テクノロジーの世界経済史を読んで

長期トレンド

・テクノロジーのおかけが、非常に危険な労働や奴隷制のような苦役が姿を消し、労働条件が改善
- 1870年ごろ、例えば鉱業は危険が大きかった。電気もない。死亡事故が毎日のように起きる。工場も火災が多かった→電気によって、明るく・快適に、安全に。
・新しいモノ・サービスが次々と手の届く値段に。市民は多大な恩恵を受けた。
・自動車、冷蔵庫、ラジオ、電話といった革新的な技術は、ルネサンスの頃(1300~1600)には、ヨーロッパの王侯族でさえ、手に入らなかった
・資本主義の成果: 「女王に、より多くの絹の靴下を供給したことではなく、女工たちにも手の届く品物にした」
・人口のかなりの部分の生活を脅かされるたびに、技術の進歩は激しい抵抗にあってきた。
・現在、アメリカ人の仕事の47%は自動化されるリスクが高い。
・本書の主張: 技術の進歩に人々がどう対応するかは、所得が増えるのか減るのかに依存する。この問題を考える時に2つを区別する必要がある。1. 労働補完技術 2. 労働置換技術。 この2つは、労働者に痛みをもたらす度合いが異なる
・技術革新は常に受け入れられるわけではない。人間の意思決定次第。
・労働置換技術が阻止されるかどうかは、「この技術で利益を得るのは誰か」「社会の中で政治的な力を持っているのは誰か」に左右される
・「WW2以降の30年間、工場労働者の賃金は上がり突け、一家の主人の稼ぎで、質素な家、車一台、食べ物と衣服がふんだんにあるライフスタイルを実現できるようになる。この時期には高校を出た若い男は、まともな賃金の払われる安定した仕事に就くことができた」
・ケネディ「上潮は全ての船を持ち上げる」
・電化の結果、職場環境は改善し、賃金も急上昇。
・第2次産業革命の最大の功績は、普通の人々に全く新しい雇用を創出したこと。新しい商品を安価に供給したこと
・標準化された仕事はアメリカ国内には拡散していない。自動化されたか、海外に流失したか。
・「技術が発展することはわかっているが、働く人が追いやられ、取り残されることがあってはならない」
- 値下げした本の無料配達を禁じる「反アマゾン法」 in フランス
- イギリス労働党は、ロボット課税して自動化のペースを落とすことを公約に

気になったこと

  • 格差は社会不安を生む

    • 技術によって失業率の増加

    • 税収が乏しくなれば、公共サービスも減る

    • 犯罪が増えて、健康状態は悪化

    • 「ポピュリズム」への傾倒も増える

  • 労働者がどうやって食べていくのかは2つに依存

    • 1. 駆逐される雇用と新たに創出される雇用とのせめぎ合い

    • 2. 労働者が新しい仕事にどれほどスムーズに移れるか

    • ※新しい発明によって、新しい仕事が生まれても、それは「別のだれか」のための仕事

  • 電気革命はいつ?

    • 1879年にエジソンが白熱電球を発明

  • 馬を輸送手段として使うことには様々なデメリットがあったにも関わらず、当時の多くの人は自動車時代が本当に到来するのか、懐疑的だった

  • 製鉄業でも、人間の微妙な塩梅を機械でやれるはずがないとされていた

  • 多くの市民は、最初自動エレベーターという発想に身震いした

  • 人々のやる気・主観的な幸福度を高める上で重要なのは、相対的な所得

  • 文書整理などの仕事が、技術によって生まれるようになった(経済的に収支が合うようになった)というのは、示唆的だな

  • 「第2次産業革命は、教育の機会費用を下げたとも言える」も面白いな。自動化がなくなって、頭を使う職種が増えると、人間の知能は上がっていく。(それが良いことかは価値基準によるが、見識が増えると、生きやすくなるので、良いことでは?)

