大きな障害がありました。

それは彼女のシフトにあります。

この計画を立てたのがだいたい準々決勝が終わったころ。
つまり!!!
残りの日程は準決勝と決勝の2日間のみ!!
この2日にナナミがシフトが存在するのかがそもそもの争点!!
ナナミが準々決勝でお役御免してのであればそもそも僕がナナミに次に会えるのは早くても8月の夏の甲子園!!
それまで待てるわけがない!この性獣が!!!

ってことで迎えた準決勝の日。
この日は2試合しかないためそもそもの勤務時間が少ないんです。

つまり!!
僕が自由に動き回ってナナミを捜す時間もそもそもない!!
ってかナナミが出勤してない可能性すらあるうえで!!!
しかもしかも!!!
僕はバイトリーダーなのである!!!

つまり!!
僕がバイト業務を一旦抜け出してナナミを捜している間になにかトラブルがあろうことなら即アウト!!!即引退!!

恋愛にリスクは付き物とはよく言ったが・・

準決勝1試合目。履正社対報徳学園
準決勝というだけでなく関西対決ということで甲子園は大盛り上がり。
つまり!!売り子の大人数出勤する上に売り上げを求めて球場内を歩き回るに違いない!!!
そう踏んだ佐野は5回と試合終了間際をナナミ捜索活動に充てることに決め捜索活動に支障が出ないように、それ以外の時間、労働に勤しみました。

そして5回を迎えました。この5回中に必ずナナミを見つけてみせる。
佐野は他のバイトに非常にお腹が痛いのでトイレに行く旨を伝えて基地を出ました。
佐野はトイレが長いことで名を馳せたことが幾度となくあります。
この日のために「トイレに行ったらなかなか戻ってこない」という印象を受け付ける人生だったのか・・・

さあ基地を飛び出した佐野は内野席から外野席まで走り回りました!
甲子園はとにかく広い!!そして人が多い!!
けど!!俺は見つけ出す!!
例えそれがサバヒト(砂漠の中から1粒の砂を捜すようなもの)だとしても!!!!
ナナミを見つけてみせる!!!!!

・・・・・

見つからなかった・・・

佐野は3塁側内野席からアルプス、レフト席からセンターに向けて捜しまわったがナナミとは巡り合えなかった。

1塁側とライト席にいたのかもしれない・・・
僕は基地から近い3塁側にいてくれと祈って捜してしまった。
ここで佐野の傲慢というか怠惰な部分が溢れ出てしまった。
そんな自分に都合がいいところにいてくれると思って行動してる時点でダメなんだ。
全てフラットに見て平等に努力をしなければ成功は遠のいていく。

5回の反省はこれからの人生にも活きかねない内容だった。

基地に戻ると、そこには何事もなく仕事をする社員さんとバイトがいた。
佐野がミッションに失敗したことはおろか、ミッションに挑んでいたことすら知らない愚民どもだ。
きっと「佐野、またお腹壊したのかよ、この不摂生が・・・」くらいにしか思ってないのだろう。

だが、いい!!
それでいい!!
俺にはまだ試合終了時にナナミを捜しに行くという希望がある!!!

試合が終了し、第2回ナナミ探索活動が開始された!!
しかし・・・・

試合終了後は波のように売り子たちは自分たちの基地に引いていってしまう。
蜘蛛の巣を散らすの逆です。
この現象が頭に入っていなかったことで佐野は惨敗を喫することになります。


1試合目終了時点で佐野は自分の基地で頭を抱えていました。
残るは1試合のみ。
次の試合中にナナミを見つけられないと明日の決勝のみになってしまう。
ってか明日が終わったらもナナミに会えない!!
つまり今日知り合って明日仲良くなるという無理がありすぎるけどこれしかないみたいなプランがあと1試合で上手くいくか失敗するか決まるのだ。

「なんだ?報徳学園が負けてそんな悔しいか?」
佐野の苦しみを露ほども知らない社員からこんな言葉をかけられる始末。

現時点での社員からの佐野の印象はトイレが長い報徳学園ファンだ。

そんなへんちくりんな印象を抱かせたまま始まった第2試合
大阪桐蔭対秀岳館!!
当時の大阪桐蔭といえば根尾や藤原といった今でもプロ野球界で活躍するスーパースター軍団!!
そして相手の秀岳館も春夏3回連続の準決勝進出とバケモノ高校!!
そんな野球ファンがよだれ垂らして釘付けになるような一戦の中、
佐野はまた隙を見てナナミを血眼で探していたのでした。

前回の捜索では3塁側~レフト席だったのですが
今回はセンターから始めてライトを回って1塁側にかけて捜してみようと試みたのです。

そして・・・


佐野は・・・・


ナナミを見つけ出しました!!!!!

