超・箇条書きを読んで
超・箇条書きを読んだので、感想を。
結論、実践的でいい本だった。我々は、似たような方法で情報を処理しているという前提があり、その情報処理と似せて、情報を伝えることで相手が理解するコストを下げる。そのための手法が書かれていた。
わかりやすい文章って、難しいけど、こういう類の本をもう少し読みたいなと思った。と同時に、文章だけでなく、デザイン、この世の成り立ちなど、いろいろな仕組みがあり、それを学び理解すること自体が好きであると気づいた。
以下、要約
箇条書きのメリットとは
情報が少ないので、処理が楽であること。シンプルで、すぐに理解ができる。
箇条書きはどんな時に有効?
相手に情報処理の手間をかけさせたくない時。相手が、こちらに大した関心を持っていない時
箇条書きのコツ
伝わりやすい箇条書きを作るには、3つのコツがある。
1. 構造化
2. 物語化
3. メッセージ化
順に追って、説明する。
1. 構造化
相手が全体像を一瞬で理解できるようにすることを、構造化と呼ぶ。構造化のコツは、「レベル感を整える」こと。伝えたいことの階層を揃えることが大切である。
「レベル感を整える」には、3つの技術がある。
1. 自動詞・他動詞を使い分ける
2. 直列・並列で考える
3. ガバニング
1つ目の、「自動詞・他動詞を使い分ける」とは、どういうことか。これはすなわち、状態・現象を伝える文と、行為を伝える文は、分けて書くこと。そして、グルーピングも分けるということだ。
聞き手にとっては、静止画か動画かを判断するにも、情報処理の負荷がかかる。そのため、動詞で終わる文章を体言止めにしないことも大切。例として、箇条書きの一要素として、「コストの低下」と書かれていても、コストを低下させるのか、コストが低下したのか、すぐにわからない。
2つ目の「直列と並列で考える」について。直列と並列では時間軸が異なる。直列は、文と文の間に時間が流れている。並列は流れていない。超・箇条書きでは、時間の流れを構造で示すことが大切だ。これによって、意味がわかりやすくなる。
また、1段目の「ひとこと」につながりが必要である。それがないと、一瞬で全体像を理解できない。
伝えることの、幹と枝がわかるようにすることが、直列・並列の整理の肝だ。
3つ目の、「ガバニングで引き出しを作る」について。
「ポイントは3つあります。」と先に宣言することが、ガバニングと呼ばれるものだ。各グループの1段目でそれ以降の枠組みを宣言するのが良い。情報処理の土台になる。相手の頭の中に、情報をしまう引き出しを作るイメージである。
ジョブズの有名なスピーチは、ガバニングを使用している。反対に、校長先生のスピーチは、終わりが見えない苦痛の時間であることが多い。
物語化
ダメな箇条書きは、生々しくない。
自分にとって、関係のない話に感じられ、すぐに頭に入ってこない。まるで一般論のように感じて、引き込まれない。
物語化は、それを解決するためのコツだ。相手が置かれている状況を考えて、関心を引くように箇条書きをかく。
そのために必要なことは、フックを作ることである。このために3つの技術がある。
1. イントロ作り
2. MECE崩し
3. 固有名詞
イントロ作りとは何か。
箇条書きでは、最初の文が大切である。「相手の期待していること」を伝える。例えば就活中の質問には、ダイレクトに答える。
ユニクロのIRでは、イントロにあえて海外事業が持ってこられている。海外事業が一番伝えたいことだからである。
なお、アンサーファーストは万能ではない。相手が背景・経緯を理解していない時、いきなり結論を持って来るべきではない。
次に、MECE崩しについて。
要するに、伝える時はMECEにこだわらず、重要なことだけを伝えるということである。優先度の低い情報を伝えないことで、文章が締まり、本当に伝えたいことが伝わる。
最後に固有名詞で具体的にイメージさせるについて。
一般名詞は、抽象度が高い。そのため、相手は伝えられたことを「自分ごと」としてイメージしにくい。
反対に、固有名詞は具体的にイメージできる。固有名詞は、これまでの経験やコンテキスト情報が、すでに頭の中にある。そのため、わずか数文字で、コンテキスト情報も加味して、処理させることが可能である。
コンセプトなどの抽象的なことを伝えたい場合においても、固有名詞は使える。抽象的な文の下位に、例を示すものとしての固有名詞を入れることで、文章が生々しくなるのだ。
例えば、「国内から海外に経営リソースをシフトさせる」だけでは響かない。その文の下に、「相模原市の工場を廃止し、インドネシアのジャワ島に工場を新設する」と書くことで、伝えたいことのイメージがぐっと鮮明になる。
どのように、固有名詞を選ぶと良いか。基準は、「聞き手がイメージしやすいかどうか」である。最も聞き手が引き込まれる物語とは、自分が登場するものである。個人名でなくても、組織の部署名や企業名が入ってるだけで、その文に「ドキッ」とする。
例えば、「景気が持ち直すまで、各部署によるコスト削減が必要である」ではなく、「景気が持ち直すまで、営業部・開発部・総務部によるコスト削減が必要である」と書くことで、これらに属する部署の人はぞくっとする。
メッセージ化
ダメな箇条書きは、「で、それが何?」で終わるものである。一般論を述べている文章などは、こうなりやすい。
それを防ぐために必要なことが、メッセージ化である。メッセージ化の要件はスタンスを取ること。相手にとって、情報処理する価値があるもの、かつ、心に響くものでなくてはならない。
スタンスを取るために、有効な技術が3つある。
1. 隠れ重言を排除する
2. 否定を使う
3. 数字を使う
まず、隠れ重言を排除するについて。隠れ重言とは、文の中で重複はないが、コンテキストを踏まえると、わざわざ伝える意義がないものをいう。
例えば、サッカーの解説中に「ゴールが欲しいですね」というつぶやき。サッカーをしているのだから、当たり前である。こう言ったものが、隠れ重言である。
伝えられる情報量に限界があるにも関わらず、隠れ重言で箇条書きを埋めてしまうのはとても勿体無い。ポイントを絞って伝えることが大切である。
具体的に、隠れ重言になりうる、NGワードは、「~を改善する」、「~を見直す」、「~を最適化する」などである。
次に、否定で退路を断つについて。
何を否定するのかを明示することで、立ち位置をはっきりさせる技術である。例えば、「生産性を上げる」だけではなく、「長時間労働に走るのではなく、生産性を上げる」と書く。こうすることで、スタンスが明確になる。
他にもソフトな否定が2つほどあり、「AよりもB」「AからBになる」というワードも否定として使える。
例えば、「当面は利益よりも売り上げを追求する」、「ボリュームからバリューへ」などである。
最後に、形容詞や副詞は、数字に変えるについて。
具体的なイメージを伝えたい時、数字で示して、彩度をあげることがコツである。形容詞や副詞のままだと、「程度」は相手の解釈次第である。つまり、相手にとって解釈する手間が必要だということだ。また、「程度」が曖昧の場合、イメージがわかないということもある。
1000人程度ではなく、1047人と書くと、イメージがはっきりする。
ビジョンには、数字が必要である。ビジョンは、組織に求心力をもたらすもの。「いつ」「どの程度」の2つが、みんなにわかりやすく・共通認識を持つ必要がある。そのため、状態を示す数字と、期限を示す数字の2つが必要である。
スタンスを取るということは、「誰からも否定されない、"無難"なメッセージを送らない」ということだ。はっきりとスタンスを取り、それを適切に伝えることが重要である。
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