  • 「定型職には、人間性を奪う性質がある」

    • 一方で問題は、当時のアメリカの中流階級の多くが、こうした「頭を使わない」定型職にいたこと

    • こうした人たちは、コンピューター革命で無価値に

  • 仕事のない地域は、貧困な地域よりも悲惨な運命をたどる

    • 犯罪、家庭の崩壊、福祉や社会的なつながりの欠如などは、基本的には仕事がないことに起因

      • 仕事がなくなると、若年男性が早死にする可能性が高まる。

      • 失業は幸福度を大きく下げる

      • ひとり親も増える

      • ひとり親世帯の子どもは将来出世できる確率が、劇的に低い

      • 犯罪も増える

  • 全ての技術は初めは不完全

    • 電話は最初「おもちゃ」扱い

    • 10年で技術が格段に進化した

    • 第二次世界大戦後、コンピューターの性能が急激に向上。ToDo: 〇〇が1.7兆分の1に。

  • 大抵の人は、自分の仕事に充実感と意義を感じている

    • 「仕事を通じて、所得だけでなく、存在意義、地位、スキル、友情を手に入れる。家にいる人に報酬を与えると、社会腐敗が進む」

    • 女性は家事で浮いた時間を社会進出に使うことを選んだ

    • 大抵の人は、お金を増やすより、生産的な仕事につくことを望んでいる

    • TVの視聴時間と幸福度は逆相関

  • 雇用には上限あり?

    • 総需要には上限があるため(なお、本当に上限があるかは不明)

長期トレンドの言語化

テクノロジーの変遷を語るときに4つの段階に分けることが可能だ。

農業革命


まず、紀元前7000年ごろ農業革命(新石器革命)がおきた。
「農業」が発明されたことで、自然にあるものを獲得する狩猟生活から、自ら必要なものを生産できるようになった。
そして、自ら生産するようになったことで、生産量を伸ばすことが可能になり、人口が増加した。そして、人口が増えることでさらに生産量が伸び、さらに人口が増えて行った。狩猟生活から比べて、40~60倍になったと言われている。ただし、生産量が増えるたびに、人口も増えたため、一人当たりの所得はほとんど変わらず、短期的には狩猟生活の方が生活水準が上だった。
間接的な変化として、農業革命により定住生活するようになった。また、食料の貯蔵、土地の保有という概念が生まれ、「所有権」という概念が生まれた。「所有権」を保障する主体としての、政治機構が生まれ、これらが拡大し、都市や国が形成されていく。
なお、この農業革命には2点注意事項がある。
1点目は、「革命」という言葉が想起させるイメージほど、短期的な変化ではないということ。全世界で4000年ほどかけて、移行された。
2点目は、「革命」という言葉ほど、主体的な変化ではない可能性があるということだ。実際、狩猟生活から農業生活に移行した時は短期的には生活水準が下がっており、動機はわかっていない。ただし、農業生活後に、人口が急増したのは明らかである。動機としては、人口圧力の結果、農業が採用されたという説と、より効率の良い生産技術だった農業が導入された結果、所得が増加し、人口が急増し、一人当たりの所得が減るという現象が起きた可能性がある。
ただ、人口が急増した時点で、狩猟生活には戻れなくなることを刺していた。

産業革命

次に起きるのが、産業革命だ。
産業革命は、綿工業での手工業に変わる機械の発明、さらに蒸気機関の出現とそれに伴う石炭の利用という生産技術とエネルギーの革新のことをいう。木綿工業から始まった技術革新は、機械工業、石炭工業といった重工業に波及し、さらに鉄道や蒸気機関の実用化という交通革命をもたらすことになる。

面白いのが、まず「綿工業」の一部プロセスで革新がおきたことだ。それによって、その前行程がボトルネックとなり、その工程での技術革新が進む。それらの革新がどんどん起きて行き、結果全行程における生産性が飛躍的に向上した。

そして、それらの機械を供給する産業としての、機械工業と減量となる製鉄技術の発達も進み、それらによって他の産業にも応用されていく。一つの変化が、別の変化を生み出し、新しい需要・革新を生み出し、それらが他にも応用されていくというのはインターネットでも見られること。