センターにいたのです!!ナナミ!!!

ナナミ―!!!!!

甲子園の大歓声、大阪桐蔭のブラスバンドが掻き消してくれることをいいことに佐野は叫びました!!!

そしてナナミのもとへ走っていき!!

声をかけたのです!!!

自分でも驚きました。
自分の躊躇いのなさに。

今までの佐野だったら見つけたはいいけど声をかけられず・・・
なんて展開に終始してましたが
今回はなんと見つけるや否やまっすぐ!!ナナミのもとへ走っていけたのです!!

そして声をかけました!!

「クラッツくださーーーーい!!!!!!」

ナナミは目を丸くしていました。
なぜなら僕が甲子園で働くうえで必要なスタッフ証明書を首から下げているからです。
そんな現在形で働いてる人が売り子からなにを購入することなんてまずありません。

そう。それが佐野の作戦です。
印象付けるのです!!!
「え?!この人、仕事中なのに・・・なんてワイルドな人・・・」

ナナミの瞳はそう語っていました。

流石にお酒を買うわけにはいかないのでここはおつまみで妥協。

もちろんここは当初の予定通り
1000円を出してナナミが「お釣りは600円になr・・・」
と言い出したところで遮って
「おつり要らない!!」と叫んでその場をあとにしました。



決まった・・・・

もうきっとナナミの頭の中は僕でいっぱいでしょう。

仕事中にも関わらずクラッツを買うその野性味
お釣り要らないと言える男気!!

逆に惚れない方が困難なシチュ!!!!


これだけのインパクトを残せたならもう佐野の大勝利は確実なものとして後世に語り継がれることでしょう。。。そんな気分でした。

次の日の決勝。

ナナミは甲子園にはいませんでした。
きっと恋煩いから体調を崩してしまったのでしょう。

佐野は罪な男です。
不本意とはいえ好きな相手の体調に悪影響を及ぼすとは・・・

ってことで佐野、ナナミへのアプローチ春の陣がここで終わりました。

正直決勝の日に会えなかったことは悔しかったけど佐野がその原因である以上どうすることもできず・・・

でも佐野はどうしてもナナミに会いたくて・・・・

なんとプロ野球を見に行きます。
阪神対中日!!!
しかし・・・
ナナミを見つけることはできませんでした・・・

ってことでナナミに直接アプローチできるのは夏の甲子園までお預けになりました。

しかしその4か月の間、ただ指をくわえて待っている佐野ではありません。

同じく売り子のバイトをしている子に連絡を取ってナナミを知らないかと聞く日々がスタートします。

もう山崎まさよし状態です。
向かいのホームにいる子、路地裏の子、
色んな売り子バイトにナナミをことを聞く日々。

そして・・・

見つかりました。

ナナミと同じバイト先の子を・・・

その子は春と夏の甲子園の時のみ売り子をやる佐野と同じ勤務体系。

つまりナナミと次に会えるのは佐野と同じく夏の甲子園のタイミング!!

そう!!

佐野は夏の甲子園開幕と共にこの友達を通じてナナミの詳細な情報を得られる算段が立ったわけです!!!!!

そして来る8月!!!

佐野の恋がまた走り出す季節が始まりました!!!

開幕戦!!
佐野は半目でナナミを捜しながら業務をこなしていました。

するとケータイに通知が

売り子友達からのライン。

内容は

「ナナミ、彼氏いるわwww」




全身の毛穴から噴き出す汗。
これは暑さから来るものではないことは流石に明確。


「もうすぐ2年らしいwwww」

追加で送られてきたメッセージが完全に佐野を死に至らしめるにはあまりにも十分でした。

こんな馬鹿げた話があるか??

半年にわたって恋焦がれてきた期間、ナナミは長年連れ添ったパートナーとの愛を順調に育んでいただけだったのだ!!

あんなにも魔性の表情で佐野を魅了しておいて・・・


佐野の夏の恋は8月初頭に終わりを告げたのでした。

これ以降、メッセージにwをつける人間のことを毛嫌いするようになったのはまた別のお話・・・・


駄文お付き合いいただきありがとうございました。


みなさんからのサポートで自分磨いて幸せ掴むぞ♪