また、製鉄の技術革新により、木炭から石炭に変わったり、同時に蒸気機関も発明されて、エネルギー効率が飛躍的に変わった。これらが応用されて、蒸気機関車(鉄道)、蒸気機関船など交通にも変革が起きた。

1つの変化が需要の変化を起こし、そして需要の変化が物事を前に進め、それが同時多発的に進むことで世の中が大きく変わっていく。

間接的な変化は、前半と後半に分けたほうが良さそうだ。
前半は労働者にとっては、悪い時代だった。
手工業が終わりを告げ、工場労働にシフトした。結果、手工業で生計を立てた人は職を追われ、工場では子供が主な労働力として使われた。前半では、簡単なハンドリングを求められる機械しかなかったので、中程度の賃金の仕事はなくなり、資本家と労働者の格差は広がった。また、工場製ができたことで、人口が都会に集中した。
労働者が自動化に反対する「ラッドタイト運動」も各地で発生した。

後半は、機械化による生産性の向上を労働者も受けることができるようになった。機械が複雑化し、労働補完型になってくることで、労働者の賃金も上がり始める。この時から、子供の労働需要は減っていき、労働補完型ゆえに労働者の地位も向上した。また、蒸気機関の導入で生産性がさらに飛躍的に伸びて、労働者の実質賃金もついに上昇した。

労働者の需要が上がったことで(?)、参政権の獲得など起きた。また、鉄道の発展により、リーチできる市場が広がり、「規模の経済」が可能になった。
また、工場の規模が拡大するごとに、管理職や事務職が必要になった。産業革命以降、彼らが中流階級となっていく。

第2次産業革命

そして、次に第二次産業革命。産業革命の第2フェイズで、明確な区切りがあるわけではないが、1850年ごろから第一次世界大戦(1914)までを指すことが多い。

この時期には、技術革新が軽工業から重化学工業に変わった。具体的には、鉄鋼・機械・造船・自動車などの分野で技術革新が進んだ。
また、エネルギー源が石炭から、石油と電気に変わった。そして、石炭を動力にした蒸気機関から、石油を動力にした内燃機関に変わった。電気に関しては、1831年に電磁誘導が発見され、1879年に電動モーターが開発された。
また、情報の通信方法も変化し、1838年にモールスが電気通信に成功し、1851年に海底電信ケーブルがはじめて敷設された。また、1876年には電話が発明され、1895年には無線通信が行われた。

間接的な影響としては、労働補完型の仕事が増えて、労働者の賃金は上昇した。また、様々な産業が発展し、これらはスキルの不要な労働者を求めたから、職を失っても新しい仕事につける時代だった。また、大量生産によって、労働者の生活は大幅に向上した。具体的には給湯システム、様々な家電、自動車などである。
また、労働保険型になり、労働者の立場が強まったことで、労働者の参政権が強くなった。結果、労働組合などもできた。
また、鉄道も電化された(1900)。それによって安全になった。
また、1900~20には道路が整備され、同時に自動車産業も増えた。幹線道路沿いには商業施設が進出し、多くの雇用が生まれた。

また、自動車の普及によって、都会は人口密集地域ではなくなり、工業地区、商業地区、住民地区のように分かれるようになる。郊外で住む人も生まれた。

さらに女性の社会進出も進んだ。ホワイトカラー・事務職の仕事が増えて、働き口が増えたこと。さらに家電の普及によって、家事の負担が大きく減ったことが挙げられる。(アイロン、真空掃除機、洗濯機、トースター、冷蔵庫、皿洗い機、ドライヤーなど)人はダブルインカムによって、ますます豊かになった。


第二次産業革命から情報革命まで

この時代は、「史上最大の平等」と言われる。ほぼ全員の所得が増え、しかも下位層ほどハイペースで増えた。結果、所得格差は大幅に是正された。

労働者の参政権が強くなり、福祉国家になっていった(1889~1930)。1933年には最低賃金が出てきて、1938年には残業制度が生まれた。

また、第二次産業革命の進行に伴って、高校進学率が飛躍的に高まった。1910から40年の30年で、9%から35%までに高まった。
理由は第二次産業革命期には、一定の教育水準レベルを有した労働者の需要が高まったからであり、第二次産業革命は教育の機会費用を押し下げたとも言える。

また、車によって農業・運輸にも革命が起きた。戦間期、生産性への寄与が最も大きいのは、モータリゼーションによる輸送・物流革命である。

また面白い現象として、ホワイトカラーがさらに増えた。オフィス機器が増え、大量の文書保存などのコストが減った結果、「文書を保存する」という仕事が新しく増えたのである。今までコストが高かった仕事が、技術革新によって生まれるというのは面白い。


情報革命

そして、最も最近に起きた革命が情報革命である。コンピューターという記憶/演算装置と、それらがネットワークを通じてつながるシステムが構築された。
これによって、情報の蓄積、演算(高度なものにすると意思決定)、情報の通信コストが大幅に下がり、情報の流通スピードの高速化、様々なやり取りの自動化・オンライン化が進んだ。これらによって、人が移動して何かをする必要がなくなったり、紙などの媒体に記録する必要がなくなったり、データを1箇所に集めることが可能になり、意思決定の補助ができるようになったり、様々なことができるようになった。
また、メモリと演算は脳の拡張と捉えることもでき、それらがネットワークを通じて連結することで、今後人の脳がやっていることのほとんどをより高度にできるのではないかという見方もある。
具体的なタイムラインとしては、1990年代から産業化が進んだ。1990年にWorldWideWebが提唱され、1995年にインターネットが商用利用可能になった。また、1995年にWindows95が発売され、一般のPC上で完全なGUIを提供するPCが現れた。Amazon,Google,楽天などのwebベンチャーもこのころできた(facebookは2004年)。また、SNSや2チャンネルなどのサービスも同じ時期には、生まれた。
このころ、一般にはパソコンすらもよく理解されておらず、インターネットの利用は非常にハードルが高かった。上のサービスについても、ビジネス的有用性は十分に見出されていなかった。
2008年には、iphoneが大ヒットし、2012年にはディープランニングが世界に衝撃を与えた。2020年にはコロナによって、テレワーク、ビジネスモデルの転換が進んだ。
2000年以降は、ブロードバンド回線、公衆無線LAN、携帯電話などが普及し、常時インターネットが接続できる環境が整ってきた。

間接的な影響としては、格差が広がる社会になった。具体的には、コンピューターを扱って仕事ができるのは、高学歴層がほとんどで、中流階級の仕事は自動化されていくからだ。サービス業が増加し、1990~2008年の全米雇用増加のうち、98%はサービス業だったというデータもある。製造業においても、ロボット普及率は増加しており、2008~16年で50%増加している。(memo: やはり「成熟化」というのはあるんだな。ハードレベルの技術革新が起きない限り、重化学工業はなかなか変わらない。すでに発展したため。そして、すでに一定の質であって、トータルの価値を生み出すのに、ボトルネックはそこではなくなっているということか。当てはめて考えるというより、答えがない問題で複雑だとは思うけど)

今後は、多くの情報がDX、IoTなどを通じて、デジタル形式で保存されるようになる。いわゆるビッグデータだ。そして、それらの情報を活用したAI利用が進み、私たちには明快な説明が難しい仕事まで自動化していくと考えられている。AIは、蒸気機関・電気・コンピューターなどと同じ汎用技術と言われ、様々な分野に応用が可能。

疑問

・第一次産業革命の時に、なぜ入り混じって重化学工業の発展も行われなかったのか
・産業革命の様子を、もっとありのままに知りたい感。一人のストーリーレベルで。
・今後どうなっていくかを考えるにあたって、特に直近の歴史の理解は非常に重要。ストーリー・当時の状況が思い出せるようになれると理想。そして、「発展」とはどういうことなのかを理解できると良い。
・ということで、インターネットの歴史はさらに深掘りしたい。特に黎明期のリアルなことが書かれている本とかないかなー

自分用のmemo

技術の変遷spreadsheet


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